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番外編
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Extra editio6.
God doesn't play dice
クリスマスといえば、毎年イエス・キリストの誕生日とその前日に、こぞって祝いの行事が催されるもの。だが、熱心にキリストの誕生日を祝う人間が、はたしてこの日本にどれ程いるだろうか。皆が必ずしも信仰心を持っている訳では無く、最早ただのイベントと化しているこの行事。気になるあの子に告ろうかとか、イブの夜は恋人とデートの約束をしただとか、浮かれるヤツらのなんと多いことか。全員、凍った路面に足を滑らせて頭かち割ってしまえ。告白連敗記録を順調に更新してきた彼は、毎年のようにそんな恨みつらみを抱いてきたのである。
「しかーし!今年のオレは違う!!」
こんな時期にわざわざやらなくても。いつもの広場に招集された黒龍の面々は、凍える身体を震わせ体温を保つのに必死になっていた。勿論、総長命令とあれば断れる者などここにはいない。
この厳しい寒さから、最近はすっかり喧嘩も少ない。招集をかけるような事があっただろうか。というか、今年は違うって何のコト?そんな疑問を抱きながら目の前に立つ我らが総長に視線を向けると、彼が口にした議題は予想だにしないものだった。
「〇〇とのクリスマスデート、どこ行ったらいいと思う!?」
どーん。効果音が聞こえてきそうな出で立ちとその言いっぷりに、全員が呆気に取られていた。彼の斜め後ろに控えていた明司が、だから言わんこっちゃねぇ、と額に手を当てため息をこぼす。
「なぁなぁなぁ、最近はどこに行くのが流行ってんの?やっぱディズニーランド?」
無邪気。喧嘩の時の堂々とした負けん気と鋭い眼光を見せる彼からは想像出来ないその姿。だがそれも、佐野真一郎という男が愛される所以である。こうして下の者達を頼るところもまた然り。頼るところが若干ズレているのはご愛嬌。
「んー。〇〇ちゃんって、ディズニー行ってはしゃぐ感じじゃねーよな?」
「どっちかってーと、ゆったり見て回れるよーな、水族館とか?」
「なら大道のイルミネーションデートがいいんじゃね?」
「「「あ~~~。」」」
ほぼ全員の意見が一致する。あっさりと。
真一郎よりよっぽど分かっているんじゃないか?と明司が本人を前にうっかり口からこぼれそうになるのを咄嗟に押さえる。
「えー?初めてのクリスマスデートに地味すぎねぇ?」
「総長、デート初心者にディズニーはキツイっすよ。」
「オイ。初心者言うな。」
「〇〇ちゃんは、風情のあるものをじっくり見て楽しむタイプだと思いますよ。」
確かに、あの地味な工業施設がひしめく堤防の夜景でさえ綺麗だとかなり気に入っていた。キラキラしたものが好きなのは間違いない。ライトアップされた景色を見た時の〇〇の顔を想像した真一郎が、ニヤけそうになるのをなんとか堪える。
「よし、採用。イルミネーションってどこがいちばん派手にやってんだ?」
「やっぱ、お台場のバカデカいツリーじゃねぇっスか?確か、クリスマスにはド派手にライトアップしてますよ。」
お台場にあるシーサイドデッキには、高さ約20m、幅10mの生木を使用したツリーが設置されている。シーズンになると、何万個という電飾で飾られたクリスマスツリーがお披露目されていた。都内最大級と言われ、ここ近年注目されているイルミネーションスポットである。
「おお!イイじゃねぇか!」
「レインボーブリッジと東京タワーも一望できるんで、見応えありますよ。」
やはり持つべきものは仲間だなぁ。無事に行き先が決まってご機嫌な真一郎が、元気よくお礼と解散を告げる。え、それだけ?全員がそう言いたげな表情になったのを、呆れ顔で見渡した明司が再び大きなため息をついたのだった。
「お台場、ですか?」
