第2夜



「……ん……」

目が覚めると、そこは自分の部屋だった。一体自分は何をしていた?いつも通りベッドの上で目が覚めたことに変わりはない。しかし決定的に違うことがあった。起き上がろうとすると、脇腹に鈍い痛みが走ったのだ。

昨日…僕は……?


「気がついたか?」

「!?」

ハッとして声のした方を見ると、昨日の銀髪の男と知らない女が立っていた。その姿を見た瞬間に昨夜の出来事が一気に甦ってきた。後ろが壁だと知りつつも後ずさる。

「お前はっ!!ばっ、化け物…!夢っ……じゃ……」

「化け物とは心外だな。まぁ、仕方ないか。オレは敵じゃないから安心しろ。これからお前に話さなきゃならないこともあるからな。傷はどうだ?」

「………傷、」

そう言われ脇腹を見ると、鈍痛はするものの傷痕は一切残っていなかった。……なんで。あんなに、血が出てたのに。死ぬ寸前だったはずだ。こんなことが…。

「さすがはオレの血。治りが早い」

「何を言ってんのよ。このくらいなら誰だって治るわ。ねぇ、君。大丈夫?」

女がベッド近くでしゃがみこみ、様子をうかがうように話し掛けてきた。その目は男と同じ赤い色だった。こいつも、吸血鬼なのか…。

「私、橘千里。よろしくね、レオ」

「!?なんで名前……!!」

「あぁ、ごめんね。ここ君の家でしょ?いろいろ見てたら名前書いてあったから……」

すまなそうに手を合わせ、もう一度“ごめん”と言った。頭を抱えながらため息をつく。もう何が何だか…。

「わけがわからない。どういうことだ?ちゃんと説明し…って、おい!!なにくつろいでんだ、人ん家で!!!」

男の方に目をやると、ソファーに座り足を組みながら優雅に紅茶を飲んでいた。図々しいにもほどがある。そして一言。

「まぁまぁだな、この紅茶」

「ダメ出しすんな」

「ふむ…まぁいい、話そうか。これから話すことは現実だ。お前は全て受け入れられるか?」

「な、なんだよ……」

コホンと咳払いをすると、テーブルにカップを置いて向き直った。思わず身構える。

「オレは桐生響。多くの吸血鬼を従える、吸血鬼の王だ。さぁ、崇めろ!」

「わー!パチパチパチ」

「………」

口で言ったよ、この女。実際に自分で拍手してるんだから、擬音いらないだろ。

「おい、なんだその引きっぷりは。ノリが悪い奴だな」

「うるさいわ」

それよりも今、なんて言った?

吸血鬼の…王?

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