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本編(完結)
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3.To be invited
4月があっという間に過ぎ去り、みんなが嬉しいゴールデンウイークも中盤に差し掛かった頃。
日に日に強くなってきた日差しの刺激を感じながら、〇〇はとある場所に向かって歩いていた。
「確かこの辺だったような。」
メモを確認しながら目的地を探す。
見覚えのある道を進んでいくと、数日前に見た立派な構えの住宅が目の前に現れた。
『佐野』という表札を確認し、〇〇は呼び鈴を鳴らした。
「いらっしゃい!歩いてきたから疲れたろ。」
ひとまず飲めよ。と真一郎がお茶を出した。
今日は、以前彼から「遊びに来いよ」と誘われていたとおり、〇〇は佐野家へお呼ばれしていた。
「ありがとうございます。先輩、これ皆さんでどうぞ。」
「お、わざわざ悪いな。」
〇〇は、神保組東京支部の事務所近くにある老舗和菓子店のどら焼きを用意してきた。お祖父さんがいると言っていたし、和菓子なら食べやすいかな。と柴田にお店をチョイスしてもらっていた。
「めちゃくちゃ高級そうだな。早く開けろよシンイチロー。」
「ウチも見たい!」
いつのまにか万次郎、そして妹のエマが傍に寄ってきていた。佐野家はすごく賑やかだ。
「ちょい待て待て。じいちゃんにオッケーもらってからな。」
え~っ。と幼い二人のブーイングが客間に響き渡った。
(とりあえずかわいい・・・)
「〇〇、妹に会うのは初めてだったよな。こいつがエマ。」
「はじめまして。エマちゃん。」
この間はお兄ちゃんにハンカチのことアドバイスしてくれてありがとう。と伝えると、少し照れた顔をしたエマが真一郎の後ろに隠れながら、どういたしまして。と控えめな声で言った。
(なんだこれ。天使?)
〇〇の胸キュンメーターの針は振り切れる寸前だった。
「やぁ、いらっしゃい。」
よく来なさった。と声をかけてきたのは、佐野道場の師範、佐野万作。佐野兄弟の祖父だ。
「はじめまして。神保〇〇と申します。」
真一郎さんにはいつもお世話になっています。と、〇〇は畳に両手をついて挨拶をした。
「そんなにかしこまらんでもいいよ。」
はっは、と笑った万作は、とても気さくな人だった。
「今日はこれから稽古があるから、よかったら後で道場に来るといい。」
「はい、是非!」
「先輩は、今日もサボるんですか?」
ゔ。と気まずそうな顔で真一郎が視線を横に流す。図星だ。
「真兄はいっつも稽古に来ないよ。」
徐々に〇〇に慣れてきたエマが代わりに答えた。
(ちょっとサボってるというレベルじゃねぇな。)
「稽古に出ると最後に掃除させられるのがなー。」
めんどくせぇんだよなー。と万次郎がぼやいた。
「掃除は大事だよ。」
武道とは、礼に始まり礼に終わるもの。神聖な場所を清める事はとても大切なことである。
しかし、何人で行うのか定かではないが、毎回広い道場を掃除するというのもなかなかの労力だろう。
そう思った〇〇は、それならば。と閃いた。
「よかったら、私もお手伝いして帰ろうか?」
え?という顔をした佐野兄弟が一斉に〇〇へ視線を向ける。
「マジ?ラッキー。」
「〇〇ちゃんもやろやろ~!」
「いや、客にそんなことさせらんねぇよ。」
お兄ちゃんだけは反対らしい。
「いいですよ。どうせ家帰ってもやることありませんもん。」
稽古を見学させていただくお礼です。〇〇がそう言うと、はぁ、と軽くため息をついた真一郎は、仕方ないな。と言って了承した。
空手の型など全く無知であるが、子どもたちの気合いはなかなかの迫力で、〇〇は見ているだけでも興奮した。
「みんなかっこいいですね~。」
「この中じゃあ、アイツがいちばん筋がいいんだ。」
