第6夜
「レオ、見た目で判断するのはよくないぞ」
「お前が言うな」
「とりあえず食え。減らない上に片付かないからな」
ああ、そうだな。響が余計なことしなきゃ食べてたよ。未知の料理を生み出す天才か。
「うおぉ……」
耐えろ自分、ビーフシチューだと思えばいい。そして恐る恐るシチューを口に入れた瞬間…。
「…っ!?!?」
思わず口元を押さえた。目にいっぱいの涙が溢れてくる。そんな様子を千里が心配そうに覗きこんできた。
「れ、レオ?どうしたの?」
「……か、」
「か?」
「……辛い」
水を飲んでもおさまらない。ついでに涙も止まらない。僕は身を乗り出して、響のネクタイをガッと掴んだ。
「ぉお前…!やたら赤いと思ったら!!僕の皿にっ…と、唐辛子入れたな…!?」
「お子様には刺激が強かったか」
「ふざけんな!!」
本当に辛い!!なんだこれ!!辛すぎてもはや痛い…!!ちくしょう、覚えてろ…。ていうか唐辛子!?それも材料にはなかっただろ!
「レオくん、もう少し静かにね」
「だから僕のせいじゃないって…!!」
やっぱり、こいつらといると散々だ。もう嫌だ…。班替えか席替え…じゃなく、クラス替えを希望する。切実に。クラス替えてもこっちに乗り込んできそうだけど。
「さっきからこそこそしてると思ったら…。響、やりすぎ」
「あはははっ」
腹を抱えて爆笑している響に対して右手が出そうになったが、辛さで悶えていた僕はバランスを崩し、シチューが盛られた皿にダイブすることとなってしまった。そしてその様子を見ていた響にさらに爆笑された。
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「…はぁ」
放課後。
僕は溜め息をつきながら、実習室を1人で掃除していた。なんで僕が部屋の掃除をしなきゃならないんだ。響たちのせいなのに…。しかもあいつら、先に帰りやがって…!!怒りに任せて手に力を入れると、バキッと音がした。無言で手元のほうきに目をやる。………握っていた部分が折れていた。
「…ほんっとに良いことない」
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