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本編(完結)
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電気を消して真っ暗な室内に、小さな灯火。それを〇〇が見事一息で吹き消した。
「「「Birthdayイブおめでとー!」」」
「そっか、前日だもんね。ありがとう!」
4人はごちそうを前に、各々好みのジュースで乾杯した。ピザやチキン、フライドポテトにサラダなど。さしずめクリスマスディナーのようなラインナップだった。
「もうクリスマス込みのメニューにしてみました♪」
「そうか。3日後ってもうイブじゃん。俺今年も一人か~。」
くっそー!沖田が叫びながら腕を回し真一郎の首を絞めていた。
「やめろ゙ぉ゙っ」
〇〇は、初めて過ごす友人たちとの誕生日に始終心躍らせていた。まさか、家族以外の人たちが祝ってくれるなんて、こんな日が来るとは思ってもみなかった。それだけでお腹いっぱいになっていた〇〇は、ジュースを飲みながらポテトやクラッカーをちまちまと摘まんでいた。
「〇〇ちゃん、食べてよ~。殆どあっためただけメニューだけど、サラダとケーキは私が作ってきたから!」
「え!?ケーキ作ったの?スゴイ!」
こずえは、裁縫が出来て菓子作りが得意。とても女の子らしいところに〇〇は憧れを持っていた。自分にはない才能を傍で感じることができるのも、友人という関係があってこそだ。
「作り方教えてほしいな。」
「いいよ!じゃあ今度はうちにおいでよ。」
そんで出来たやつ佐野先輩に食べてもらいな♡こずえがこそっと耳打ちすると、〇〇の頬がほんのり染まる。
こずえは、それが恋心なのか友人としての愛情なのか計り知れなかった。しかし、真一郎が与えてくれる好意を心から喜んでいることは間違いないし、彼が喜ぶ姿を想像しては照れる仕草を見せる。それは紛れもなく"恋心を抱いている女の子"である。
友愛で終わらせるのか、はたまた彼女の恋心を覚醒させるかは、件の暴走族総長にかかっているのだろう。いつまでたってもかみ合わない二人の関係が、良い方向に発展してくれたら、と密かにこずえは願っていた。
お腹が膨れ、少し中休み。という空気になったタイミングで、女子二人がキッチンで空いた食器の片づけをしていた。リビングのソファに座り、コーラを飲んで手持無沙汰になった沖田が、ニヤッと口角を上げ真一郎に小声で話しかけた。
「で、今日どこまでやるつもりなんだよ?」
「お前にはぜってー言わねぇ。」
「それもう最後まで致すつもりじゃねぇかよ~」
このこのぉ♡横で沖田が真一郎を肘で突っついていた。
するわけないだろ!と本当は言いたかったが、沖田から離れようと尻を上げた瞬間、ポケットに入れてきた特徴的な円形をした"アレ"の存在を感じ、真一郎はとっさに言い返せなかったのだった。
「チョコレートの詰め合わせ買ってあったんだ。よかったらつまんで。」
〇〇が中休みのおつまみに、と一口サイズのチョコをテーブルに乗せたところで、こずえが立ち上がった。
「ごめん。私と沖田先輩はそろそろ帰るね。」
「え?もう帰っちゃうの?」
〇〇が時計を見ると、既に夜10時を回っていた。もうこんなに時間が経っていたのかと驚いた。確かに、女の子が出歩くのは感心されない時間帯だ。
「時間経つの早い・・・」
「また月曜ね!〇〇ちゃん。」
「じゃ、俺はこずえちゃん家までささやかなデートを楽しんでくるわ。佐野、しっかりヤれよ。」
「さっさと帰れセクハラ野郎。」
真一郎が、呆れ顔で沖田に向かってシッシ、と手をひらひらさせていた。
〇〇ちゃんのことお願いしますね。と言いながら、〇〇の見ていない隙に真一郎へガッツポーズを送ったこずえが、沖田と共に去っていった。
しん――と、急に静まり返った。騒がしさから一転、この二人きりの空間に、真一郎の心臓はドキドキと忙しなく鳴っていた。
「先輩も、もうちょっとしたら帰っちゃいますか?」
憂いを帯びた顔を向けて問いかける〇〇は、「佐野家に泊まりたい」と言った時と同じ表情。ああ、これはきっと楽しい時間が終わるのを惜しいと思っているに違いない。彼の悪戯心が疼いた。
「寂しい?」
「!さっ、さ、ささ寂しいとかじゃ・・・!//」
二人のコップ片付けてきます!そう言って〇〇は慌てたようにリビングへと戻っていった。
いじめすぎたか。この様子だと、帰らなくてもしばらく咎められることは無さそうだ。と真一郎は安堵の溜息を一つ吐いた。
「あ、しまった。コーラこれで最後か。」
最後の一本を開けたようで、真一郎が一滴残らずグラスに注ごうとペットボトルを振っていた。
「コンビニ行きます?」
「いや、いいよ。他に炭酸なんかなかったっけ。」
〇〇は、こずえたちが持ってきてくれた飲み物を一通り見たが、残っているのはお茶しかなかった。
「残念ながら・・・」