12月25日。〇〇は、真一郎と道玄坂のスターバックスコーヒーに来ていた。今年の7月にオープンした店舗で、銀座まで行かずともコーヒーが楽しめるとあってすっかり彼女の行きつけになっていた。本当は数日前、〇〇の誕生日に二人で来ようと約束していたのだが、前日に〇〇がスパークリングワインを飲んで二日酔いになってしまった為、日を改めた。この日に訪れたのは、もちろん彼の計らいである。
二人の手元には、クリスマスシーズンにのみ提供されるブレンド豆を使用したコーヒーが、香ばしい香りと共に湯気を立てていた。
「そ。イルミネーションのイベントしてるんだって。行ってみようぜ。」
「へぇ。お台場行ったことないので、見てみたいです。」
「ただ、その前に一箇所付き合って欲しいところがあんだよ。」
付き合って欲しいところ?目的地の見当がまるでつかない〇〇が、コーヒーを冷ましながら首を傾げていた。
「神社?」
真一郎が向かった先は、大きな神社だった。
聞けば、渋谷区とその周辺に住まう人々の多くは、ここへ初詣や七五三などのお参りをしに訪れるのだという。真一郎が鳥居前で一礼するのに倣い、〇〇もそれに続く。その丁寧な作法が彼の人となりを表しているようで、また新たな一面につい顔がほころぶ。
しかし、〇〇は不思議に思った。どうしてわざわざ今日なのだろう。キリスト教の行事の日に神道という異なる宗教の場へ赴くとは、なんとも奇妙。
手水舎で身を清め、拝殿へと向かう。いつもなら、移動しながらたわいもない話をしてくる真一郎が、歩みを進めた途端静かになった。その姿が妙に緊張を誘う。何か並々ならぬ願い事でもあるのだろうか。
二人並んで賽銭を投げ入れ鐘を鳴らすと、二拝二拍手一拝で拝礼をする。〇〇が礼を済ました一歩後に、真一郎が合わせていた手を離した。彼の真剣な横顔にうっかり見惚れそうになった〇〇が、慌てて視線を逸らしていた。
あっという間に日が沈み、昼間よりも更に人手が増え始める。お台場に到着した頃には、既にイルミネーションが点灯され、多くの人で賑わいを見せていた。
「わぁ、大きい~!」
まさに圧巻。こんな大木、どうやって運んだのだろうか。そんなことを考えながら二人で人込みをかき分け、更に近くへと向かっていく。
「すごいなこりゃ。」
「人だらけですねぇ・・・」
普段、遠慮がちに彼の隣を歩く〇〇も、流石にはぐれてしまわないようにと一生懸命追いかけていた。その必死な姿を、横目でチラチラ見ていた真一郎。小型の犬か猫にでも追いかけられているみたいで、呑気にもかわいいなコノヤローなどと思っていたその時、〇〇が真一郎に向かって手を伸ばす。
ぎゅ。
「!」
「っ、ま、待って・・・」
思わず彼のジャケットの袖を掴んだ。寒さからか、それとも気恥ずかしさからか、〇〇の頬が心なしか暖かい色を見せた。その一連の動作に、真一郎はぎゅん、と心臓が鷲掴みにされたかのように縮んだ気がした。少しの息苦しさの後、どっどっと反動のように活発に動き出す。
ふと彼は思った。〇〇とは、お互い抵抗なく身体を寄せ合うことができる関係であるものの、手を繋いだことは無い。これは由々しき事態なのではないか。むしろ、なぜ今まで気が付かなかったのだ。もしや、その大事なステップをすっ飛ばしたが為に、二人の関係が未だ滞っているとでもいうのか。周りを見渡せばカップルの大行進。ここは、またひとつ彼女との距離を近づけるチャンス到来である。
一度立ち止まる。突然歩みを止めたのを不思議そうに見つめる〇〇の手を、真一郎が自身の袖から解いた。
「あっ」
やはり邪魔くさかっただろうか。もしかしたら、服を掴まれるのが苦手だったのかもしれない。〇〇が、申し訳ないと詫びの一言を口にしようとしたその時、解かれた左手に真一郎の右手が触れた。最初は柔く、徐々にしっかりと握られる。
「こうすれば、はぐれないだろ?」
今度ははっきりと分かった。〇〇の頬が益々染まっていく様子に、真一郎は微笑を浮かべる。悪戯心で更に握る力を込めると、ひぇっと悲鳴のようなものが微かに聞こえた。
「もしかして照れてんの?」
「て!?てててて照れてない!///」
あからさまに動揺している様子に、真一郎が耐え切れず噴き出した。揶揄われているのが分かった〇〇が、顔を真っ赤にしながら睨みつけてきていたが、痛くもかゆくもない。真一郎は、そのまま上手い事隙間をすり抜け〇〇を引っ張っていく。徐々に近づく巨大ツリー。先ほどのやり取りなど忘れてしまうほど、目の前の輝きに〇〇もすっかり魅了されていた。
