第3夜
「はよー!みんな、レオが来たぞー!!」
教室に入ると、あいさつをしながら他のクラスメートもわらわらと近寄ってきた。なんなんだ一体。昨日会ったばっかりじゃないか。
「なんかお前、綺麗になったな」
「…はぁ?」
「え?あ!な、なんでもないなんでもない!!オレ何言ってんだ?あはは……」
なんだこいつ…。いや、もしくは吸血鬼としての雰囲気を感じ取った?いやいや、考えすぎだ。ずっと休んでたんだし、前の僕なんて記憶にないだろう。
「言われてみれば、レオくん雰囲気変わったねー」
「もともとかわいかったけどね」
「確かに、オレらからすればレオはちっちゃいからなー」
「かわいいかわいい」
わらわらと群がられ、頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。やめろさわるな、縮む。ていうか苦しい!!目がバレる!!
「頭を撫でるなっ…小さいって言うな!!」
「何やってんだ、席につけー!今日は転校生を紹介する。いきなりだったから先生も驚いたんだけどな」
歓声とともにみんな自分の席についていく。僕も自分の席についた。うん、前と変わっていない。そのままにしてくれていたのが嬉しい。それにしても……転校生?こんな時期に?
「先生ー。転校生は女子ですかー?」
「残念だったな、男子諸君。転校生は男だ」
「マジかぁあああ!!!!」
落ち着け、感情をあらわにしすぎだ。
「女子は喜べ。なかなかのイケメンだ」
教師がそういうことを言うのか。先生の言葉に女子はざわついていたが、僕は別にどちらでもいい。クラスメートとして仲良くやっていければ。そんなことを思いながら扉の方を眺めていた僕は、一瞬言葉を失った。
「入っていいぞー」
「なっ!?」
教室に入ってきたのは、
一昨日の夕方に響と一緒にいた…あの男だった。黒髪に赤い瞳。首には鎖が垂れたベルトの首輪をつけている。生気がないような瞳でぼーっと教室内を見つめていた。
「……怜亜です。よろしく」
長い前髪から覗く赤い瞳は、間違いなく僕を見ていた。目が合った瞬間ぞくりと鳥肌がたち、空気も冷やっとした気がした。なんだか響とは違う…。何が違うと言われれば説明に困る。けどなんとなくわかるのだ。彼の纏っている何かが、彼から感じるもの全てが。
桁違いだとでもいうような。
「なんで……」
周りからは女子の騒ぐ声が聞こえる。
僕は呆然とその男を見つめていた。
.