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番外編
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Extra editio12. Like a fantasy
ブピ―――ッ
「・・・え?うそぉー」
何度目のことだろう。この不快なビープ音を聞くのは―――ここは図書準備室。〇〇は、二学年から生徒会執行部の一員として図書委員長に就任。主に、放課後の時間を使って担当業務をこなす日々を送っていた。
通常、司書資格を持つ教諭などが図書事務を担うものだが、〇〇の通う学校では生徒が一部の事務作業を任されていた。そのうちのひとつ、登録図書を管理しているパソコンがシステムエラーを起こすのは決まって急いでいる時ばかり。バイク屋のアルバイトが休みだという真一郎を待たせているものだから、心底機械音痴の自分を恨んだ。
「勘弁してよぉ・・・」
「―――ソレ、入力文字に制限かかってる」
突然降ってきた声に、「わぁ!」と思わず色気の無い叫び声を上げた〇〇が慌てて後ろを振り返る。メガネが印象的、というより、周囲には「メガネしか特徴が無いよな」なんてよく弄られている同学年の副委員長―――
「あ、新井くん!」
「15文字以上は登録できないはず」
そう言われてふと画面を覗くと、確かに長めのタイトルの本が一冊、リストに入力されていた。〇〇は、該当の図書名にデリートキーを掛けた後、エンターキーを恐る恐る押す。その瞬間、カリカリとハードディスクの処理音が暫く続き、程なくしてポーンッと軽快な音が処理完了の合図を知らせた。無事に登録が済んだことを確認した〇〇が、ようやくといった様子で胸を撫で下ろす。
「出来た!新井くん凄い!ありがとう」
「え、べ、別にこれくらい・・・普通だし」
出来て当たり前、と言われた事に少なからずショックを受けた〇〇だったが、仕様がない。自分は機械音痴なのだから。と半ば開き直ってみせた。きっとマニュアルに書いてあったに違いないのだけれど。
兎にも角にも、彼のおかげで難を逃れた〇〇は、登録が済んだ新刊を棚に収めるべく意気揚々と立ち上がった。
「新井くんが副委員長でよかった。今度何かお礼させてね」
「・・・何、か・・・」
戸惑いをみせた新井に、〇〇は思わず気に触ることを言ってしまったかと不安になった。普段は寡黙で、教室の中でも一人でいるようなタイプの彼。人となりを理解するにはまだまだ時間が必要だろう。そんな段階で、気まずい関係になることは極力避けたかった。
「あの、ご、ごめんね。お礼とか、迷惑だったらいいの」
「め、迷惑なんかじゃない!」
物静かな彼から飛び出した声に思わず肩が震えた〇〇を見て、しまった、という表情をした新井の顔は赤面していた。
「あ、いや、その・・・っち、違うんだ・・・っ///」
しどろもどろになった彼を見て、やっぱり気に触ってしまったのだと〇〇は落ち込んだ。あくまでも生徒代表として担っている業務の一環であり、別に彼と馴れ合おうというつもりは無いのだが、それでも良好な関係を築いていきたいとは思っていた。東京に来るまで人と関わることすら満足に出来なかった自分に、友人、そして恋人がいる事が如何に奇跡的な事か―――とひしひしと感じた。人間関係とは、時に医学を学ぶことよりも難しいものである。
「あの、余計なこと言ってごめんなさい。忘」
「――も、いい・・・」
「え?」
「お礼、って・・・何でもいいかな、お願いすること」
萎んだ花から一転、まるで満開に咲き誇った表情へと移り変わった〇〇は、嬉しさのあまり「もちろん!」と大きく元気な返事を返してみせた。
しかし、後にこの「何でも」を許可したことを、〇〇は心底後悔することになる。