そう言った真一郎が指さした先に、万次郎と歳の近そうな男の子がいた。
「へぇー。そういえば、万次郎はみんなの中に混ざらないんですか?」
「あぁ、あいつはいつもあぁだ。」
真一郎が顎をしゃくった先に、回し蹴りを華麗に披露する彼の姿があった。
「・・・あの、一人だけレベルが違うんですが。」
「じいちゃん曰く、天才らしいからな。」
(なるほど・・・もしかしなくても先輩よりも強いのではないか。)
〇〇は思わずにはいられなかった。
「・・・やっぱ、兄弟っていいですね。」
真一郎先輩たち兄弟は、私の憧れです。
突然、そう口にした〇〇を真一郎が見ると、少し寂しげに映る彼女の横顔がそこにあった。
あの日、兄弟がいて羨ましい、と言っていた時と同じ様子に真一郎は再び不安を覚える。一体彼女はその目に「何」を映しているのだろうか、と。
「〇〇はひとりっ子なんだっけ。」
「はい。・・・実は、私養子なんです。」
「え?」
「実の両親は事故死したらしくて、実父の親友だった父が私を引き取ったって聞きました。」
父は未婚で子どもがいなかったので。なんてことない様子で〇〇は自分の生い立ちを口にした。
まさかのカミングアウトにさすがの真一郎も驚いた。つまり、彼女と父親は血のつながりがないということ。
「父と、組のみんなが家族でした。あと、お兄ちゃんもいて。歳の近かったただの若手組員だったんですけど。面倒見のいい人で、よく一緒に遊んでくれました。・・・もう、亡くなってしまったんですけど。」
「・・・。」
「だから真一郎先輩と、万次郎とエマちゃん見てると、すごい懐かしい気持ちになります。」
それで、こんなに兄弟への憧れを強く持っていたのか。と真一郎はようやっと納得した。
「そっか。ありがとな。」
話してくれて。その言葉に、他人からしてみれば、デリケートな話を一方的にされれば困るものだろうに、むしろこちらが詫びの一言を入れるべきところではないのか。と、〇〇は疑問に思いながら真一郎に顔を向けた。
「俺、お前の話聞くの好きだからさ。」
「・・・え?」
「〇〇のこと知れて、すげぇ嬉しいよ。」
〇〇は、ここが夢なのか現実なのか分からなくなって目を見開いた。
何故なら、死んだはずの兄が目の前にいたから―――
「・・・透くん・・・?」
「・・・え?」
トオルくん?
彼女が突然発した人物の名らしきことを、真一郎が訊ねようとした時―――
「真一郎君!!」
突如、元気な声が真一郎を呼んだ。
どうやら稽古が終わり、みんなが片づけを始めるところのようだ。
真一郎目掛けて走って来るのは、先ほど筋がいいと言われていた少年だった。
真一郎がちらっと横を見ると、先ほどまでぼーっとした顔だった〇〇も、いつもの様子に戻っていた。
気のせい・・・か?
そう思うことにした真一郎は、近づいてきた少年に返事を返した。
「よぉ圭介。この間よりだいぶ安定してきたじゃねーか。」
圭介と呼ばれた彼は、とてもうれしそうにはにかんでいた。その様子を見ただけで、真一郎を慕っているのが分かる。どうやら二人は顔馴染みのようだ。
ふと、隣に見知らぬ人物がいることに気づいた彼が、〇〇を視界に捉えると、再び真一郎に向き直った。
「ねぇ、この人誰?」
もしかして彼女!?と少し興奮気味に聞いてきた彼に、真一郎は苦笑しながら「友達だ」と言った。
「はじめまして、友達の神保〇〇です。」
よろしく圭介くん。と〇〇が挨拶をすると、彼は少し照れ顔でどぎまぎしながら、よ、よろしく。と返した。
(ここにもかわいい天使がいた。)
とうとう〇〇の胸キュンメーターはMAXを振り切った。
「よぉし!それじゃあ当番は掃除はじめ!」
師範の声が響き、これから道場の掃除が始まるようだ。武道を習っているだけあって、みんなキビキビと動いていく。
「先生、見学させていただいたお礼に、わたしも掃除に参加したいんですが。」
