第4夜



「ようやく自分のことを理解したみたいだな。上々だ。長い奴は1ヶ月以上もかかるからな」

「……響?」

顔を上げると怜亜の隣で響が僕を見下ろしていた。ショックのあまり何か言う気分でもなく、僕は再び顔を伏せた。

「ああ。ずいぶん派手にやられたな?怜亜」

「…加減、できてないから。レオは……」

体育座りで顔を伏せてる僕を怜亜が見下ろす視線を感じた。どんな表情かはわからない。

「理解はしたが、受け入れられないってか?やれやれ…。レオ、前にオレが話したこと憶えてるか?」

「……“手伝い”のことか?」

「そうだ、もう時間がない。今朝のニュースもはぐれの仕業だ。このままじゃ被害が拡大する。これによって“あいつら”まで動き出せば…共存なんて言ってる場合でもなくなる。そうなれば、オレの望みは実現できない」

響の言葉に、僕は伏せていた顔をもう一度上げた。いつになく真剣な表情だった。あいつら?共存?

「望みって……?」

「オレの目的は1つ。全ての吸血鬼を従え、人間と吸血鬼の共存を実現させることだ」

……共、存……?人間と?



「………オ、…………レオ!!」

「えっ?」

「え?じゃねえよ。考え事か?実験、薬品使ってんだから危ないだろ」

「ああ……悪い」

響が言っていた、人間との共存…。そんなの実現するのか?人間同士でも上手くいかないときがある。それをましてや吸血鬼となんて。

だって、吸血鬼は血を吸わなきゃで、人間はそれを嫌っていて…。

「レオ!!」

「ひっ!?」

「ひっ、って…。お前、どうしたんだよ。大丈夫か?なんなら保健室行ってこいよ」

「い、いや…なんでもない。気にしないでくれ」

「…まぁ、大丈夫ならいいけど」

………共存か。

そりゃ、差別もない平和な社会になればいいけど。それができたら誰も苦労してないじゃないか。それに吸血鬼の方が時間なら腐るほどあるだろう。今まで何をしてきたんだ。

とりあえず自分のことは認めたくないが、状況は理解はした。こうなった以上は仕方がない。なら、今の自分にできる事は―…。

「レオ!それ沸騰してる!!」

「……」

とりあえず実験をまとめよう。

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