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本編(完結)
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13.A promise
「次、〇〇ちゃんで最後だって。」
3学期に入りひと月ほど経ったある日の放課後、特進コース進級希望者の面談が行われていた。3学期期末試験を控え、成績指導と最後の意思確認を取るためのもの。ということらしい。こずえに次の番を告げられた〇〇は念の為と思い、メモ帳とシャープペンシルを一本ポケットに突っ込んでいた。
「なんかさ、先に終わった男子に聞いたんだけど、私たちよりも時間短かったらしいんだよね。」
「え?なんで?」
「さー。米山君は5分でサクッと終わったって。まぁ他の人がどうだったかわかんないけどさ。私、15分くらい話しされたんだけど、三木さんなんて20分だったって。」
「ええええ?」
「勉強の効率を上げるためには。みたいなウンチクはまぁいいとして、勉強時間以外は家で何してて趣味はあるのか、とか進級とは全く関係ない話もされてさ。」
「うーん。自分が担任になるかもしれない生徒と、交流深めたい・・・とか?」
「じゃあなんで全員にそういう話がないの?あのインテリ教師、なーんかいやらしいよね。」
話長くなりそうだったら無理やり終わらせておいでよ。と忠告を受けた〇〇は、少し不安を抱きつつ立ち上がると、特進コース担任の待つ進路指導室へと向かった。
「相変わらず文句のつけようがない成績だ。学期末試験も問題なければ、トップで進級できるよ。この調子でいくと良い。」
面談を担当している教師の矢野は、特進コースの専属担任として今年度赴任されたばかりだという。他県の私立進学校からやってきたらしい。とこずえから聞いていた。
「はい。」
「ところで、あの不良の生徒とは未だに仲良くしているようだが、どうしてなのかな?」
来た。絶対言われるだろうと思っていた〇〇は、毅然とした態度で構えていた。以前、真一郎とは距離を取れと言ってきたのが、目の前に座るこの教師だった。彼は、容姿端麗、高身長でスラっとした体形、眼鏡をかけている姿が知的な印象、授業も面白く分かりやすい。と校内の女子生徒から密かな人気を集めていた。だが、その内に隠す他人を蔑む人間性が、〇〇は好きになれなかった。
「前にお答えした通りです。進級と佐野先輩のことは、関係ないので。」
「君の勉学の邪魔になるだけだと思うけどね。授業はサボるわ、試験は毎回追試対象、低レベルな連中とつるんで喧嘩ばかりしているそうじゃないか。」
「・・・確かに、彼は不真面目な生徒かもしれません。でも、勉強の邪魔をされたり嫌々連れ回されたりしたことなんてありませんし、成績だって、ちゃんと維持しているじゃないですか。だからもう」
「神保、君はまるで分っていない。」
突然、逸らしていた視線を正面に向けられる。〇〇は、矢野に無理やり顎を掴まれていた。その瞬間、嫌でも視界に入ってきた彼の顔から、先程までの穏やかな笑みが消えていて、思わず〇〇の血の気が引いていく。
「君の将来の為にも、付き合う人間は選んだ方がいい――男は特に。」
ガタッ!とその手を振り払うように〇〇が立ち上がった。この人、やはり何かおかしい。これ以上ここに居てはいけない。
「もう、進級の話が終わったなら帰ります。」
その場を切り上げる一言を告げ、〇〇は足早に出口へ向かった。座る矢野の横をすり抜けドアに手をかけたところで、彼の何処か挑戦的な口調が響いた。
「神保。君自身の立場を危うくしないためにも、教師の言うことには素直に従った方がいい。」
その意味深な言葉を打ち消すように、〇〇は部屋を出ると勢いよくドアを閉めた。
