第1夜



ザアァァァ…………

雨が地面に叩きつけられていく中、僕は淡々と歩みを進めていた。ふと周りを見るとまだ学校に向かっている学生や、慌てすぎて忘れたのかカバンを傘代わりに走り去っていく会社員の姿があった。いつもはもう少し人がいるが、こんな雨では当然だろう。

「……」

家の近くにある公園に着いたが、やはりいつも見かける子どもたちは見当たらなかった。僕がパシャパシャと水たまりを歩く音だけが雨の中響いていく。ふと立ち止まると、少しだけ空を見上げた。雨の勢いに目を細める。冷たい…。どんどん髪が湿っていく。雨は嫌いじゃない。僕を励ましてくれてるようで。誰かが僕の代わりに泣いてくれてるような気がして……。

……それもこれも、みんな僕の思い込みだ。むしろ僕は、生きてほしいと誰かに望まれているのか?誰の役にも立てない僕が。どうせ僕はもうすぐ死ぬ。役たたずのままだらだら生きるなら、すぐにでも死んだ方がマシだ。人はいずれ死ぬ、僕はそれが少し早かった。それだけのこと。

僕の両親も、物心ついたときにはすでにいなかった。顔もわからない。気がついた時、そばにあったものは昔から診てくれていた主治医と両親が遺したであろう大金のみだった。
でもそれがどうした?

普通なら嬉しいと思うかもしれない。金さえあれば楽して暮らしていける。けど、もうすぐ死ぬ人間にとってそんなもの無意味だ。

たくさんの金、大きい家。

自分の手元に残されたのに、何かを無くしてしまったかのようで。

………金?家?

違う。
残されたのは孤独。

大切なものがない僕は今、孤独だ。







「レオくん」

僕を呼ぶ声にハッとし、ゆっくり後ろを振り返った。僕と目が合うと笑いながら近づいてきた。見慣れた白衣の男。

「……先生」

「家にいないからびっくりしましたよ。風邪引きますよ。家に帰りましょう」

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