「おぉ、それは助かる!おい真一郎、お前も手伝え!」
マジか。という顔をした彼を見て、〇〇は可笑しくなって声を出して笑った。
4月があっという間に過ぎ去り、みんなが嬉しいゴールデンウイークも中盤に差し掛かった頃。
日に日に強くなってきた日差しの刺激を感じながら、〇〇はとある場所に向かって歩いていた。
「確かこの辺だったような。」
メモを確認しながら目的地を探す。
見覚えのある道を進んでいくと、数日前に見た立派な構えの住宅が目の前に現れた。
『佐野』という表札を確認し、〇〇は呼び鈴を鳴らした。
「いらっしゃい!歩いてきたから疲れたろ。」
ひとまず飲めよ。と真一郎がお茶を出した。
今日は、以前彼から「遊びに来いよ」と誘われていたとおり、〇〇は佐野家へお呼ばれしていた。
「ありがとうございます。先輩、これ皆さんでどうぞ。」
「お、わざわざ悪いな。」
〇〇は、神保組東京支部の事務所近くにある老舗和菓子店のどら焼きを用意してきた。お祖父さんがいると言っていたし、和菓子なら食べやすいかな。と柴田にお店をチョイスしてもらっていた。
「めちゃくちゃ高級そうだな。早く開けろよシンイチロー。」
「ウチも見たい!」
いつのまにか万次郎、そして妹のエマが傍に寄ってきていた。佐野家はすごく賑やかだ。
「ちょい待て待て。じいちゃんにオッケーもらってからな。」
え~っ。と幼い二人のブーイングが客間に響き渡った。
(とりあえずかわいい・・・)
「〇〇、妹に会うのは初めてだったよな。こいつがエマ。」
「はじめまして。エマちゃん。」
この間はお兄ちゃんにハンカチのことアドバイスしてくれてありがとう。と伝えると、少し照れた顔をしたエマが真一郎の後ろに隠れながら、どういたしまして。と控えめな声で言った。
(なんだこれ。天使?)
〇〇の胸キュンメーターの針は振り切れる寸前だった。
「やぁ、いらっしゃい。」
よく来なさった。と声をかけてきたのは、佐野道場の師範、佐野万作。佐野兄弟の祖父だ。
「はじめまして。神保〇〇と申します。」
真一郎さんにはいつもお世話になっています。と、〇〇は畳に両手をついて挨拶をした。
「そんなにかしこまらんでもいいよ。」
はっは、と笑った万作は、とても気さくな人だった。
「今日はこれから稽古があるから、よかったら後で道場に来るといい。」
「はい、是非!」
「先輩は、今日もサボるんですか?」
ゔ。と気まずそうな顔で真一郎が視線を横に流す。図星だ。
「真兄はいっつも稽古に来ないよ。」
徐々に〇〇に慣れてきたエマが代わりに答えた。
(ちょっとサボってるというレベルじゃねぇな。)
「稽古に出ると最後に掃除させられるのがなー。」
めんどくせぇんだよなー。と万次郎がぼやいた。
「掃除は大事だよ。」
武道とは、礼に始まり礼に終わるもの。神聖な場所を清める事はとても大切なことである。
しかし、何人で行うのか定かではないが、毎回広い道場を掃除するというのもなかなかの労力だろう。
そう思った〇〇は、それならば。と閃いた。
「よかったら、私もお手伝いして帰ろうか?」
え?という顔をした佐野兄弟が一斉に〇〇へ視線を向ける。
「マジ?ラッキー。」
「〇〇ちゃんもやろやろ~!」
「いや、客にそんなことさせらんねぇよ。」
お兄ちゃんだけは反対らしい。
「いいですよ。どうせ家帰ってもやることありませんもん。」
稽古を見学させていただくお礼です。〇〇がそう言うと、はぁ、と軽くため息をついた真一郎は、仕方ないな。と言って了承した。
空手の型など全く無知であるが、子どもたちの気合いはなかなかの迫力で、〇〇は見ているだけでも興奮した。
「みんなかっこいいですね~。」
「この中じゃあ、アイツがいちばん筋がいいんだ。」
そう言った真一郎が指さした先に、万次郎と歳の近そうな男の子がいた。
「へぇー。そういえば、万次郎はみんなの中に混ざらないんですか?」