「まだかなぁん~ふふふふっ♪」
「キメェ声出すなよ・・・」
浮かれている。腹立つ程に。沖田は、冷めた目で目の前にいる男に視線を向けた。
進級しても同じクラスになったこの男、基、真一郎とは最早腐れ縁の何ものでも無い間柄ではあるが、こうも遠慮無しにデレ顔を晒されると一発殴りたい衝動に駆られる。名の知れた巨大暴走族の元総長(信じられないが)である目の前の男を殴るなど、喧嘩とは無縁の自分には到底叶わぬ話だろうが、今ならいける気がする。いや、今しかない気がする―――沖田は思わず拳を握った。
と思考を巡らせるうち、とっておきの"ネタ"があることを思い出し、沖田は勝ち誇ったかのように口角を上げてみせた。「〇〇、まだ終わんねぇのかな~」と呟きながらニヤける真一郎に向かって渾身の一発をお見舞いする。
「てか、いいのかよぉ佐野」
「何が?」
「何が、じゃねーわ。聞いてねぇの?」
「だから、何を?」
「〇〇ちゃん、今日は副委員長と二人で仕事するっつってたぞ」
「ほぉん・・・で?」
「図書委員の副委員長、男だったよな」
「・・・つまり?」
「ヤローと二人っきり、図書室の裏で作業s」
と沖田が言い終わる前に、目にも留まらぬ早業で教室から去っていった真一郎。こりゃまた面白くなりそうだ♪と言わんばかりのニヤついた顔のまま、沖田は足取り軽やかに後を追いかけたのだった。
「はぁっ、ああ、いい・・・っ凄くいいよ神保さん」
「あっあの、新井くん・・・っは、恥ずかしいから早くしてぇ///」
「つ、次は後ろから」
「ええっ!?ちょっとだけって言ったのにっ、待っ、やっ///」
人っ子一人いない放課後の図書室に、静寂を破るが如く勢いよく飛び込んだ真一郎は、「準備室」と書かれたドアの前で停止した。その向こうから聞こえてくる声に、何なら息をするのも忘れてピクリとも動かない。
このやり取り、どう聞いたって官能的なあれこれを想像してしまう。いや、何かの間違いだ。夢であって欲しい―――妙な緊張感の中やっと息を吸い込んだ真一郎は、ゾワゾワと不快な感情の高ぶりを感じた。周り(不良仲間)からは割と穏やかな性格だと思われている彼も、好きな女の子の事となれば沸点は低いのだ。
気づいた時には、もぎ取らんばかりにドアノブを捻り、バァン!と勢いよくドアを開けていた。
「オイ、人の女に何してくれてんだオラァ゙」
突然の訪問者に、中に居た二人が一斉に出入口の方へ視線を向けた。乱暴な所作の割に静かな威嚇を見せる真一郎に、妙な不気味さを感じる。
「っな、だ、誰!?」
「しっ真一郎先輩!?」
手前に新井、その影に隠れて〇〇が居ることが分かると、真っ先に新井につかみかかった真一郎。
当然、〇〇は焦った。素人相手にむやみやたら手を挙げることは無い・・・筈だが、そうは言えど今にも殴り掛かりそうな勢いに、慌てて静止を求める。
「ま、待ってください!!」
必死に叫ぶ〇〇の声に、再びピタリと止まった真一郎。それは、目の前の男を庇っているようにも聞こえて。
「なんで・・・〇〇、まさ、か・・・!?」
まさかコイツに気があるのか、と最悪の結末を想像して怒りと悲しみが一気に押し寄せた真一郎は、震える声で〇〇に問うた。もし、他の男に身体を許したのだとしたら―――正直そんな彼女を直視するなんて心臓を抉り出されそうな気分だったが、意を決してその姿を視界に捉える。
その瞬間、予想外の光景に目を瞠った。
「・・・」
「・・・はっ!」
〇〇は、うっかり忘れていた大事なことを思い出したかのように口をあんぐりと開けていた。顔を真っ赤にして「しまった!」とでも言いたげだ。
「っみ、見ないでぇ~っ!!///」
と同時に、更なる訪問者―――沖田が開けっ放しの出入り口から顔を覗かせた。