「はぁ・・・っ」
言いようのない恐怖心から早く解放されたくて、〇〇は階段を駆け上がっていた。1年の教室がある階にたどり着くと、一度呼吸を整えるために立ち止まる。ざわざわと嫌なものがまとわりついて離れない。
「立場ってなに・・・意味わかんない・・・」
「〇〇~」
渋い顔をした〇〇が、突然名前を呼ばれハっとした。振り向くと、真一郎が階段を下りてくるところだった。その姿を捉えた瞬間、〇〇がようやく安堵の表情を見せる。緊張で強張っていた力がやっと抜けていった。
「沖田の下らねー話聞いてたら遅くなってさ。面談終わってる頃かなーって思っておまえの教室まで行」
どん。真一郎は、突然身体に走った衝撃に何事かと驚いた。ふわっと甘い香りが鼻を抜ける。ふと視線を胸元に下げると、そこに〇〇の頭があって更に驚いた。
「え。お、い、ちょ、〇〇!?/// こ、こここココガッコーなん」
だけど。と言い終わる前に、真一郎がハっと息を呑んだ。〇〇の様子がおかしいことに気づき、咄嗟に鞄を持っていない方の手を彼女の背に回した。
「おい、〇〇。なにがあった?」
胸元に添えられた手が、震えながら学ランを握りしめていた。
「わたし、あの先生怖い・・・」
少し寒いが人の出入りが少ない中庭に出てくると、〇〇が先程あった出来事を真一郎に話していた。
優秀な生徒が、問題児と連れ立っているのを良く思わない気持ちも分からなくはない。だが、それにしても指導の行き過ぎだろうと、流石の真一郎も憤慨していた。まるで脅しではないか。
「それ、他の先生に相談した方がいいんじゃねーのか。」
「でも、あの人愛想がいいから、他の先生たちとか生徒から結構人気らしくて、わたし一人が訴えて信じてもらえるかどうか・・・証拠があるわけじゃないし。」
君のことを心配してくれているだけだろう。そんな言葉で片付けられるのは目に見えている。変に騒げば、それこそ違う指導を受ける可能性も。
「進級の希望、取り下げようかな・・・」
このまま無事に特進へ上がれたとして、あの教師の元で学ばなければならないのか、と思うと今から気が滅入る。それなら、今から切り替えて違う道を選択する方が賢明かもしれない、と〇〇は考えた。
「〇〇。大学行くにはやっぱ特進じゃないとダメか?」
「え?えっと、まぁ。合格するための専門的な指導とか受けられるみたいなので、受験には有利になるのかな、とは思いますけど。行かなくても自分だけで勉強できなくはない、です。」
現役合格を目指せるか、と言われると流石の〇〇も自信はないが。
「じゃあ、進級希望はそのままにしとけ。」
まさかの真一郎の言葉に、〇〇は軽く絶望した。今まで経験したことのない恐怖を感じたのだ。そんな教師がいるクラスなんか行かなくていい。本当はそう言って欲しかったのに。
「で、でもわたし・・・」
「オレが絶対守ってやるから。」
「!」
「またしつこいようだったらオレに言え。面談とか言って呼び出されても、絶対近くに居て待っててやる。〇〇の声が聞こえるとこに居りゃあ、変なことされそうになってもすぐぶっ飛ばしに行けるしな。」
「先輩・・・」
「そんなおかしな教師に振り回されて、医者になるの邪魔されるなんて下んねーだろ。証拠掴んで、ソイツ引きずり降ろしてやろーぜ。」
安心しろ、と優しい笑顔が言う。大丈夫。真一郎が傍にいてくれる。先程まで不安で仕方なかったのが、一瞬にして安心感に包まれた。つい泣きそうになってしまった〇〇が、思わず真一郎の首に手を回して勢いよく抱き着いていた。
「先輩!ありがとう!」
「え、y、ちょ、t、〇〇!?だ、だからこここココガッコーなんですけどぉ!?///」
