第6夜



「席につけー。突然だが、またうちのクラスに転校生が来ることになった。ちょっと先生も想定外だったが、みんな仲良くしろよ。入っていいぞ」

先生が扉の向こうに声をかけた。

そして入ってきたのは…。

「桐生響だ。えーと…おー、いたいたレオ!!オレがわざわざ同じクラスになるように頼んだんだからな。喜べ!!」

「橘千里です。よろしくお願いします」

やっぱりあんたらか…!!

入ってきたのはギターを抱えてサングラスをかけた響と、ごく普通の制服姿をした千里だった。もはやどこからつっこんでいいのかわからない。派手に登場するかナチュラルか統一してこい。そのギターは一体どこから?音楽室か。

「ずいぶんエキセントリックな奴だ…。つか、レオ。お前知り合い?」

「はぁ…」

恥ずかしさのあまり、僕は片手で顔を隠した。あんなのが知り合いとは…。再び響に目をやったときにはサングラスも外して普通の格好をしていた。

「人間の挨拶で覚えてもらうにはインパクトが必要だと、本で読んだからな」

どんな。

「そんなイカれた格好での挨拶はただのバカだ」


「かっこいいー」

「綺麗な人~。ハーフかなぁ?」

「あの子、かわいくね?」

「だな~」

やはり目立っている。別の意味でも。そういえば吸血鬼はほとんどの奴が容姿端麗、その姿で餌である人間を誘き寄せるらしい。確かに初めて彼らを見たときは、人間とは違う神秘的な雰囲気を漂わせていた。

「あ、レオー!これからは一緒だね!よろしく」

「…なんだお前ら、知り合いなのか?じゃあそうだな…レオ、怜亜、桐生、橘の4人で班を作れ。まずは知り合いの方がやりやすいだろ」

「!?」

……バカな。


*


「一体どういうことだ!?学校に来るつもりだったなら事前に話しておけよ!!!」

昼休み。バンッと屋上の床に蓋が開いた弁当箱を叩きつけながら声をあげた。おかげで弁当箱に入っていた小さなおにぎりが宙に浮き、それを横から響に奪われてしまった。さっきから良いことない。

「だってなー?オレも学校に行くって言ったら、お前嫌がるだろ?」

「当然だ」

「こいつ、キッパリと……」

だって吸血鬼と!!吸血鬼との学校生活なんて…!!一体誰が想像しただろうか。ましてこいつらと一緒にいたら何が起きるかわからない…!!

「別にな!!お前たちが嫌いだとかの問題じゃないんだ。吸血鬼ってことがバレなければ学校にいたって構わないし。僕は普通に生活したいんだ」

そう、普通に―……。

「なに。それは安心しろ。オレたちが自らバラすようなことはしない。そういうお前こそ気をつけろよ。…ところでこれから調理実習なのに、何で弁当持ってきてるんだ?」

「僕だって何もしない。…実習で作ったものだけじゃ物足りないかと思ったんだ。朝も食べてこなかったしな」

キーンコーンカーン……

「あっ!チャイム鳴ったわよ!お腹すいたー。レオ、案内してくれる?」

「え、ああ…」

……お腹すいたのか?千里は千里で、購買で菓子パン買ってたのに。

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