God doesn't play dice
クリスマスといえば、毎年イエス・キリストの誕生日とその前日に、こぞって祝いの行事が催されるもの。だが、熱心にキリストの誕生日を祝う人間が、はたしてこの日本にどれ程いるだろうか。皆が必ずしも信仰心を持っている訳では無く、最早ただのイベントと化しているこの行事。気になるあの子に告ろうかとか、イブの夜は恋人とデートの約束をしただとか、浮かれるヤツらのなんと多いことか。全員、凍った路面に足を滑らせて頭かち割ってしまえ。告白連敗記録を順調に更新してきた彼は、毎年のようにそんな恨みつらみを抱いてきたのである。
「しかーし!今年のオレは違う!!」
こんな時期にわざわざやらなくても。いつもの広場に招集された黒龍の面々は、凍える身体を震わせ体温を保つのに必死になっていた。勿論、総長命令とあれば断れる者などここにはいない。
この厳しい寒さから、最近はすっかり喧嘩も少ない。招集をかけるような事があっただろうか。というか、今年は違うって何のコト?そんな疑問を抱きながら目の前に立つ我らが総長に視線を向けると、彼が口にした議題は予想だにしないものだった。
「〇〇とのクリスマスデート、どこ行ったらいいと思う!?」
どーん。効果音が聞こえてきそうな出で立ちとその言いっぷりに、全員が呆気に取られていた。彼の斜め後ろに控えていた明司が、だから言わんこっちゃねぇ、と額に手を当てため息をこぼす。
「なぁなぁなぁ、最近はどこに行くのが流行ってんの?やっぱディズニーランド?」
無邪気。喧嘩の時の堂々とした負けん気と鋭い眼光を見せる彼からは想像出来ないその姿。だがそれも、佐野真一郎という男が愛される所以である。こうして下の者達を頼るところもまた然り。頼るところが若干ズレているのはご愛嬌。
「んー。〇〇ちゃんって、ディズニー行ってはしゃぐ感じじゃねーよな?」
「どっちかってーと、ゆったり見て回れるよーな、水族館とか?」
「なら大道のイルミネーションデートがいいんじゃね?」
「「「あ~~~。」」」
ほぼ全員の意見が一致する。あっさりと。
真一郎よりよっぽど分かっているんじゃないか?と明司が本人を前にうっかり口からこぼれそうになるのを咄嗟に押さえる。
「えー?初めてのクリスマスデートに地味すぎねぇ?」
「総長、デート初心者にディズニーはキツイっすよ。」
「オイ。初心者言うな。」
「〇〇ちゃんは、風情のあるものをじっくり見て楽しむタイプだと思いますよ。」
確かに、あの地味な工業施設がひしめく堤防の夜景でさえ綺麗だとかなり気に入っていた。キラキラしたものが好きなのは間違いない。ライトアップされた景色を見た時の〇〇の顔を想像した真一郎が、ニヤけそうになるのをなんとか堪える。
「よし、採用。イルミネーションってどこがいちばん派手にやってんだ?」
「やっぱ、お台場のバカデカいツリーじゃねぇっスか?確か、クリスマスにはド派手にライトアップしてますよ。」
お台場にあるシーサイドデッキには、高さ約20m、幅10mの生木を使用したツリーが設置されている。シーズンになると、何万個という電飾で飾られたクリスマスツリーがお披露目されていた。都内最大級と言われ、ここ近年注目されているイルミネーションスポットである。
「おお!イイじゃねぇか!」
「レインボーブリッジと東京タワーも一望できるんで、見応えありますよ。」
やはり持つべきものは仲間だなぁ。無事に行き先が決まってご機嫌な真一郎が、元気よくお礼と解散を告げる。え、それだけ?全員がそう言いたげな表情になったのを、呆れ顔で見渡した明司が再び大きなため息をついたのだった。
「お台場、ですか?」
12月25日。〇〇は、真一郎と道玄坂のスターバックスコーヒーに来ていた。今年の7月にオープンした店舗で、銀座まで行かずともコーヒーが楽しめるとあってすっかり彼女の行きつけになっていた。本当は数日前、〇〇の誕生日に二人で来ようと約束していたのだが、前日に〇〇がスパークリングワインを飲んで二日酔いになってしまった為、日を改めた。この日に訪れたのは、もちろん彼の計らいである。