「・・・コレ、どーゆー状況・・・?」
新井に掴みかかったままフリーズしている真一郎と、その奥で身体を隠すように うずくまりながら叫ぶ〇〇―――沖田はこの"可笑しな"状況に苦笑するしかなかった。
「えーと、じゃあつまり新井は・・・オタ」
「オタクなんて卑小な奴らと一緒にしないでくれ!」
〇〇は、昨年の文化祭を思い起こさせる猫コスプレ姿で半泣き状態だった。新井に提案した"何でも"叶えると言ったお願いが、まさかコレだとは思いもよらず。
「あの運命の日・・・仮装喫茶で僕は衝撃を受けたんだ!まさか神保さんが3次元の"ニャンもも"だったなんて!」
「ニ、ニャン、もも・・・?」
「〇〇ちゃん、多分キャラの名前」
どうも彼は、〇〇と接触出来る機会をうかがいながら、好きなアニメキャラクターのコスプレ用アイテムを常にロッカーに忍ばせていたらしい。もう一度あの姿を拝みたいが為に。
「そ、それがあの時のわたしと、そっくりだった・・・?」
「そうさ!見みてくれ僕のコレクションを!」
と意気揚々と新井が取り出したのは、トレーディングカードが収まった分厚いアルバム。主人公ニャンももをはじめ、様々な仲間もいるらしい。
「確かに、顔もまぁ似てるっちゃあ似てるか」
「そそ、そうですか!?」
「正しく!テレビから飛び出してきたのかと思ったよ!」
「お前声デケェな」
口数少ない姿からは想像出来ない程にテンションが高い。〇〇は、彼の秘めた一面を知ることが出来て喜ぶべきかと思う反面、見てはいけないモノを見たような心持ちだった。この気持ち、いつぞやどこかでも・・・
「で、自分の性癖の為に〇〇ちゃんに無理やりコスプレさせたって?お前学校でなんつーことしてんの?それもう犯罪よ?」
「失礼な!無理やりじゃない。ちゃんと彼女の了承を得たさ」
沖田の信じられないという表情を見て、〇〇はバツの悪さに思わず視線を逸らした。コレには深い訳が。
「だとしても、カレシは黙っちゃいねぇぞ?なぁ佐野。なんとか言ってやれ。むかっ腹立ってんだろ?」
先程から黙りの真一郎。気まずさから〇〇は声をかけられないどころか、目を合わせることすらままならなかった。
確実に怒っていた。〇〇としては、「姿を見るだけでいい」と言われ、勿論見えないところで着替えを済ませたし、文化祭で実体験済みということもあってやましい事をした自覚は無かっのだ。しかし、こういうことは個人の認識の程度によるもので、「異性相手に気を許しすぎではないのか」と言われても言い訳出来ないとは思った。色恋に関してはデリケートな真一郎のこと。現場を目にされたのは想定外のことだったが、不快にさせてしまったのなら、と〇〇は謝罪の言葉を述べようと口を開いた。
「真一郎先輩、あの・・・ごめんなさい、わたし」
「・・・いい」
「え?」
「かわいい・・・その耳触らせて」
「へ!?」
〇〇の返事もそこそこにキュッと(猫の)両耳をつまんだ真一郎は、恍惚とした表情でその触り心地を堪能している。
そうだった。彼はこのコスプレを妙に好いていたのだ―――恥ずかしさ倍増で〇〇も一緒になって顔を真っ赤にしながら俯いた。
「し、ししし真一郎先輩!も、もう、き、着替えたいから、そのっ」
「やだ。家帰るまでこのままがいい」
「ええ!?!?///」
「お、おい!ニャンももの耳に気安く触」
「あー、君君。知らないかなぁ?コイツ、全国一の族束ねてた元総長だから。下手すると病院送りになっちゃうかもよ♡」
「なんっ!!?」
新井が恐怖に慄く中、真一郎の気が済むまで〇〇はこの"変身"を解くことは許されなかったのだった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
真一郎「新井くん(キリッ)」
