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本編(完結)
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その場が一瞬、静寂に包まれる。
真一郎も、目を見開いてその光景を凝視していた。
「・・・今、何やった・・・?」
〇〇が倒してすかさず男の腕をひねると、ぐあぁぁあ!と痛みで悲鳴を上げた。
「これ以上続けるようならこの人の腕の関節外します。
あなた、倒れた衝撃で顎を打ちましたね。受け身とれていなかったので骨が砕けた可能性がある。早く病院に行った方がいいと思います。
なので、3年生の皆さん。この場は引いていただけませんか。」
〇〇は、こちらの緊張が悟られないようにと淡々とした口調で言葉を発した。
倒した男がリーダー格だったからか、思わぬ反撃に戦意を喪失したのか、〇〇の提案に素直に頷いた3人は、開けにくくなっていた扉を必死にぶち破り早々に退散していったのだった。
「先輩!!」
〇〇は3年生が去ったのを見届けると、真一郎のもとへ駆け出した。
彼は、顔面に痣をつくり口の端が切れていた。手元に手当のできる物がなかった〇〇は、とっさにポケットから出したハンカチで彼の口元の血をぬぐう。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、こんくらいいつものことだよ。それより、怪我ないか?」
(自分の方がボロボロなのに、人の心配って。)
〇〇は真一郎らしい気遣いに、少しだけ可笑しくなった。
「平気です。ちょっと力加減わかんなくなっちゃって、思いっきし倒しちゃったから軽く肩痛めちゃいましたけど。」
苦笑しつつ答えると、真一郎はやっとほっとしたような表情を見せ、それを見た〇〇も肩の力を抜いた。
「おまえ、あんな技どこで覚えたんだよ。めちゃくちゃかっこよかったぜ。」
いてて。真一郎は、お得意の笑顔を向けたかと思うと、傷が痛んだのか顔をしかめた。
あんま笑っちゃだめですって。と言いながら、〇〇はまさか「かっこよかった」なんて言われるとは思いもよらず、予想外の賞賛に照れ臭くなって俯いた。
「あれは・・・父から、護身術として習いました。万が一襲われたとき、女でも隙を作って逃げられるようにって。」
我流の合気道みたいな感じですかね。そう告げた〇〇の顔は、とても穏やかだった。
彼女は、そもそも家庭の事を隠し通すつもりでここへ来た。真一郎は、事情を知ってしまったとはいえ、言いづらいだろう家族のことを聞くのは憚られていた。
だから今、本人の口から父親の話が聞けたことはかなり嬉しかった。彼女との距離が縮まった気がしたから。
「いい親父さんなんだな。」
真一郎がそう言うと、軽く目を見開いた〇〇が、少し頬を赤らめたその顔で、はい。とはにかみ頷いた。
授業が終わり、自宅へ帰るため〇〇は下駄箱で靴を履き替えていた。
(・・・やっぱちょっと不安になってきたかも。)
こずえはテニス部へ所属しており、部活動の為教室で別れた。一人で帰るのだと思ったら、万が一あの人たちが仕返ししてきたりしたら?さすがに自分だけで3人いっぺんに相手できそうにない。
一度考えると、その不安は膨らんでいくばかりで、外へ続く扉の前で一時停止したまま中々前へ進めないでいた。
「〇〇。」
名を呼ばれ俯いた顔を上げると、目の前には真一郎がいた。
「真、一郎先輩?」
「家まで送ってくよ。」
一緒に帰ろうぜ。
どうしてこの人は、1週間放置してたくせに助けてほしい時には目の前に現れてくれるんだろう。
いつか読んだマンガの、ヒーローみたいだ、と〇〇は思った。
「昼間はごめんな。」
巻き込んじまって。と、真一郎は、不可抗力とはいえあの場に〇〇を呼び出したことを後悔していた。
「先輩のせいじゃないです。いろいろタイミングが悪かったし。」
扉が開かなくなったり予想外のトラブルに見舞われたが、最悪の事態を上手く回避できたのだから結果オーライだ、と〇〇は答えた。
「やっぱ〇〇は肝が据わってんな。俺がいなくてもいいくらい十分頼もしいわ。」
「それは違います。」
真一郎が彼女を称えるため何気なく告げた一言に、本人から予想外の反論を受けた。
「え?」
