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番外編
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Extra editio5.
時をかける少女
ひとが 現実よりも
理想の愛を知ったとき
それは ひとにとって
幸福なのだろうか?
不幸なのだろうか?
「〇〇ちゃん、これあげる♪」
こずえが色とりどりのドライフラワーが詰められた小瓶を差し出してきた。コルクで栓をされている口からは、ほのかに香りが漂ってくる。
「かわいい。いい匂いがするね。ポプリ?」
「そう。お母さんが趣味で園芸やってて。育てたラベンダーを乾燥させて作ったんだって。」
そうだ。これはラベンダーの香りだ。様々な芳香剤に重宝されている香りだが、いざ嗅いでみると何の香りだったかパッと出てこないものだ。〇〇は、覚えのあるその匂いの正体に納得した。
「ありがとう!部屋に飾るね。」
〇〇は、小瓶が割れないようやさしくハンカチに包んで、鞄のポケットに仕舞った。
「・・・あなた 私のもとから
突然消えたりしないでね
二度とは会えない場所へ
ひとりで行かないと誓って
私は 私は さまよい人になる・・・♪」
「なんかいいことあった?」
声のした方へ振り向くと、鞄を肩に担いだ真一郎が立っていた。
ここは放課後の中庭。今日の待ち合わせ場所だ。
「こずえちゃんから、ポプリ貰いました。」
「ポプリ?」
ベンチに座る〇〇が、鞄から小瓶を取り出し、それを真一郎の掌に乗せた。彼女の隣に座って、それを物珍しそうにまじまじと観察していた彼が、顔を近づけた時その香りに気づいて、お。と思わず声が出た。
「これあれだ。便所の匂いだ!」
「・・・もう返して。」
確かに、芳香剤と言えばトイレ用に設置する家庭も多いだろう。そんなイメージがついてしまっていた真一郎が、何の気なしに口にした言葉で〇〇のテンションは急降下した。
小瓶を真一郎の手からふんだくると、ぷいっとそっぽを向いてしまった彼女の姿に、しまったと思った真一郎が必死に機嫌を取りにかかる。謝り倒し、何とかこちらに顔を向かせることに成功した彼が、話題を変えようと先ほどの歌について〇〇に訊ねた。
「そういや、さっきのって何の歌?」
「『時をかける少女』です。」
今では、アニメ映画の方で知名度が高いタイトルだが、1983年、女優の原田知世主演で実写化された日本映画の代表作である。映画監督 故 大林宣彦の「尾道三部作」の一つとして知られる。広島の尾道市・竹原市の古い街並みがロケ地として多く使われた、昭和の風情漂うノスタルジーな演出も話題の作品だ。
「名前だけなら聞いたことあるな。確か、女の子が主役の映画?」
「その子が、高校の理科実験室に落ちてたフラスコから立ちのぼる煙を吸ってしまったことがきっかけで、タイムリープしちゃうっていうストーリーです。」
「タイムリープ?」
「ある日、気づいたら既に過ぎていたはずの昨日に戻っていることに気づくんです。地震があったり、そのあと火事があったこととか全て一日前の出来事そのままで。瞬間移動するテレポーテーションと時空を超えるタイムトラベル能力の両方を持ってしまった。」
〇〇は、手に握っていたポプリの入った小瓶を見ながら続けた。
「その吸ってしまった煙が、この「ラベンダー」の匂いなんです。」
へぇー。と思いのほか興味深く聞いてくれている様子の真一郎に微笑むと、〇〇はもう少し続けてもよさそうだ。とストーリーの続きを話した。
「その子、怖くなって幼馴染の男の子に相談するんです。だけど、実はその男の子、西暦2660年からやってきた未来人だったんです。」
「えええ!?」
「彼は、緑が絶滅した未来から植物の成分を採取するため過去にやってきた。主人公の女の子が彼と話をしているうちに、二人の思い出の記憶に矛盾があることに気づくんです。その子が彼に「本当のことを教えて」ってお願いすると、全ての始まりの日。あの日の理科実験室にタイムリープするように言われるんです。そこには彼がいて、自分が関わった人間と自分自身の記憶を消して、未来へ帰らなければいけないって告げられる。」
