第4夜
数日後……。
いつもとは違う感覚が日増しに強くなっていった。空腹感があるのだ。一食でも抜いているならともかく、病弱だったころから三食は間違いなく食べてきていた。こんなに空腹になることはそれほどなかったのに。
「……お腹、すいた」
もともと小食でほとんど食べないのだが、おかしなことに今日はいくら食べても足りない。いや、一応食べればお腹いっぱいにはなる。…が、それ以外の何かが足りない。満たされた気がしないのだ。
「だめだ…ほんとに、なに…」
自分の体なのにわけがわからない。ふとテレビに目を向けると、今日も朝から吸血鬼についてのニュースをやっていた。それを見てハッとする。
…………まさか、
「…いや、違う。違う!!そんなはずない…。そんなことがあってたまるか」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄
「おはよー。あ、見たか?レオ。今朝のニュース」
「…………ああ」
「嫌になるよなー?世の中が信じられなくなってくるぜ。だって、吸血鬼ってあくまで噂だろ?」
「うん…そうだな」
適当に返事をする僕を変に思ったか、話していた友人が怪訝そうな表情で覗き込んできた。最近気づいたが、左目は赤かったのがいつの間にか人間だった頃と同じ元の色に戻っていた。ふとしたときに急に変わっていたということもなく、今は落ち着いている。
「レオ?どうしたんだよ、気分悪いのか?」
「いや、大丈夫。ただ…お腹空いて」
「なんだよ、朝食ってないのか?これ食う?」
そう言いながらカバンからパンを取り出して差し出してきたが、僕はふるふると首をふった。なんだか力が入らない。ダルいというか。
「いらない」
「ええ?でも腹減ってんだろ?」
「違くて、僕が欲しいのは―……」
言い掛けて、ハッとした。僕は今…なんて言おうとした?相変わらず友人は変なものを見るような目で僕を見ていた。確かにそうだ。お腹がすいてるのにご飯はいらないなんて、なに言ってるんだこいつと思われる。
「え、あ…いや。大丈夫だ。あの…LHRは休むから、先生に言っといて」
保健室…いや、屋上がいい。保健室だと早退しなさいと言われるかもしれない。別に具合が悪いわけではないのだから。席から立ち上がると、僕はふらふらと教室を出て行った。
「あっ、レオ!?」
.