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番外編
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「橋のライトアップも綺麗ですね。」
人込みに揉まれるだけで疲れてしまいそうだ、と早々に退散した二人は、少し離れた海沿いのデッキからレインボーブリッジの夜景を楽しんでいた。人の熱気から解放され、徐々にクールダウンしてきたようだ。
「やっぱこっちの方がオシャレだよな。」
「わたしは、あの堤防の夜景も好きです。」
にこにこと上機嫌の〇〇の様子に、イルミネーションデートは大成功だったな、と真一郎がほっと胸を撫で下ろす。ここより更に人でごった返していたであろう"夢の国"なんぞ行っていたら、二人してぐったりしながら帰っていたかもしれない。
「先輩って、よく神社へ参拝しに行ってるんですか?」
少しまったりとした空気に、〇〇が気になっていたことを聞いてみた。真一郎は、普段から神道に熱心なのだろうか。
「あぁ。毎年クリスマスに行ってる。」
「へぇ。そうだったんですか。」
「ゴメンな。変なことに付き合わせて。」
「いえ!別にそんなつもりで聞いたんじゃないんですよ?」
「理由、聞かねぇの?」
神妙な面持ちで、まさかそんなことを訊ねられると思っていなかった。〇〇が驚いた表情で真一郎へ向き直る。流石に踏み込み過ぎただろうかと不安になった。
「そういうのって、他人に話すものでもないと思うし・・・真一郎先輩が聞いて欲しいって思っているなら、別ですけど。」
あんな真剣な表情で何を祈っていたのか。気にはならない、といえば嘘になる。そもそも、誰かに言ってどうにかなることならあんな場所へ赴かない。きっと、聞いたところで彼のために出来ることなどないのだろう。
「・・・そっか。」
「・・・きっと大丈夫ですよ。」
数秒間を開け〇〇が口を開いた。今度は、真一郎が驚き〇〇の顔を見つめる。彼女のその表情から言葉の真意を探るように。
「ちゃんと、上手くいくとわたしは思います。」
〇〇なりに彼の不安を取り除こうとした。何も分からない。ただ、彼がなにかに苦しんでいるとするなら、少しでも早く穏やかな時が訪れるようにと〇〇は願った。
「・・・そうだな。〇〇が言うなら、大丈夫だって気がする。」
真一郎が優しく微笑むと、少し困ったような笑顔が彼を見つめていた。
真一郎は、いつまで経っても変わらない自分の思考に嫌気が差していた。この話題をわざわざ広げるべきじゃなかった。いつも、一々彼女がどう思っているか気になり、どんな言葉をかけてくれるのかと聴きたくなる。期待する。自分の弱いところも醜いところも、さらけ出して全部受け止めて欲しいとさえ思う。そんなこと、怖くて出来る訳ないのだけれど。
「実はわたしも、クリスマスに毎年神社へ行ってました。わたしの本当の両親、今日が命日なんです。」
「え?」
「お墓が宮島ってところにあって、いつも墓参りを終えると父が対岸にある厳島の神社へ参拝に連れていってくれたんです。だけど、神様に手を合わせるの、本当はちょっと嫌でした。」
「嫌・・・?」
「神様がいるなら、どうして両親を救ってくれなかったのか。どうして透くんまでって、そんなことしか考えられなくなるから。父に、もうここへは来たくないって一度言ったことがあって。」
〇〇は、手すりに凭れ掛かりながらライトアップされたレインボーブリッジを見つめていた。その偶然を、どう受け止めるべきか真一郎は思い倦ねていた。彼女は、神という存在をどのように捉えているのだろう。その存在を否定する程の絶望感を抱えていたことなど容易に想像できる。むしろ、今でもそう考えているのだとしたら、今日あの場所へ連れて行ったのは苦痛でしかなかったのではないだろうか。未だ癒えない心に傷をつけてしまったかもしれない。そんな不安が過り、彼女が次に言葉を紡ぐまでの間が、真一郎には妙に長く感じられた。
「その時に言われました。「神様は、願いを叶えてくれないし、誰のことも守ってはくれない。欲しいものは自分で努力して手に入れなきゃならないし、大切なものは自分の力で守らなきゃいけない。」って。
だから、祈るんじゃなく自分がどうしたいかを「誓え」と。」
〇〇の瞳には、決意のこもった光が宿っていた。それがきっかけだったのだろうか。「ビビるくらいにお嬢は立ち直った」真一郎は、柴田が透の死後の彼女の様子をそう語っていたことを思い出した。自らの力で立ち上がれ。父親が、厳しくも諭し見えないところから愛情を注ぐ人物であるからこそ、それが一人で戦ってきた彼女の原動力になり得たのかもしれない。血の繋がりを超越する親子の絆に、真一郎は感動と尊敬の念を抱いていた。
