キミを笑わせたい
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中庭まで移動してきた六路木さんを隠れながらも追いかけていくと、今度は王馬くんが彼女のそばに駆け寄った。先ほど、思いっきり振ったプァンタを掲げながら。
「六路木ちゃーん!」
王馬くんが彼女の名前を呼びながら六路木さんの後ろから抱きついた。いつもこんな風に絡まれているのかもしれない。六路木さんは足を止めると、ため息をつきたそうに王馬くんを見下ろした。
「…王馬か。何か用か?」
「うん、用事用事。このプァンタ、代わりに開けてくれない?飲みたいんだけど固くて開かないんだよねー。ほら、オレってか弱いからさ!」
わかりやすい嘘をつくな…。王馬くんが自分で開けているところは六路木さんだって見たことがあるし、王馬くんはこれでも力はある方だ。ある方というか、ある。この前なんて片手でペットボトルの蓋を開けていた。
「ああ。そういうことなら手を貸そう」
なんの疑いもなくプァンタを受け取ると六路木さんは力を込めて蓋を開けた。その直後。プシャアア!と音を立てて炭酸が勢いよく噴き出し、六路木さんの顔面に直撃してしまった。王馬くんを見れば爆笑。六路木さんは無表情のまま固まっている。これはさすがに……。
「わー。六路木ちゃんベタベタだね!でもわざとじゃないんだよ?オレもまさか噴き出すとは思わなかったしさ。ねぇ、怒った?」
あの爆笑の後だというのに何て白々しいんだ。これじゃあ六路木さんだって怒るに決まってる。
「……王馬。ちょっと来い」
「えっ?」
さすがに効いたか…?王馬くんもマズイと思ったのか、僕の方をチラ見してきた。助けに行くべきか迷っているうちに、腕をがっしり掴まれた王馬くんは寄宿舎へと引きずられていった。
ど…どうしたらいいんだこれ。乗りかかった船だし、ここで王馬くんを見捨てるわけにもいかない。わかっていて止めなかった僕にも否はある。もしお説教されてるなら僕も行った方がいいよな…。そんなことを思っていたら王馬くんがトボトボと寄宿舎から戻ってきた。
「お、王馬くん!大丈夫だった?」
「……新しいプァンタもらった」
「まさかの!!?」
ポツリと呟いた王馬くんの手には新しいプァンタが握られている。お説教されていたわけじゃないのか?
「なんかさ…。“誰かが一度落としたんだろうな。王馬にかからなくて良かった。今新しいプァンタをやろう”って言われて。これ渡された」
見れば、ただ渡すだけでなく ちゃんと蓋が開けてある状態で王馬くんに手渡されている。しっかり冷やされてもいるようだ。怒るどころか、この対応。
「六路木さん…。何て紳士的なんだ…」
「最原ちゃん。なんか胸の辺りがもやもやするよ。なんでだろうね」
「それは罪悪感っていうんだよ…」
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