「記憶を操作していたのか?」
「はい。思い出も全部嘘。彼とはたった1カ月しか過ごしてなかったんです。その1カ月の間に、二人は惹かれ合っていた。彼女が泣きながら「あなたとの思い出を大切に生きていきたい」って言うんですけど、彼が最後に「再びこの時代に来ることがあっても、そのときには自分だと分からないよ」ってあのラベンダーの煙で記憶を消しちゃうんです。」
真一郎は、その主人公の心情を映したような愁いを帯びた表情の〇〇にドキッとした。それは、失恋をした少女――いや、まるで大人の女の色気さえ漂っているような。
「ていうか、その未来から来た男の子、めちゃくちゃ卑怯だと思いません?」
「・・・へ?」
「だって、他人の記憶を改ざんしまくっといた挙句、ホントのこと全部しゃべってじゃあハイさよーなら。ってあんまりだと思うんですけど。」
「・・・」
まさかの怒りに真一郎は目を丸くしていた。確かに、傷つけないよう最後まで黙っていてやれば彼女を泣かせずに済んだのかもしれない。言い逃げのような結末と言えばそうなのだろうが、好きな女の子に「本当のことを教えてくれ」と言われたのだし、彼女の決意に向き合って全て懺悔してしまいたくなった彼の気持ちを、真一郎は分からなくもなかった。
「たぶんだけど、彼女の気持ちが知りたかったのかも。」
「え?」
「もう傍にいることはできない。それに自分の記憶も消さなきゃいけない。その前に、未来へ帰らなきゃいけないことを知った彼女の本音を、直接聞いてみたくなったのかもな・・・って。」
真一郎には身に覚えがある。同じことを自分もやったのだ。彼はあの時、一瞬でも彼女の心に傷を負わせてしまったことを今でも後悔していた。そして思う。自分が未来から来た彼と同じ立場だったとしたら、きっと同じことをしているだろうな、と。
「むー。まぁ、記憶がなくなれば全部"無かった"ことになるのかもしれないけど・・・」
お互いを好きだった気持ちも、そればかりかその存在さえも。まるで、本人の知らぬところで行き場を失ったその感情だけが、永遠に時を彷徨ってしまうかのようだ。
「結構面白い映画だな。過去や未来に行き来出来たら楽しいだろうな~」
"過去"へ行く。もしも過去に起こる出来事を変え、それが"未来"を変えることになるのだとしたら―――
「〇〇は、過去と未来、タイムリープできるならどっちに行きたい?」
「え?」
〇〇は一瞬考えてしまった。あの時、透と出かけなければ彼を失うことはなかったんじゃないか―――
「・・・わたしは、未来へ行きたいです。」
「どうして?」
「自分が立派な医者になってるかなって見てみたい。あと、先輩が不良を卒業してちゃんと働いてるか気になるから。」
「え゙。」
「大人になってもフラフラしてたら、喝いれないとでしょ。」
勘弁してくれ、といった表情の真一郎に〇〇は思わず吹き出した。きっと、過去へタイムリープできるとしても行かない気がした。〇〇はもう、前を向いて生きていくと決めたのだ。透と、そして目の前の彼が導いてくれた未来へ。
「先輩は?」
「オレは、過去に行く。」
え?意外とすんなり答えを出した真一郎に、〇〇は驚いていた。それにどちらかと言うと、未来のバイクを見に行きたい、なんて子どもっぽいことを言うのかなと考えていたから。
「過去の〇〇に会って、『おまえはひとりじゃないぞ』って言ってくる。」
「・・・っ」
本当にタイムリープが出来たなら、それはどんなに素敵なことだろうか。〇〇は、出来ることなら透がいた時代へ来て欲しいと思った。きっと彼に自慢するだろう。この人が、初めてできる未来の友達なのだと。
「?」
どうした?〇〇が顔を背けたのを不思議に思って真一郎が声をかけた。少しだけ潤んだ瞳を指で拭うと、〇〇が彼に向かって告げた。
「いつか、過去のわたしに会えたら伝えてください。」
時間は過ぎていくものじゃない。
やってくるものだよ。って―――
良かったら、あとがきも見てやってください➡︎➡︎➡︎
時をかける少女
ひとが 現実よりも
理想の愛を知ったとき
それは ひとにとって
幸福なのだろうか?
不幸なのだろうか?