「一人じゃ何も満足にできません・・・敵意のある人を相手にするの、今日が初めてだったから、あの時ほんとはめちゃくちゃ体震えてて。さっきだって、一人で帰っててまた襲われそうになったらどうしようって怖くなって。」
自分はバカなのか、と真一郎は思った。
初めて会ったあの日、大泣きしていた〇〇を見ていたでないか。一見なんてことないフリをしているから分かりにくいが、彼女だって普通の女の子と何ら変わらない。怖くなかったわけないのだ。
我慢せず、こうやってまた自分に弱音を吐いてくれたことに、真一郎はほっとしていた。
「だから・・・
先輩が私のこと待っていてくれて、すごく嬉しかったです。」
最悪、こんなことに巻き込まれるんならもう近づかないてくれ、と言われることも覚悟していた。
だから、このどうしようもなく込み上げてくる嬉しさをどう表していいか分からず―――
真一郎は、気づいたら〇〇の頭を抱き寄せていた。
「・・・!!せ、せせせ先輩!?」
「・・・あーごめん。これはそのー・・・ありがとうの意だ。」
あいさつでやるハグのノリ。と言うことでごまかそうとした。
いや、これはごまかせているのか?真一郎は自分でも何を言っているのか分かっていなかった。衝動で女の子を抱き寄せるなんて、初めてのことでかなり動揺していた。
一方〇〇も、突然のことに驚き、フリーズして焦っていた。家族以外の男に抱き寄せられたことなどなく、心臓の鼓動が早すぎてそろそろぶっ壊れて止まりはしないかと心配になってきていた。
だが、そんな落ち着かない頭の中で、あの3年の男に腕をつかまれたときに感じた不快感を、真一郎に抱かないのはなんでだろうかと考えていた。彼は、先日泣きはらしたとき頭を撫でた時のように、とてもやさしく触れてくれていた。
ふと、〇〇は真一郎の胸のあたりに硬い物体があることに気づいた。何かが当たってかなり気になった。
「せ、先輩・・・あの・・・」
胸になんかゴツゴツしたものが・・・〇〇がやっとのことで口を開くと、はっとしたように真一郎が体を放した。
「わりぃ!そうだ忘れるところだった!」
慌てた様子の彼を〇〇が不思議そうに見ていると、胸ポケットから手のひら程のラッピングされた平たい箱を取り出した。
「この間借りたハンカチのお礼。」
そう言って〇〇に差し出した。
「え?」
「いや、あれから妹に洗って返すんだって言ったら、涙と鼻水だらけになったハンカチを女の子に返すなんてありえない!って言われてさぁ。」
確か、妹は11歳下だったか。小さいのにすごいしっかりした子なんだな。〇〇は真一郎の妹にかなりの高感を抱いた。
「だから、新しいの用意したんだ。」
気に入ってくれるといいんだけど。
わざわざ自分の為に選んで用意してくれたことに、〇〇はこれ以上ないくらいの感動を覚えた。誕生日以外に何かもらうのも初めてのことだった。
「開けてみても、いいですか?」
「うん。」
包みを開いてみると、中身が見えるように窓が開いていてセロハンが貼ってある箱が姿を見せた。
中に入っていたのは、大人っぽく品のあるデザインに、花柄がプリントされているハンカチーフのようだった。
「すごくおしゃれ。なんだろこれ。椿?」
「山茶花って花らしいよ。」
サザンカ。冬にさく花木だ。
〇〇は、ハンカチーフにしてはあまり見ない和風寄りのデザインに目を惹かれた。
「山茶花の花言葉、知ってる?」
突然、真一郎が訪ねてきた。〇〇はそういった類の話に詳しくなく、いいえと答えると彼が口を開いた。
「『困難に打ち克つ』」
〇〇は、「俺が守ってやるから、医者になる夢諦めるな」と言ってくれた時のことを思い出し、思わず泣きそうになった。
「ほんとはさ、昼休みに屋上で渡そうと思ってたんだよね。」
あいつらに邪魔されて渡しそびれてさ。そう言って苦笑いを浮かべた真一郎を見て、〇〇も笑い返した。そういうことだったのか、と。
「〇〇なら、絶対なれるよ、医者。」
この人に応援してもらったら、どこまでも進んでいける気がする。どんなに怖いことも、絶対大丈夫だって思える。
〇〇は、ヒーローがくれた勇気の花を、その手にしっかりと握りしめた。
---卍おまけ卍---
〇〇「先輩、家が空手道場なのになんでケンカ弱いんですか?」
真一郎「(ギクッ)」
〇〇「・・・もしかして、そっちもサボってるんですか?」
真一郎「(ギクギクッ)」
