第9夜
家に着くと微かにテレビの音が聞こえてきた。響め…暇があればずっとテレビ見てるけど、電気代のことも覚えておけよ。
「…おいちょっと待て!そのままあがるな、床が汚れる!!」
ずかずかと入っていくティオの尻尾をわしづかむと顔面に蹴りを入れられた。…まぁ、今のは僕が悪かった。でもそれは駄目だ。ウェアウルフだろうがなんだろうが、動物ならまず手足を綺麗にしてからだ。
『 オレは綺麗好きなんだ。言うほど汚れてはいない 』
「駄目なものは駄目だ!」
「おー、お帰り。ティオもよく来たな。レオ、さっそくで悪いんだが今回は人捜しをしてもらいたい」
「人捜し?」
帰って早々、なんて面倒な。ティオの前足をタオルで拭きながら響を見上げた。…嫌がらないのか、素直だな。
「そうだ。人間の悪趣味に付き合わされている奴がいるらしくてな。その捕まっている仲間を助けに行こうと思う」
「捕まるって…だって吸血鬼だろ?なら自分でどうとでもできるんじゃないか?」
「まぁ、それはオレも思ったんだが…。見てみないことにはな。それよりレオ。今は発作はないか?」
いきなり話を変えられ、僕は一瞬詰まった。一呼吸置いて、体の様子を探ってみる。特別何かあるわけでもない。いつも通りだ。
「…なんともない」
「そうか。もしこの後発作が出たら、しばらくは怜亜から血を貰うようにしたらどうだ」
「え、なんで?」
いや。できれば誰からも貰いたくないけど。まぁ、経験上そうはいかないということはわかった。しかし何故そこで怜亜になるんだ。
「一度血を吸った相手の方がやりやすいだろ?まぁ、レオも男だからな。どっちかといえば綺麗な女の血の方がいいだろうが…」
「大丈夫。そういう要望はない」
しかしどうなんだろうか。確かに一度は経験してるから同じ人物の方がやりやすいのはあるかもしれないが、身近な知り合いよりは全く知らない人物の方がいい気がする。個人的に。ほら…知り合いだと気まずいだろ?…気まずくないか?かといって、知らない人を襲う勇気もないけど。
「前にも言っただろう。人間は噛まれるのではなく、体内に吸血鬼の血を混入すると吸血鬼になると」
「ああ…そんなこと言ってたな」
「レオは血を吸うことはできても、相手の体に血を入れるというのがどういうことか理解してないだろ?人間の血を吸ってるときにうっかり自分の血を入れて相手を吸血鬼にしてしまった、となっては洒落にならないからな」
「吸血鬼同士ならそういうことはないし。なんなら私も協力するから頼ってね」
………もういいよ、これ以上僕を悩ませないでくれ。なんなら一生、輸血パックとかトマトジュースで生きていくことにする。まぁ、輸血パックはどこから手に入れるかって話だが。
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