二人の手元には、クリスマスシーズンにのみ提供されるブレンド豆を使用したコーヒーが、香ばしい香りと共に湯気を立てていた。
「そ。イルミネーションのイベントしてるんだって。行ってみようぜ。」
「へぇ。お台場行ったことないので、見てみたいです。」
「ただ、その前に一箇所付き合って欲しいところがあんだよ。」
付き合って欲しいところ?目的地の見当がまるでつかない〇〇が、コーヒーを冷ましながら首を傾げていた。
「神社?」
真一郎が向かった先は、大きな神社だった。
聞けば、渋谷区とその周辺に住まう人々の多くは、ここへ初詣や七五三などのお参りをしに訪れるのだという。真一郎が鳥居前で一礼するのに倣い、〇〇もそれに続く。その丁寧な作法が彼の人となりを表しているようで、また新たな一面につい顔がほころぶ。
しかし、〇〇は不思議に思った。どうしてわざわざ今日なのだろう。キリスト教の行事の日に神道という異なる宗教の場へ赴くとは、なんとも奇妙。
手水舎で身を清め、拝殿へと向かう。いつもなら、移動しながらたわいもない話をしてくる真一郎が、歩みを進めた途端静かになった。その姿が妙に緊張を誘う。何か並々ならぬ願い事でもあるのだろうか。
二人並んで賽銭を投げ入れ鐘を鳴らすと、二拝二拍手一拝で拝礼をする。〇〇が礼を済ました一歩後に、真一郎が合わせていた手を離した。彼の真剣な横顔にうっかり見惚れそうになった〇〇が、慌てて視線を逸らしていた。
あっという間に日が沈み、昼間よりも更に人手が増え始める。お台場に到着した頃には、既にイルミネーションが点灯され、多くの人で賑わいを見せていた。
「わぁ、大きい~!」
まさに圧巻。こんな大木、どうやって運んだのだろうか。そんなことを考えながら二人で人込みをかき分け、更に近くへと向かっていく。
「すごいなこりゃ。」
「人だらけですねぇ・・・」
普段、遠慮がちに彼の隣を歩く〇〇も、流石にはぐれてしまわないようにと一生懸命追いかけていた。その必死な姿を、横目でチラチラ見ていた真一郎。小型の犬か猫にでも追いかけられているみたいで、呑気にもかわいいなコノヤローなどと思っていたその時、〇〇が真一郎に向かって手を伸ばす。
ぎゅ。
「!」
「っ、ま、待って・・・」
思わず彼のジャケットの袖を掴んだ。寒さからか、それとも気恥ずかしさからか、〇〇の頬が心なしか暖かい色を見せた。その一連の動作に、真一郎はぎゅん、と心臓が鷲掴みにされたかのように縮んだ気がした。少しの息苦しさの後、どっどっと反動のように活発に動き出す。
ふと彼は思った。〇〇とは、お互い抵抗なく身体を寄せ合うことができる関係であるものの、手を繋いだことは無い。これは由々しき事態なのではないか。むしろ、なぜ今まで気が付かなかったのだ。もしや、その大事なステップをすっ飛ばしたが為に、二人の関係が未だ滞っているとでもいうのか。周りを見渡せばカップルの大行進。ここは、またひとつ彼女との距離を近づけるチャンス到来である。
一度立ち止まる。突然歩みを止めたのを不思議そうに見つめる〇〇の手を、真一郎が自身の袖から解いた。
「あっ」
やはり邪魔くさかっただろうか。もしかしたら、服を掴まれるのが苦手だったのかもしれない。〇〇が、申し訳ないと詫びの一言を口にしようとしたその時、解かれた左手に真一郎の右手が触れた。最初は柔く、徐々にしっかりと握られる。
「こうすれば、はぐれないだろ?」
今度ははっきりと分かった。〇〇の頬が益々染まっていく様子に、真一郎は微笑を浮かべる。悪戯心で更に握る力を込めると、ひぇっと悲鳴のようなものが微かに聞こえた。
「もしかして照れてんの?」
「て!?てててて照れてない!///」
あからさまに動揺している様子に、真一郎が耐え切れず噴き出した。揶揄われているのが分かった〇〇が、顔を真っ赤にしながら睨みつけてきていたが、痛くもかゆくもない。真一郎は、そのまま上手い事隙間をすり抜け〇〇を引っ張っていく。徐々に近づく巨大ツリー。先ほどのやり取りなど忘れてしまうほど、目の前の輝きに〇〇もすっかり魅了されていた。