新井「っは、ハハハハイ!!?」
真一郎「他にはどんなコスチュームを持っているのかな?(キリリッ)」
〇〇「先輩何考えてるんですか!?///」
ブピ―――ッ
「・・・え?うそぉー」
何度目のことだろう。この不快なビープ音を聞くのは―――ここは図書準備室。〇〇は、二学年から生徒会執行部の一員として図書委員長に就任。主に、放課後の時間を使って担当業務をこなす日々を送っていた。
通常、司書資格を持つ教諭などが図書事務を担うものだが、〇〇の通う学校では生徒が一部の事務作業を任されていた。そのうちのひとつ、登録図書を管理しているパソコンがシステムエラーを起こすのは決まって急いでいる時ばかり。バイク屋のアルバイトが休みだという真一郎を待たせているものだから、心底機械音痴の自分を恨んだ。
「勘弁してよぉ・・・」
「―――ソレ、入力文字に制限かかってる」
突然降ってきた声に、「わぁ!」と思わず色気の無い叫び声を上げた〇〇が慌てて後ろを振り返る。メガネが印象的、というより、周囲には「メガネしか特徴が無いよな」なんてよく弄られている同学年の副委員長―――
「あ、新井くん!」
「15文字以上は登録できないはず」
そう言われてふと画面を覗くと、確かに長めのタイトルの本が一冊、リストに入力されていた。〇〇は、該当の図書名にデリートキーを掛けた後、エンターキーを恐る恐る押す。その瞬間、カリカリとハードディスクの処理音が暫く続き、程なくしてポーンッと軽快な音が処理完了の合図を知らせた。無事に登録が済んだことを確認した〇〇が、ようやくといった様子で胸を撫で下ろす。
「出来た!新井くん凄い!ありがとう」
「え、べ、別にこれくらい・・・普通だし」
出来て当たり前、と言われた事に少なからずショックを受けた〇〇だったが、仕様がない。自分は機械音痴なのだから。と半ば開き直ってみせた。きっとマニュアルに書いてあったに違いないのだけれど。
兎にも角にも、彼のおかげで難を逃れた〇〇は、登録が済んだ新刊を棚に収めるべく意気揚々と立ち上がった。
「新井くんが副委員長でよかった。今度何かお礼させてね」
「・・・何、か・・・」
戸惑いをみせた新井に、〇〇は思わず気に触ることを言ってしまったかと不安になった。普段は寡黙で、教室の中でも一人でいるようなタイプの彼。人となりを理解するにはまだまだ時間が必要だろう。そんな段階で、気まずい関係になることは極力避けたかった。
「あの、ご、ごめんね。お礼とか、迷惑だったらいいの」
「め、迷惑なんかじゃない!」
物静かな彼から飛び出した声に思わず肩が震えた〇〇を見て、しまった、という表情をした新井の顔は赤面していた。
「あ、いや、その・・・っち、違うんだ・・・っ///」
しどろもどろになった彼を見て、やっぱり気に触ってしまったのだと〇〇は落ち込んだ。あくまでも生徒代表として担っている業務の一環であり、別に彼と馴れ合おうというつもりは無いのだが、それでも良好な関係を築いていきたいとは思っていた。東京に来るまで人と関わることすら満足に出来なかった自分に、友人、そして恋人がいる事が如何に奇跡的な事か―――とひしひしと感じた。人間関係とは、時に医学を学ぶことよりも難しいものである。
「あの、余計なこと言ってごめんなさい。忘」
「――も、いい・・・」
「え?」
「お礼、って・・・何でもいいかな、お願いすること」
萎んだ花から一転、まるで満開に咲き誇った表情へと移り変わった〇〇は、嬉しさのあまり「もちろん!」と大きく元気な返事を返してみせた。
しかし、後にこの「何でも」を許可したことを、〇〇は心底後悔することになる。
「まだかなぁん~ふふふふっ♪」
「キメェ声出すなよ・・・」
浮かれている。腹立つ程に。沖田は、冷めた目で目の前にいる男に視線を向けた。
