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本編(完結)
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真一郎と柴田は、ひょんなことからお互いバイク好きということで、意気投合し知り合ったという。真一郎のバイクへの情熱、その人となりを気に入った柴田が可愛がるようになったのだとか。
「まさか、お嬢と真一郎が同じ高校だったとはな」
「オレもびっくりですよ。てか〇〇、おまえ組長さんの娘だったんだなぁ」
「・・・」
「すいやせん、お嬢!俺もうっかりしてて・・・」
うっかりでは済まされない。〇〇は天国から地獄へ落とされた気分だった。学校関係者には決して知られないよう過ごすと誓い、柴田にはあまり周囲をウロウロするなと口を酸っぱくして言っていたのにこの有様である。
「わたしが!何の為に!身元隠してきたと思っとんよ!柴田のバカ!もう口きいてやらん!!」
「(ガーーーーーン!)」
〇〇は、真一郎を前にしてもお構いなしに、不機嫌この上ない態度を決め込んでいた。先ほどまでの、どちらかといえばしおらしいイメージだった彼女が、かなり強気な態度で39歳のおっさん相手に凄んでいる―――その様子に真一郎は大層驚いた。
「な、なぁ〇〇」
「・・・なんですか」
真一郎は、柴田のあまりにも不憫な姿に同情した。見るに見かねて、ひとまず彼女を落ち着かせようと声を掛けた。
「大丈夫だって。オレ誰にも言わねーし。柴田さんにもめっちゃ世話になってることだし・・・なんとかなるって!」
「・・・真一郎先輩」
「ん?」
「先輩は他人事だからそんな呑気なこと言えるんですよね?ヤクザの娘だって知られて、いい事なんてひとっつもなかった!どうにかなってたら東京まで来てないから!!それでなくても入学早々にイチャモンつけられて絡まれるし殴られるし、先輩に家の事バレちゃうし!!」
良かれと思って発した一言―――それは、真一郎の想いも虚しく〇〇の逆鱗に触れたようで。真一郎の襟元をひっつかみながら、〇〇は堰を切ったようにまくし立てた。
そんな鬼気迫る状況の中で、彼は妙に冷静だった。真一郎は、最初から不思議に思っていたのだ。わざわざ都外からやって来てまで通う程の名門校でもない。ならば何故―――
それは想像でしかない。でもきっと孤独と戦う日々だったのだろう。今日だってきっと―――そう思いながら真一郎は、静かに〇〇の言葉に耳を傾けていた。
「今日だって・・・なんとかしなきゃって・・・先輩がいなかったら・・・っ」
〇〇の目から雫が一つ二つと流れていく。真一郎がギョッとしたのもつかの間、〇〇はわぁぁぁあん、と彼の肩口に顔を埋め、声を出して泣き出した。
「お、お嬢!?」
「っお、おぉおおおお〇〇!?ちょ、分かった!とりあえず落ち着け!!」
柴田のあたふたはいつも通りだったが、それ以上にあたふたした真一郎が、宥めるようにそっと〇〇の頭に手を置いた。
優しく撫でる掌の温もりが、また〇〇の涙腺を刺激して更に溢れて止まらなかった。
***
「ごめん、さっき俺がハンカチ借りたばっかりに・・・」
「いえ、柴田がいたので問題ないです・・・すいません、もう大丈夫です」
〇〇が路上で大号泣をかました為、3人でひとまず車の中に避難していた。
今度は、〇〇がハンカチをヒタヒタにする番だった。強面の男が持つにはあまりにも爽やかな香りのするハンカチで、自分以上に持つ彼の女子力に少しの腹立たしさを感じたことは心の中に仕舞った。
「とりあえず、今日聞いたことはぜってー誰にも言わねえから。そこは安心してな」
「恩に着ます・・・すいません、取り乱して」
まさか二人して泣き顔を晒し合うことになろうとは。妙な恥ずかしさの中、〇〇は今日の出来事を冷静に振り返った。他人の号泣した姿を見るのも、自分が他人を前にして号泣したのも、いつのことだったか思い出せない程久しぶりの出来事だった。
しかし、高校生にもなった男女が飛んだ羞恥を晒したのもだ。〇〇は考える程に馬鹿らしくなってきて―――ついには笑いが込み上げた。
「ふふっ」
「え、なに?」
「ははっ。いや、今日二人して号泣して、何やってんだろって思ったらすごく可笑しくって」
その様子を見て、真一郎は彼女が少しでも元気になってくれたなら、今日ほど告白が失敗に終わってよかったと思ったことはなかった。
「だな!」
後ろで笑いあう二人の様子をバックミラー越しに見ていた柴田が、安心したようにひとつ息を吐いていた。
***
車に乗ったついでに、柴田は運転するベンツをそのまま真一郎の家まで走らせた。
「ありがとうございます、柴田さん。〇〇も、なんか悪いな。逆に送ってもらって」
「成り行きですから。こちらこそありがとうございました、先輩」
車から降りた真一郎に向かって、まるで荷が下りたような柔らかい表情を浮かべた〇〇が礼を述べると、真一郎が優しく微笑みながら彼女に告げた。
「〇〇、なんかあったらオレがお前のこと守ってやるから」
「え?」
「だから医者になる夢、諦めんなよ」
また学校でな!そう言ってひらひらと手を振りながら家の中に入っていった真一郎の後姿を見送りながら、〇〇は今まで抱えていた見えない不安が、少しスッと抜けていったような気がした。
この暴走族総長 佐野真一郎との出会いが、これから〇〇の人生を大きく変えていくことになる。
