第4夜



トンッと怜亜が目の前に下りてきた。僕はその場から動けずに怜亜を見上げた。

「な、なに…言ってるんだ。お前人の話を聞いてたか!?僕は絶対に―…!」

「なら、狂っても…いいのか?それこそ、人間を無差別に襲うようになる」

「…っ」

確かに狂った上、人間を襲うなんてしたくはない。だからって人間として、してはいけないような行為を自分からするのはどうなんだ?…生きるためなら、仕方ないっていうのか。

「人間がすることじゃ、ないと思ってるか?でもレオは…もう人間じゃない」

「!?」

改めて現実を突きつけられて僕は動揺してしまった。……その通りだ。わかっている。でもそれを認めたら何かが変わってしまう気がして…。いや、十分変わっている。

「本当は、生きてる人間からの方がいいんだけど。そこまで言うなら、この方法しかない。同族の…オレの血を飲めば、少なくともレオは、人間を襲ったわけじゃなくなる。気は楽なはず」

「そ…れは……」

そうかもしれない。僕が感じる負担を少なくしようとしてくれてるのはありがたい。しかしその行為に変わりはない。

「う、ぅぅ……」

なかなかうんともすんとも言わない僕を怜亜はじっと見つめたあと、首に付けていた首輪を上にずらし、ぐっと服を広げた。

…あ、血…血が―…

「…お前は一体、何を望む?人間でいられた、生きたい、死にたくない、吸血鬼は嫌だ、死んだ方がマシだ。…人間は、欲望の塊だな」

「……ぅぐ…っ!?」

ずくんと、自分の目が何かに反応したような気がした。目が赤く染まっていく。それすらもわかってしまう。血に、反応している。目の前の、すぐそこにある、皮膚の下に…血が…!

「あ゙ぁ…!!あ、くっそ!!おさまれ、おさまれよ!!くそ、くそ!!!!」

僕は…人間で―………

次の瞬間、僕は勢い良く怜亜の首に噛み付いていた。皮膚の裂ける音がする。どんどん血が溢れてくる。

「…ぅ…ぐぁっ…!」

何をやってるんだろう。自分でもわからない。何かが崩壊したみたいだ。もういい、何でもいい。お腹がすいて仕方がない。あぁ、美味しい。甘い。

……………甘い?

血が、甘い。足りない、もっと…もっと欲しい…。

チガホシイ

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