進級しても同じクラスになったこの男、基、真一郎とは最早腐れ縁の何ものでも無い間柄ではあるが、こうも遠慮無しにデレ顔を晒されると一発殴りたい衝動に駆られる。名の知れた巨大暴走族の元総長(信じられないが)である目の前の男を殴るなど、喧嘩とは無縁の自分には到底叶わぬ話だろうが、今ならいける気がする。いや、今しかない気がする―――沖田は思わず拳を握った。
と思考を巡らせるうち、とっておきの"ネタ"があることを思い出し、沖田は勝ち誇ったかのように口角を上げてみせた。「〇〇、まだ終わんねぇのかな~」と呟きながらニヤける真一郎に向かって渾身の一発をお見舞いする。
「てか、いいのかよぉ佐野」
「何が?」
「何が、じゃねーわ。聞いてねぇの?」
「だから、何を?」
「〇〇ちゃん、今日は副委員長と二人で仕事するっつってたぞ」
「ほぉん・・・で?」
「図書委員の副委員長、男だったよな」
「・・・つまり?」
「ヤローと二人っきり、図書室の裏で作業s」
と沖田が言い終わる前に、目にも留まらぬ早業で教室から去っていった真一郎。こりゃまた面白くなりそうだ♪と言わんばかりのニヤついた顔のまま、沖田は足取り軽やかに後を追いかけたのだった。
「はぁっ、ああ、いい・・・っ凄くいいよ神保さん」
「あっあの、新井くん・・・っは、恥ずかしいから早くしてぇ///」
「つ、次は後ろから」
「ええっ!?ちょっとだけって言ったのにっ、待っ、やっ///」
人っ子一人いない放課後の図書室に、静寂を破るが如く勢いよく飛び込んだ真一郎は、「準備室」と書かれたドアの前で停止した。その向こうから聞こえてくる声に、何なら息をするのも忘れてピクリとも動かない。
このやり取り、どう聞いたって官能的なあれこれを想像してしまう。いや、何かの間違いだ。夢であって欲しい―――妙な緊張感の中やっと息を吸い込んだ真一郎は、ゾワゾワと不快な感情の高ぶりを感じた。周り(不良仲間)からは割と穏やかな性格だと思われている彼も、好きな女の子の事となれば沸点は低いのだ。
気づいた時には、もぎ取らんばかりにドアノブを捻り、バァン!と勢いよくドアを開けていた。
「オイ、人の女に何してくれてんだオラァ゙」
突然の訪問者に、中に居た二人が一斉に出入口の方へ視線を向けた。乱暴な所作の割に静かな威嚇を見せる真一郎に、妙な不気味さを感じる。
「っな、だ、誰!?」
「しっ真一郎先輩!?」
手前に新井、その影に隠れて〇〇が居ることが分かると、真っ先に新井につかみかかった真一郎。
当然、〇〇は焦った。素人相手にむやみやたら手を挙げることは無い・・・筈だが、そうは言えど今にも殴り掛かりそうな勢いに、慌てて静止を求める。
「ま、待ってください!!」
必死に叫ぶ〇〇の声に、再びピタリと止まった真一郎。それは、目の前の男を庇っているようにも聞こえて。
「なんで・・・〇〇、まさ、か・・・!?」
まさかコイツに気があるのか、と最悪の結末を想像して怒りと悲しみが一気に押し寄せた真一郎は、震える声で〇〇に問うた。もし、他の男に身体を許したのだとしたら―――正直そんな彼女を直視するなんて心臓を抉り出されそうな気分だったが、意を決してその姿を視界に捉える。
その瞬間、予想外の光景に目を瞠った。
「・・・」
「・・・はっ!」
〇〇は、うっかり忘れていた大事なことを思い出したかのように口をあんぐりと開けていた。顔を真っ赤にして「しまった!」とでも言いたげだ。
「っみ、見ないでぇ~っ!!///」
と同時に、更なる訪問者―――沖田が開けっ放しの出入り口から顔を覗かせた。
「・・・コレ、どーゆー状況・・・?」
新井に掴みかかったままフリーズしている真一郎と、その奥で身体を隠すように うずくまりながら叫ぶ〇〇―――沖田はこの"可笑しな"状況に苦笑するしかなかった。
