第2夜
「ねぇ、」
響と一緒に出て行った窓から、ひょこっと千里が顔を出した。床に散らばった鏡の破片を片付けようと動いていた僕は、いきなり声をかけられてビビッた拍子に棚に足をぶつけてつんのめってしまった。
「っ!?な…なんだよ、帰ったんじゃなかったのか?」
「ごめんね、忘れてた。確認でもう一度言っておくけど、吸血鬼の姿は鏡には映らないのよ。だって本当は死んでいて、いないも同然だから。さっきもそうだったでしょう?鏡とかカメラ、姿を映すものを目で認識しただけで映せる吸血鬼もいるんだけど、レオは混血だから…。自分はここに存在してるって思いで鏡に触れながら意識すればちゃんと映るから。あとくれぐれも純銀には気をつけてね。それじゃあね」
そう言うと、千里は手を振りながら窓から再び姿を消した。そういえばさっき一瞬だけ映らなかったような?千里に言われて、でも映るのは当たり前だと思いながら見たから二度目はちゃんと映ったってことか?なんだってこんなことに。
「……冗談じゃない」
生きたいと思った。病気にならないのが羨ましいと思った。自由に動きたかった。でもあれは思っただけで…吸血鬼なんていないと思って…。
本気で化け物になりたいなんて
望んでなかった………。
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