そのゼロ距離に、屋外の寒さも気にならなくなった今の二人には、当然お互いの存在しか見えていない。校舎の窓から静かにその様子を覗っていた男のことなど、気づくはずもなかった。
「次、〇〇ちゃんで最後だって。」
3学期に入りひと月ほど経ったある日の放課後、特進コース進級希望者の面談が行われていた。3学期期末試験を控え、成績指導と最後の意思確認を取るためのもの。ということらしい。こずえに次の番を告げられた〇〇は念の為と思い、メモ帳とシャープペンシルを一本ポケットに突っ込んでいた。
「なんかさ、先に終わった男子に聞いたんだけど、私たちよりも時間短かったらしいんだよね。」
「え?なんで?」
「さー。米山君は5分でサクッと終わったって。まぁ他の人がどうだったかわかんないけどさ。私、15分くらい話しされたんだけど、三木さんなんて20分だったって。」
「ええええ?」
「勉強の効率を上げるためには。みたいなウンチクはまぁいいとして、勉強時間以外は家で何してて趣味はあるのか、とか進級とは全く関係ない話もされてさ。」
「うーん。自分が担任になるかもしれない生徒と、交流深めたい・・・とか?」
「じゃあなんで全員にそういう話がないの?あのインテリ教師、なーんかいやらしいよね。」
話長くなりそうだったら無理やり終わらせておいでよ。と忠告を受けた〇〇は、少し不安を抱きつつ立ち上がると、特進コース担任の待つ進路指導室へと向かった。
「相変わらず文句のつけようがない成績だ。学期末試験も問題なければ、トップで進級できるよ。この調子でいくと良い。」
面談を担当している教師の矢野は、特進コースの専属担任として今年度赴任されたばかりだという。他県の私立進学校からやってきたらしい。とこずえから聞いていた。
「はい。」
「ところで、あの不良の生徒とは未だに仲良くしているようだが、どうしてなのかな?」
来た。絶対言われるだろうと思っていた〇〇は、毅然とした態度で構えていた。以前、真一郎とは距離を取れと言ってきたのが、目の前に座るこの教師だった。彼は、容姿端麗、高身長でスラっとした体形、眼鏡をかけている姿が知的な印象、授業も面白く分かりやすい。と校内の女子生徒から密かな人気を集めていた。だが、その内に隠す他人を蔑む人間性が、〇〇は好きになれなかった。
「前にお答えした通りです。進級と佐野先輩のことは、関係ないので。」
「君の勉学の邪魔になるだけだと思うけどね。授業はサボるわ、試験は毎回追試対象、低レベルな連中とつるんで喧嘩ばかりしているそうじゃないか。」
「・・・確かに、彼は不真面目な生徒かもしれません。でも、勉強の邪魔をされたり嫌々連れ回されたりしたことなんてありませんし、成績だって、ちゃんと維持しているじゃないですか。だからもう」
「神保、君はまるで分っていない。」
突然、逸らしていた視線を正面に向けられる。〇〇は、矢野に無理やり顎を掴まれていた。その瞬間、嫌でも視界に入ってきた彼の顔から、先程までの穏やかな笑みが消えていて、思わず〇〇の血の気が引いていく。
「君の将来の為にも、付き合う人間は選んだ方がいい――男は特に。」
ガタッ!とその手を振り払うように〇〇が立ち上がった。この人、やはり何かおかしい。これ以上ここに居てはいけない。
「もう、進級の話が終わったなら帰ります。」
その場を切り上げる一言を告げ、〇〇は足早に出口へ向かった。座る矢野の横をすり抜けドアに手をかけたところで、彼の何処か挑戦的な口調が響いた。
「神保。君自身の立場を危うくしないためにも、教師の言うことには素直に従った方がいい。」
その意味深な言葉を打ち消すように、〇〇は部屋を出ると勢いよくドアを閉めた。
「はぁ・・・っ」
