第8夜
「怜亜、今何分たった?」
響が怜亜に問いかけると、怜亜はちらっと時計に視線を向けた。しばしの沈黙の後、ぽつりと呟いた。
「……5分」
「もう麺がのびちゃってるじゃないの!」
「胃袋に収まれば同じだ。ひとまず食べてから話すか」
そう言いながら椅子に座り、ふたを開けて食べようとした響だったが…。
「熱っ!!!」
「え!?」
一瞬仰け反ったかと思うと、口を押さえながらテーブルに顔を伏せてしまった。僅かに肩が震えている。もしかして熱いの苦手なのか…?
「オレは猫舌なんだ…。駄目だ。一旦これは放っておこう。話を続けるぞ」
ばっと顔をあげた響は余程熱かったのか、若干涙目だった。
「吸血鬼の死についてだな。始祖は…まぁ置いておくとして、他はさっき言った銀の反射によって焼かれるのと、もう1つ。人間からの純銀による攻撃は心臓を貫かれるのと同時に、脳ミソを吹き飛ばせば再生が追い付かずに灰化して死ぬ。重要なのは“両方を瞬時に、完全に破壊”することだ。ちょっと傷付けた程度ではもちろん、片方だけでは再生してしまうからな。前にも言った通り吸血鬼同士だと例外で、どちらかだけでも純銀関係なく殺せる。だから頭と心臓は常に守っておけ」
タイミング!!
それは今する話なんだろうか。 こっちは食べてるんですが。千里ですらもくもくと食べているが…慣れ?慣れなの?
「次に…はぐれか。はぐれは自分の主の命に背いて好き勝手やってる連中のことだ。背くと言っても命は惜しいからな。主に手を出す…というわけではないが、はぐれ同士で集まったりして人間を好きに襲ったりとかな」
「王位争いとかも言ってなかったか?争いも何も、もう響が王なんだろ?」
「ん…まぁ一応、ちょっと訳ありでな。本当は王じゃなかったんだが…。オレが王になったことで、なら自分も認めてもらえれば王になれるんじゃないかって思考の奴らがちらほら出てきてな。吸血鬼の力の源といえば血だ。その血を過剰摂取して血に狂ってしまった吸血鬼は…食屍鬼〈しょくしき〉化する」
あれ?そう言えば前にも聞いたような気がする言葉だ。確か怜亜が学校の屋上で……。
「食屍鬼化した吸血鬼はレブナントと呼んでいる。血だけでは飽きたらず、人間の肉までむさぼり食うようになる。レブナントの特徴は自我がなく、両目が赤黒いことだな。それにちょっとすばやい」
「肉までって…。テレビとかでよく見るゾンビが俊敏になった感じか?吸血鬼の身体能力がゾンビに付与されたみたいな」
「そんな感じだ」
それって最悪だな……。
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