「あぁ、あいつはいつもあぁだ。」
真一郎が顎をしゃくった先に、回し蹴りを華麗に披露する彼の姿があった。
「・・・あの、一人だけレベルが違うんですが。」
「じいちゃん曰く、天才らしいからな。」
(なるほど・・・もしかしなくても先輩よりも強いのではないか。)
〇〇は思わずにはいられなかった。
「・・・やっぱ、兄弟っていいですね。」
真一郎先輩たち兄弟は、私の憧れです。
突然、そう口にした〇〇を真一郎が見ると、少し寂しげに映る彼女の横顔がそこにあった。
あの日、兄弟がいて羨ましい、と言っていた時と同じ様子に真一郎は再び不安を覚える。一体彼女はその目に「何」を映しているのだろうか、と。
「〇〇はひとりっ子なんだっけ。」
「はい。・・・実は、私養子なんです。」
「え?」
「実の両親は事故死したらしくて、実父の親友だった父が私を引き取ったって聞きました。」
父は未婚で子どもがいなかったので。なんてことない様子で〇〇は自分の生い立ちを口にした。
まさかのカミングアウトにさすがの真一郎も驚いた。つまり、彼女と父親は血のつながりがないということ。
「父と、組のみんなが家族でした。あと、お兄ちゃんもいて。歳の近かったただの若手組員だったんですけど。面倒見のいい人で、よく一緒に遊んでくれました。・・・もう、亡くなってしまったんですけど。」
「・・・。」
「だから真一郎先輩と、万次郎とエマちゃん見てると、すごい懐かしい気持ちになります。」
それで、こんなに兄弟への憧れを強く持っていたのか。と真一郎はようやっと納得した。
「そっか。ありがとな。」
話してくれて。その言葉に、他人からしてみれば、デリケートな話を一方的にされれば困るものだろうに、むしろこちらが詫びの一言を入れるべきところではないのか。と、〇〇は疑問に思いながら真一郎に顔を向けた。
「俺、お前の話聞くの好きだからさ。」
「・・・え?」
「〇〇のこと知れて、すげぇ嬉しいよ。」
〇〇は、ここが夢なのか現実なのか分からなくなって目を見開いた。
何故なら、死んだはずの兄が目の前にいたから―――
「・・・透くん・・・?」
「・・・え?」
トオルくん?
彼女が突然発した人物の名らしきことを、真一郎が訊ねようとした時―――
「真一郎君!!」
突如、元気な声が真一郎を呼んだ。
どうやら稽古が終わり、みんなが片づけを始めるところのようだ。
真一郎目掛けて走って来るのは、先ほど筋がいいと言われていた少年だった。
真一郎がちらっと横を見ると、先ほどまでぼーっとした顔だった〇〇も、いつもの様子に戻っていた。
気のせい・・・か?
そう思うことにした真一郎は、近づいてきた少年に返事を返した。
「よぉ圭介。この間よりだいぶ安定してきたじゃねーか。」
圭介と呼ばれた彼は、とてもうれしそうにはにかんでいた。その様子を見ただけで、真一郎を慕っているのが分かる。どうやら二人は顔馴染みのようだ。
ふと、隣に見知らぬ人物がいることに気づいた彼が、〇〇を視界に捉えると、再び真一郎に向き直った。
「ねぇ、この人誰?」
もしかして彼女!?と少し興奮気味に聞いてきた彼に、真一郎は苦笑しながら「友達だ」と言った。
「はじめまして、友達の神保〇〇です。」
よろしく圭介くん。と〇〇が挨拶をすると、彼は少し照れ顔でどぎまぎしながら、よ、よろしく。と返した。
(ここにもかわいい天使がいた。)
とうとう〇〇の胸キュンメーターはMAXを振り切った。
「よぉし!それじゃあ当番は掃除はじめ!」
師範の声が響き、これから道場の掃除が始まるようだ。武道を習っているだけあって、みんなキビキビと動いていく。
「先生、見学させていただいたお礼に、わたしも掃除に参加したいんですが。」
「おぉ、それは助かる!おい真一郎、お前も手伝え!」
マジか。という顔をした彼を見て、〇〇は可笑しくなって声を出して笑った。
