第8夜
「レオ、大丈夫?考え事?」
千里に声をかけられてハッとした。いけない、ぼーっとしていた。響を見るとジト目でこちらを見下ろしていた。
「人が話してるときは余所見するんじゃない!」
「すみません…!」
「…で、次に吸血鬼の弱点だが。まずレオは何が弱点だと思う。何でもいい。思いついたのを言ってみろ」
そうは言ってもな。前に基本、思ってるようなものは効かないって言ってたし…。銀、だろ?あとはなんだ。まさかそれだけってわけじゃないよな…。
「えーと…やっぱり、十字架とか?太陽の光だとか」
「代表みたいなものだしな。実際は始祖と純血種が純銀との接触、混血とダンピールが長時間の純銀との接触だ。近づくのは何ともないが、触ったら火傷する。共通で日光はまだ苦手程度だが、銀に反射させたものはアウトだ。火傷で済めばなんとか再生もできるが、長時間あたり続ければ炎に包まれて焼死する」
なるほど。純銀とそれに反射させた日光か。じゃあ十字架とか聖水は人間の思い込みだっただけなのかな…。実際に見て言ってたわけじゃないし。
「ちなみによく、十字架だの聖水だの言われてるけど…。はっきり言っておくぞ」
「? ああ…」
「オレたちは無宗教だからな!!!」
「……。はっ!?」
む、無宗教!!?そうだったの!?
「キリスト教信者でもないのに、十字架なんぞが効くわけないだろう!馬鹿か!?」
なるほど確かに…!そう言われればそうなんだけど。効かないってつまりそういうことか…!
「とはいえ、やはり“信仰そのもの”に弱いのも事実。逆に言えば、深い信仰があるものならばなんでも効いてしまう」
「……無宗教が故に?」
「故にだ」
それってつまり、十字架も教会も、聖水だろうと“形だけ”なら全部効かないけど、その物に信仰が込められていたらそれはそれで全部効いてしまうと。最強に見えて、以外と弱点が…。
「え、じゃあ何?大袈裟な話、つまようじなんかにも信仰が込められてたら、それも苦手ってこと?」
「…たぶんな。信仰があるもの、神事なんかは凄まじい嫌悪感に加えて体にも影響が出る。純銀は近づくまではOKだが命に関わる。逆に、死にはしないが信仰の対象は近づいただけで反応するんだ。そしてそれを見つけて“そういうもの”だと認識してしまうとさらに症状は重くなる。まぁ個人差はあるが、体が重くなったり動悸や痺れ、震えなんかが症状として出てくるな」
「つまようじが苦手って、なんかしょうもないわね…」
た、確かに…。まぁ例え話だしな。
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