キミを笑わせたい
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「何て言うかさ。もうお手上げだよね」
食堂でコーヒーを飲みながら本を読んでいた時のこと。隣で頬杖をつきながら座っていた王馬くんが、ため息をついて呟いた。
「何のこと?」
「決まってるでしょ。六路木ちゃんだよ、六路木ちゃん!自分からは誰ともしゃべらないし、こっちが何かしても無表情でさぁ。…なんなの?六路木ちゃんはゲームのアバターかなんかなの?課金して表情購入して変更しなきゃ駄目か!!?さすがのオレもネタ切れだね!」
「何てこと言うんだよ!さすがに失礼だろ!!」
そう言えば王馬くんはここのところ、ずっと六路木さんにくっついて一緒に過ごしている事が多かった。その前の王馬くんは僕にべったりくっついてきていたので、ようやく離れてくれたと思ってホッとしていたんだけど…。なんだか六路木さんに申し訳ない気持ちになってくる。
「まぁ、キミが弱音吐くなんて珍しいけど…。でもネタ切れっていうのは嘘だよね」
「たはー!やっぱり最原ちゃんにはバレちゃうか。だけどお手上げっていうのは本当だよ。オレが嘘つこうがイタズラしようが、ずーっと無表情!!ここまで来たら、なんとしてでもあの鉄仮面崩してやりたいね」
て、鉄仮面って…。確かに六路木さんは無表情だ。とはいってもまったくの無表情というわけでもない。その時その時でそれなりの反応や微かな表情の変化はあるんだけど、みんなのように感情を顕にして喜んだり怒ったり驚いたり…と、そういったものがないのだ。
「キミに付きまとわれて六路木さんも大変だけど…。ただ、このまま馴染めないっていうのはちょっと心配かな…。何か悩み事も抱えてるみたいだし」
「この際だから笑顔だろうが絶望顔だろうが、六路木ちゃんの表情が変わるなら何でもいいよ。ほら、最原ちゃんも何か考えて!」
「そう言われても…。くすぐり、とか?」
六路木さんが驚いたり笑ったりするようなことって何だろう…と考えてもなかなか出てこない。ふと頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してみたけど、王馬くんの表情はドン引きそのものだった。
「それ最原ちゃんが触りたいだけでしょ」
「なっ…!?ち、違うよ!今純粋に思いついただけだから!!」
そもそも、くすぐりが六路木さんに効くかと言われると微妙なところだな。それで笑ってる様子が思い浮かばない…。
「この前なんて、オレ見ちゃったんだよ…。六路木ちゃんの姿が見えないと思ったら、AVルームで1人映画を見てたみたいなんだけどさ。そっと覗いてみたら部屋は真っ暗、真ん中にポツンと座ってホラー映画を見てたんだよ!!?これまた物凄い無表情でね!!こえーよ!一番の盛り上がりもピクリともせず眺めてるんだもん。そっちの方がホラーだったよ!!」
「た、確かに…あんまり怖がってるところもイメージできないけど。でも、その状況でよく六路木さんが無表情だってわかったね?」
「六路木ちゃんも集中してたみたいだし、オレも気配消して近づいたからね。隣まで近寄って顔覗いてみたら案の定だよ」
うーん…。ホラーにも強いとなると…。六路木さんをびっくりさせるのは難しいかもしれないな。喜ばせるにはプレゼントをあげたりするのがいいだろうけど、六路木さんが好きなものってなんだろう…。
「考えてても埒があかないよ!何でもいいから実行してみよう!最原ちゃんも手伝ってよね!!」
「な、なんで僕まで…」
「最原ちゃんだって六路木ちゃんの違う顔見たいでしょ?さぁ、行くよ!」
それは確かに見たい気もするけど…。王馬くんは一体彼女に何をするつもりなんだ?
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