「あ~沖田が一人で2リットル2本開けてたからな。」
あのヤロー。食べ物同様、飲み物の恨みも恐ろしいようだ。〇〇は、家に何かなかったな、と冷蔵庫を漁ってみた。
「あ。先輩。柴田がいただき物だって持って帰って来てたシャンメリーならあるんですけど。」
シャンメリー。主にクリスマスに飲まれる子供用の炭酸飲料だ。
「いいの?柴田さんと飲まなくて。」
「はい。柴田はジュース飲みませんから。」
〇〇は、ワイングラスとボトルをローテーブルまで持ってきて、ソファに座る真一郎にずいっとボトルを差し出した。
「先輩っ、お願いします!」
シャンメリーの特徴と言えば、開栓時に鳴る軽快なポンッ!という音。上手に開けなければ、栓が勢いよく飛び出して非常に危険な代物であるが、その開栓作業がクリスマスパーティー序盤の見せどころでもある。
「あれ?これコルク栓じゃん。随分本格的だな。」
真一郎が、コルクを押さえているワイヤーを解いていく。布きんを被せ、ぐぐっと飛び出してくる栓を押さえながらゆっくりと開けていった。
〇〇が眉間にしわを寄せドキドキしながらその様子を眺めている姿に、弟妹も同じような表情で開ける様子を見ていたな、と去年のクリスマスイブを思い出した真一郎は、ふっと思わず笑ってしまった。
「なんですかその含み笑いは。」
「いや、ガキみてーにガン見してるなって。」
「いっ、いいじゃないですか!どっか飛んでかないかって落ち着かないんですもん。」
そうこうしているうちに、ポンッ!と一際大きな音が響いた。突然のことに思わずビクッと肩が跳ねた〇〇を見て、堪らず真一郎が爆笑した。
「笑いすぎです!」
「だって、アイツらと反応一緒なんだもん。」
ケラケラ笑う真一郎からボトルをふんだくった〇〇が、もう!と言いながらワイングラスに注いだ。
「「カンパーイ」」
カチン。と軽くグラスを合わせ、二人は少し大人の雰囲気を味わっていた。
〇〇が少し口をつけたところで、ん?なんか変わった味がするな。と思い一瞬飲むのを躊躇ったが、まぁぶどうジュースの味するし、もったいないから飲も。とグラスの中身をぐいっと一気飲みしていた。
一方その隣で真一郎は、グラスに口を近づけた瞬間、鼻に通った独特の香りに違和感を感じていた。
「あ?これアルコール入ってねぇ?」
スンスン。と改めて匂いを確認し一口目を口に含んだ。程よい炭酸の刺激と、後からくる全身の血の巡りが活発になるこの感じ。
まさか、と思い真一郎がボトルの裏ラベルをよくよく見ると、そこには「弱発泡性ワイン/アルコール分11%」という表示が。
「おい、これシャンメリーじゃなくてスパークリングワインじ」
ぽす。と真一郎の肩に何かが乗っかって重みを感じた。隣に座っていた〇〇が、んぅ~っと唸りながら真一郎にしな垂れかかっている。どこか遠くを見つめる〇〇の瞳は、焦点が定まっていない。
「お、おい〇〇」
「ねぇ。せんぱいは、キスってどんな味か知ってますぅ?」
「・・・・・・え!?」
「この前こずえちゃんたちが、キスは"レモン味"とか"いちご味"だーって言ってたんですけど~、唇同士が接触しただけじゃ絶対分かるわけないしぃ、仮に相手の口内を舐めたとしても、健康体なら唾液は限りなく無味無臭なので、味なんて殆ど感じないはずなんですぅ。」
「う、うん・・・ん゙っ!?」
「やっぱ医者を目指す者としては、そーゆーことも知っておかないとダメですよね~え?」
一杯だけで相当酔いが回っている〇〇に、真一郎はたじろいだ。しかも、ナチュラルにシレっと深いキスの行為を淡々と説明してくる〇〇に、彼は何とも言えない複雑な気持ちだった。〇〇は、フラつく身体をなんとか支えようと、片手を真一郎の太ももに乗せますますその身体を彼に寄せてくる。これは非常に、非常にマズい。想いを通じ合わせる過程をすっ飛ばしかねない状況に、彼の焦りは増していくばかりだった。
「マンジローが言ってましたよぉ。せんぱいは、知らないことがあったらいつも教えてくれるって」
「っ!?」
「ねぇ、せんぱい・・・」
アルコールのせいでほんのり染まっている頬。潤んだ瞳でこちらを見上げる視線。そして、メイクはしていないはずなのに、その唇は紅を差したように鮮やかだった。
「教えて・・・?」
そう、彼女は酔っている。だからこんな事、許されていいはずがない。常識と理性の備わった人間ならば誰しもがそう思う。しかし、この世にはこんな言葉も存在する。"据え膳食わぬは男の恥"。
一度ゴクリと喉を鳴らした真一郎が、気づいた時には両手で〇〇の肩を支えて起こし、彼女を自分の方へと向かせた。
「・・・いいよ。教えてやる。」
今の彼女にとっては、ただの好奇心に違いない。それでも真一郎は、少しでも近づきたくて、特別になりたくて、その欲望を満たすために彼女の唇に自身のそれを寄せた。
コチ、コチ。と鳴る壁掛け時計の秒針が、彼の耳にはやけに大きく聞こえていた。
