第5夜
「ん?おー、帰ったか。……どうした?」
辺りにぶつかりながら慌ただしく中に入ってきた怜亜と僕を見て、響は怪訝そうな顔をした。僕はバランスを崩しながらも、しゃがみこんだ怜亜から床におりた。
『 …はぐれを、仕留め損なった… 』
「怜亜が?それは珍しいこともあるもんだな。何があった?」
怜亜はさっきまでのことをぽつりぽつりと話し始めた。それを聞いていた響は腕を組んでうーんと唸った。
「……なるほど。確かに奴らがそれだけ出てきたということは、どこかに拠点があるんだろうな。ただのはぐれの集団ではないな。リーダー格の混血種がいるか、それとも…」
『 …オレがちゃんと…しないから……だから、 』
「まあそう、しょげるな怜亜。とりあえず人型に戻れ」
狼から人に戻った怜亜の表情は、歪んでいた。ギリ、と音が聞こえそうなほど歯を食いしばっている。奴らにバカにされた挙げ句、仕留められなかったのがよほど悔しかったのか。
「…ごめん。僕が足手まといになったせいだな」
それでも納得できないのか、怜亜はふいっとそっぽを向いた。けっこう根に持つタイプかもしれない…。
「……別に…レオは悪くない。オレが、至らなかっただけだ……」
「しかしまぁ…はぐれの連中も相当歪んできたな。力に溺れて、しまいにはオレが王になる…ねぇ。勘違いも甚だしい。確かに人間を越えた力は手に入れただろうが…契約に縛られている以上、自分より上の存在を蹴落とすなんて不可能なんだがな。……まぁ、それはそれとして。よし、じゃあオレも本格的に行動してみるか。千里も暇そうだしな」
「………?」
その時は裏で何かやらかすつもりなのかと思っていたが、まったく違った。
それは翌日、さっそく知ることになる。
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