「あ。ごめんないさい。わたしばっかりついしゃべり過ぎま」
〇〇の後頭部を抜ける夜風が止まった。息も止まった。後ろから伸びてきた真一郎の両腕が、首の下あたりに回されていた。後方から抱き締められているのだと理解すると、途端に〇〇の顔に熱が集まる。
「え!?///あ、あ、あの、こ、ここ外!人!」
「大丈夫。誰も見てねぇから。」
〇〇が顔を左右に向けると、ほぼ恋人たち。各々二人だけの世界を楽しんでいる様子に、見てるこっちが恥ずかしくなる。いやこれ自分たちも絶対見られているでしょうよ。真横はよくても後ろが隙だらけである。眉間にしわを寄せた〇〇が物申した。
「真一郎先輩。それはないと思」
「オレ、自分がやってることって本当に正しいのかなって、時々不安になるんだ。」
「・・・え?」
「でも、〇〇と一緒にいると、悩んでるより自分の信じたように、取りあえず突っ走ってみりゃいいよなって思える。」
真一郎は、いつだって自分の信念に自信を持ち、他人を導ける人間だと〇〇は思っていた。だけど、彼だって一人の普通の人間で、ただの17歳の男子なのだと思い直す。見えないところで、思い悩んで立ち止まることもあるだろう。
「わたし、先輩に何か示せるような大層な人間じゃないです。」
「んなわけあるか。両親の死を受け入れて、ヤクザの家族を受け入れて、兄貴のことも乗り越えて来たんだ。オレはおまえのことソンケーしてる。」
「な、なに、突然っ」
「オレ、〇〇に会えてよかった。」
耳元で響いた。その声は〇〇にしか聞こえないくらいの囁きだった。
彼は買い被り過ぎなのだ。自分は逃げてきた人間なのに。だけど、己の行いが彼の行く道の迷いを晴らすことが出来たのなら、それはとても嬉しくて、とても光栄なことだと〇〇は思った。
ぎゅっと真一郎が抱き締める力を強める。思わずその腕に手を添えた。彼は、出会った時からずっと力になってくれた。だから、必要とされるなら〇〇も彼の力になりたかった。
「「神を
神の存在は、はるか昔より多くの哲学者が理論的証明を試みてきた。だが、科学の発展とともに崇拝されるその存在を否定する者が現れ始める。彼の物理学者アインシュタインは「神という言葉は私にとって言葉以上のものではなく、人間の弱さの産物にすぎない」という言葉を残した。科学的信憑性を軽視する宗教は、現実を見えなくしてしまうのだと彼は語った。
しかし、アインシュタインは神の存在自体を否定しているわけではなかった。「神はサイコロを振らない」物理の世界に確率でしか分からないことなど無く、必ず決まった規則性がありどんなことにも法則があると説いた。彼は、"科学で生み出された自然"を"神"だと考えていたのかもしれない。〇〇は、その考えに共感していた。
「だから、こうありたいって思って信じて力を尽くせば、きっと"神様"が導いてくれる。」
自然の理の上に存在する自分たちのあり方は、己次第。
彼女なりの励ましなのだと悟った真一郎は、〇〇への想いが爆発寸前にまで昂った。デジャヴ。こんなことが、前にもあった。
「この間のつづき、今言いたい。」
「ん?つづき?」
突然の真一郎の発言に、いったいいつの話をしているのか、〇〇はとんと見当がつかなかった。思い出そうと記憶を辿る間も与えることなく、彼が少し余裕のない様子で必死に言葉のつづきを放つ。
「オレ!〇〇のこと好」
「っくしゅ!!」
「・・・」
「・・・スミマセン。」
真一郎が静かに項垂れた。まさか今度は本人に遮られるとは。まだか。まだなのか。
「あー・・・大分冷えてきたし、帰るか。」
「はい。・・・でも、」
何やら言い淀む〇〇の様子を、真一郎が不思議そうに見つめていると、
「わたし、結構あったかかったんですけどね・・・///」
無理やり押し込めた感情が疼きだす。真一郎が、行き場のない想いを紛らわせようと腕の力をさらに強めた。
「もぉぉぉぉぉぉぉおっ!」
「い!?い痛だだだだだ先輩!痛い!!」
二人の悲鳴に、周囲が何事だと視線を向ける。結局、半径5メートル圏内にいた全員にその姿を見られたのだが、〇〇がそのことに気づくのは、真一郎の熱い抱擁から解放される1分後のことだった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
カレシ「なんかあの子、すげぇ痛がってんな。」
カノジョ「あの人不良かな?暴力!?ねぇ、助けてあげてよ!」
カレシ「よ、よしてくれ!俺が殴られたらどーすんだよっ」
〇〇「・・・やっぱ見られてる気があだだだだ!!」
