第8夜
「レブナントは人間だけじゃなく、他の吸血鬼にも襲ってくるからな。人間は抵抗できないし、下手したら吸血鬼化するしで たまったもんじゃない。しかも オレたち吸血鬼もレブナントに噛まれると、どういうわけか噛まれた部分が黒く変色して壊死してしまう。そうなるとその部位は再生できないし、力も使えない。放っておけば壊死したままだからな。噛まれたらその部位をすばやく切り落とす、もしくは削ぎ落として再生するしかなくなる。再生できるだけまだマシだが、その分血もかなり失うからな。噛まれるたびにそんなことしてたら、こっちも身がもたん」
確かにそれは…話を聞くだけでけっこうまずいのはわかる。それは吸血鬼にとっても脅威になるわけだ。事態が悪化する前に止めないといけないというのはよくわかった。今まで散々、響が言ってきたことだ。
…でも、はぐれの言っていたこともわかる気がする。自分たちは悪くないのに我慢して、人間の中に身を潜めて。それが嫌で反抗する。でもこの世界で静かに生きるためには、人間の真似をしないといけなくて。本当の自分を隠さなきゃいけなくて。そんな中でも、響は共存を目指してて…。
「ま、そのはぐれの相手するだけでも忙しいんだが。それ以上に厄介な連中がいてな」
その時、今まで話に交ざらなかった千里と怜亜がピクリと反応した。なんだろう…。厄介な、連中?
「日本には防衛組織ならすでに存在しているが、それとは別に国が裏で育成している特殊部隊。ブラックサーペント、通称 黒蛇〈くろへび〉だ」
ブラックサーペント?
聞いたことはないし、さっぱりわからないけど…国が育成っていうのは…。指揮を取るのは政府だよな。…待てよ。政府がそんな部隊を育成してたってことは、吸血鬼の存在を知っていた…?一般人は……いや、もしかしたら警察だって知らないだけで。政府は、わかっていたのか?
「黒蛇は戦闘集団だ。吸血鬼殲滅部隊として特殊な訓練を受けて編制されている。奴らには気を付けろ。そしてさらに、反政府組織のウロボロスというのが存在する。何だか悪の秘密結社みたいな名前だが、こっちは味方だ」
「待て。まだ頭の中で処理しきれていない…。そのウロボロス?とかいう方は吸血鬼なのか?それとも人間?」
「人間だ。詳しくはまたそのうち話そう。レオも会うことになるだろうからな。で、最後に…オレたちの仲間で似たような存在がいる」
その言葉に僕はぎょっとした。吸血鬼しかいないと思ってたから。まさかまだいたとは。次は一体何だというんだ。
「わおーん」
声がした方に視線を向けた。千里がカップ麺を食べ終わり、テーブルの上で腕を組みながら僕を見ていた。えっと…犬の、鳴き真似?
「ウェアウルフだよ。映画とかでお馴染みの、人狼」
「……嘘」
ウェアウルフ?マジか…。確かに吸血鬼とウェアウルフはもはやセットといっても過言ではないけど。まさかウェアウルフまでもが…。
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