第1夜



「……暗い、重い…ここは邪気が渦巻いてるな。まるでこの空みたいだ」

建物の上、1人の男が空に向かって手を伸ばした。男の隣に立っている女も空を見上げて目を細める。

「今日はやけに暗いわね」

「見たか?さっきの人間。とんだネガティブ少年だな。むしろあの人間の心がこの空に反映しているようだ」

「ええ。きっと病弱なのよ。人生いつ終わってもいい、みたいな感じだった」

「……おもしろそうな奴だったな。人間観察といくか」

ニヤリと笑う男の目の先には、先程公園にたたずんでいた人間の家があった。その家から白衣を着た男が出てくるのが見える。

「悪趣味ねぇ…。もうすぐ死ぬ人間の観察だなんて」

「そうかな?あの子はまだ死なない」

「?それ、どういうこと?」

女は男に問い掛けたが、男はただ笑っているだけだった。

深紅の瞳を光らせて―……。



*


「ふぅ…」

パタンと本を閉じて窓の外を見ると、雨はすでにあがっていた。さっきの天気が嘘みたいだ。空も少し明るくなっている。明日は晴れるだろう。

「他に本あったっけ…」

1人は気楽でいい。でもすることがなくてヒマだ。家に置いてある本も読み尽くしてしまった。運動はできないし、テレビも気になるのは特にない。

「そうだ。学校、見に行こうか」

先生たちは僕の状態を理解しているため、授業に参加しなくても来れそうなときは顔出しだけでもいいと許可をもらっている。今日はそんなに体調悪くないし、久しぶりに顔出しに行くことにした。

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