「えーと、じゃあつまり新井は・・・オタ」
「オタクなんて卑小な奴らと一緒にしないでくれ!」
〇〇は、昨年の文化祭を思い起こさせる猫コスプレ姿で半泣き状態だった。新井に提案した"何でも"叶えると言ったお願いが、まさかコレだとは思いもよらず。
「あの運命の日・・・仮装喫茶で僕は衝撃を受けたんだ!まさか神保さんが3次元の"ニャンもも"だったなんて!」
「ニ、ニャン、もも・・・?」
「〇〇ちゃん、多分キャラの名前」
どうも彼は、〇〇と接触出来る機会をうかがいながら、好きなアニメキャラクターのコスプレ用アイテムを常にロッカーに忍ばせていたらしい。もう一度あの姿を拝みたいが為に。
「そ、それがあの時のわたしと、そっくりだった・・・?」
「そうさ!見みてくれ僕のコレクションを!」
と意気揚々と新井が取り出したのは、トレーディングカードが収まった分厚いアルバム。主人公ニャンももをはじめ、様々な仲間もいるらしい。
「確かに、顔もまぁ似てるっちゃあ似てるか」
「そそ、そうですか!?」
「正しく!テレビから飛び出してきたのかと思ったよ!」
「お前声デケェな」
口数少ない姿からは想像出来ない程にテンションが高い。〇〇は、彼の秘めた一面を知ることが出来て喜ぶべきかと思う反面、見てはいけないモノを見たような心持ちだった。この気持ち、いつぞやどこかでも・・・
「で、自分の性癖の為に〇〇ちゃんに無理やりコスプレさせたって?お前学校でなんつーことしてんの?それもう犯罪よ?」
「失礼な!無理やりじゃない。ちゃんと彼女の了承を得たさ」
沖田の信じられないという表情を見て、〇〇はバツの悪さに思わず視線を逸らした。コレには深い訳が。
「だとしても、カレシは黙っちゃいねぇぞ?なぁ佐野。なんとか言ってやれ。むかっ腹立ってんだろ?」
先程から黙りの真一郎。気まずさから〇〇は声をかけられないどころか、目を合わせることすらままならなかった。
確実に怒っていた。〇〇としては、「姿を見るだけでいい」と言われ、勿論見えないところで着替えを済ませたし、文化祭で実体験済みということもあってやましい事をした自覚は無かっのだ。しかし、こういうことは個人の認識の程度によるもので、「異性相手に気を許しすぎではないのか」と言われても言い訳出来ないとは思った。色恋に関してはデリケートな真一郎のこと。現場を目にされたのは想定外のことだったが、不快にさせてしまったのなら、と〇〇は謝罪の言葉を述べようと口を開いた。
「真一郎先輩、あの・・・ごめんなさい、わたし」
「・・・いい」
「え?」
「かわいい・・・その耳触らせて」
「へ!?」
〇〇の返事もそこそこにキュッと(猫の)両耳をつまんだ真一郎は、恍惚とした表情でその触り心地を堪能している。
そうだった。彼はこのコスプレを妙に好いていたのだ―――恥ずかしさ倍増で〇〇も一緒になって顔を真っ赤にしながら俯いた。
「し、ししし真一郎先輩!も、もう、き、着替えたいから、そのっ」
「やだ。家帰るまでこのままがいい」
「ええ!?!?///」
「お、おい!ニャンももの耳に気安く触」
「あー、君君。知らないかなぁ?コイツ、全国一の族束ねてた元総長だから。下手すると病院送りになっちゃうかもよ♡」
「なんっ!!?」
新井が恐怖に慄く中、真一郎の気が済むまで〇〇はこの"変身"を解くことは許されなかったのだった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
真一郎「新井くん(キリッ)」
新井「っは、ハハハハイ!!?」
真一郎「他にはどんなコスチュームを持っているのかな?(キリリッ)」
〇〇「先輩何考えてるんですか!?///」