言いようのない恐怖心から早く解放されたくて、〇〇は階段を駆け上がっていた。1年の教室がある階にたどり着くと、一度呼吸を整えるために立ち止まる。ざわざわと嫌なものがまとわりついて離れない。
「立場ってなに・・・意味わかんない・・・」
「〇〇~」
渋い顔をした〇〇が、突然名前を呼ばれハっとした。振り向くと、真一郎が階段を下りてくるところだった。その姿を捉えた瞬間、〇〇がようやく安堵の表情を見せる。緊張で強張っていた力がやっと抜けていった。
「沖田の下らねー話聞いてたら遅くなってさ。面談終わってる頃かなーって思っておまえの教室まで行」
どん。真一郎は、突然身体に走った衝撃に何事かと驚いた。ふわっと甘い香りが鼻を抜ける。ふと視線を胸元に下げると、そこに〇〇の頭があって更に驚いた。
「え。お、い、ちょ、〇〇!?/// こ、こここココガッコーなん」
だけど。と言い終わる前に、真一郎がハっと息を呑んだ。〇〇の様子がおかしいことに気づき、咄嗟に鞄を持っていない方の手を彼女の背に回した。
「おい、〇〇。なにがあった?」
胸元に添えられた手が、震えながら学ランを握りしめていた。
「わたし、あの先生怖い・・・」
少し寒いが人の出入りが少ない中庭に出てくると、〇〇が先程あった出来事を真一郎に話していた。
優秀な生徒が、問題児と連れ立っているのを良く思わない気持ちも分からなくはない。だが、それにしても指導の行き過ぎだろうと、流石の真一郎も憤慨していた。まるで脅しではないか。
「それ、他の先生に相談した方がいいんじゃねーのか。」
「でも、あの人愛想がいいから、他の先生たちとか生徒から結構人気らしくて、わたし一人が訴えて信じてもらえるかどうか・・・証拠があるわけじゃないし。」
君のことを心配してくれているだけだろう。そんな言葉で片付けられるのは目に見えている。変に騒げば、それこそ違う指導を受ける可能性も。
「進級の希望、取り下げようかな・・・」
このまま無事に特進へ上がれたとして、あの教師の元で学ばなければならないのか、と思うと今から気が滅入る。それなら、今から切り替えて違う道を選択する方が賢明かもしれない、と〇〇は考えた。
「〇〇。大学行くにはやっぱ特進じゃないとダメか?」
「え?えっと、まぁ。合格するための専門的な指導とか受けられるみたいなので、受験には有利になるのかな、とは思いますけど。行かなくても自分だけで勉強できなくはない、です。」
現役合格を目指せるか、と言われると流石の〇〇も自信はないが。
「じゃあ、進級希望はそのままにしとけ。」
まさかの真一郎の言葉に、〇〇は軽く絶望した。今まで経験したことのない恐怖を感じたのだ。そんな教師がいるクラスなんか行かなくていい。本当はそう言って欲しかったのに。
「で、でもわたし・・・」
「オレが絶対守ってやるから。」
「!」
「またしつこいようだったらオレに言え。面談とか言って呼び出されても、絶対近くに居て待っててやる。〇〇の声が聞こえるとこに居りゃあ、変なことされそうになってもすぐぶっ飛ばしに行けるしな。」
「先輩・・・」
「そんなおかしな教師に振り回されて、医者になるの邪魔されるなんて下んねーだろ。証拠掴んで、ソイツ引きずり降ろしてやろーぜ。」
安心しろ、と優しい笑顔が言う。大丈夫。真一郎が傍にいてくれる。先程まで不安で仕方なかったのが、一瞬にして安心感に包まれた。つい泣きそうになってしまった〇〇が、思わず真一郎の首に手を回して勢いよく抱き着いていた。
「先輩!ありがとう!」
「え、y、ちょ、t、〇〇!?だ、だからこここココガッコーなんですけどぉ!?///」
そのゼロ距離に、屋外の寒さも気にならなくなった今の二人には、当然お互いの存在しか見えていない。校舎の窓から静かにその様子を覗っていた男のことなど、気づくはずもなかった。
