第6夜
「それではー!前に言った通り、今日はシチューを作りまーす。各班のテーブルに置いてある材料を使ってください。わからなくなったら聞いてくださいね」
「……さて」
まさか自分以外の奴がみんな吸血鬼だとは…。無事にシチューを作れるのか。まぁ、今は僕も人間じゃないけどそれは置いといて。
「……」
響がレシピを見たまま動かない。
大丈夫か?
「うーんと…野菜はカットしてあるから、鍋に水入れようか。あとはお肉切って……」
「え?」
「え、違うの?」
「いや……」
ほっとした。よかった、千里はまともそうだ。作り方を知ってるのか、手際よく作業を進めていく。しかしその横で怜亜がボンボン材料をぶちこんでいくのが見えた。まずい。これではカオスな何かが生み出されてしまう。
「おい待て!手順があるの、よく見ろ!!ほらここ!!」
「……煮込めば、同じじゃないの」
そして調理すること1時間半後…。
一瞬声が出なかった。
「な、なんで…シチューごときにこんな……」
くたりとテーブルにもたれ込む。奴らのせいでシチューとは思えないシチューが出来てしまった。なんなんだこれは。魔女の釜を覗き込んでいるみたいだ…。 だってシチューだろ?作ってたのは、ホワイトシチューだよな?なんで僕の班のシチューはどす黒いんだ?若干赤いけど…どっちにしろおかしい。
「見た目だけでも血に似せようかと思ってな。ふむ、我ながらいい出来だ」
「お前か!!!こんな不気味なシチューあってたまるか!学校で何してる!!」
「大丈夫よ、響が入れたのは食用色素のやつだから」
確かによく見ると、ゴミ箱に赤色の食用色素の容器がいくつも捨ててあった。ケーキとかに使えばキレイなのにな…。というか何で持ってるんだ。食用色素は材料に含まれてなかっだろ?持ち歩いてんの?
「味はフツーのシチューと変わらないだろうから、たぶん大丈夫よ。確かに見た目は気持ち悪いけど」
シチューを眺めながらため息をついていると、隣の班の友人が覗き込んできた。見た瞬間に微妙そうな表情になる。そうでしょうね。
「…レオの班のシチュー、大丈夫なのか?」
「そう見えるか?」
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