「〇〇ちゃん、これあげる♪」
こずえが色とりどりのドライフラワーが詰められた小瓶を差し出してきた。コルクで栓をされている口からは、ほのかに香りが漂ってくる。
「かわいい。いい匂いがするね。ポプリ?」
「そう。お母さんが趣味で園芸やってて。育てたラベンダーを乾燥させて作ったんだって。」
そうだ。これはラベンダーの香りだ。様々な芳香剤に重宝されている香りだが、いざ嗅いでみると何の香りだったかパッと出てこないものだ。〇〇は、覚えのあるその匂いの正体に納得した。
「ありがとう!部屋に飾るね。」
〇〇は、小瓶が割れないようやさしくハンカチに包んで、鞄のポケットに仕舞った。
「・・・あなた 私のもとから
突然消えたりしないでね
二度とは会えない場所へ
ひとりで行かないと誓って
私は 私は さまよい人になる・・・♪」
「なんかいいことあった?」
声のした方へ振り向くと、鞄を肩に担いだ真一郎が立っていた。
ここは放課後の中庭。今日の待ち合わせ場所だ。
「こずえちゃんから、ポプリ貰いました。」
「ポプリ?」
ベンチに座る〇〇が、鞄から小瓶を取り出し、それを真一郎の掌に乗せた。彼女の隣に座って、それを物珍しそうにまじまじと観察していた彼が、顔を近づけた時その香りに気づいて、お。と思わず声が出た。
「これあれだ。便所の匂いだ!」
「・・・もう返して。」
確かに、芳香剤と言えばトイレ用に設置する家庭も多いだろう。そんなイメージがついてしまっていた真一郎が、何の気なしに口にした言葉で〇〇のテンションは急降下した。
小瓶を真一郎の手からふんだくると、ぷいっとそっぽを向いてしまった彼女の姿に、しまったと思った真一郎が必死に機嫌を取りにかかる。謝り倒し、何とかこちらに顔を向かせることに成功した彼が、話題を変えようと先ほどの歌について〇〇に訊ねた。
「そういや、さっきのって何の歌?」
「『時をかける少女』です。」
今では、アニメ映画の方で知名度が高いタイトルだが、1983年、女優の原田知世主演で実写化された日本映画の代表作である。映画監督 故 大林宣彦の「尾道三部作」の一つとして知られる。広島の尾道市・竹原市の古い街並みがロケ地として多く使われた、昭和の風情漂うノスタルジーな演出も話題の作品だ。
「名前だけなら聞いたことあるな。確か、女の子が主役の映画?」
「その子が、高校の理科実験室に落ちてたフラスコから立ちのぼる煙を吸ってしまったことがきっかけで、タイムリープしちゃうっていうストーリーです。」
「タイムリープ?」
「ある日、気づいたら既に過ぎていたはずの昨日に戻っていることに気づくんです。地震があったり、そのあと火事があったこととか全て一日前の出来事そのままで。瞬間移動するテレポーテーションと時空を超えるタイムトラベル能力の両方を持ってしまった。」
〇〇は、手に握っていたポプリの入った小瓶を見ながら続けた。
「その吸ってしまった煙が、この「ラベンダー」の匂いなんです。」
へぇー。と思いのほか興味深く聞いてくれている様子の真一郎に微笑むと、〇〇はもう少し続けてもよさそうだ。とストーリーの続きを話した。
「その子、怖くなって幼馴染の男の子に相談するんです。だけど、実はその男の子、西暦2660年からやってきた未来人だったんです。」
「えええ!?」
「彼は、緑が絶滅した未来から植物の成分を採取するため過去にやってきた。主人公の女の子が彼と話をしているうちに、二人の思い出の記憶に矛盾があることに気づくんです。その子が彼に「本当のことを教えて」ってお願いすると、全ての始まりの日。あの日の理科実験室にタイムリープするように言われるんです。そこには彼がいて、自分が関わった人間と自分自身の記憶を消して、未来へ帰らなければいけないって告げられる。」
「記憶を操作していたのか?」
「はい。思い出も全部嘘。彼とはたった1カ月しか過ごしてなかったんです。その1カ月の間に、二人は惹かれ合っていた。彼女が泣きながら「あなたとの思い出を大切に生きていきたい」って言うんですけど、彼が最後に「再びこの時代に来ることがあっても、そのときには自分だと分からないよ」ってあのラベンダーの煙で記憶を消しちゃうんです。」
真一郎は、その主人公の心情を映したような愁いを帯びた表情の〇〇にドキッとした。それは、失恋をした少女――いや、まるで大人の女の色気さえ漂っているような。
「ていうか、その未来から来た男の子、めちゃくちゃ卑怯だと思いません?」
「・・・へ?」
「だって、他人の記憶を改ざんしまくっといた挙句、ホントのこと全部しゃべってじゃあハイさよーなら。ってあんまりだと思うんですけど。」
「・・・」
まさかの怒りに真一郎は目を丸くしていた。確かに、傷つけないよう最後まで黙っていてやれば彼女を泣かせずに済んだのかもしれない。言い逃げのような結末と言えばそうなのだろうが、好きな女の子に「本当のことを教えてくれ」と言われたのだし、彼女の決意に向き合って全て懺悔してしまいたくなった彼の気持ちを、真一郎は分からなくもなかった。
「たぶんだけど、彼女の気持ちが知りたかったのかも。」
「え?」
「もう傍にいることはできない。それに自分の記憶も消さなきゃいけない。その前に、未来へ帰らなきゃいけないことを知った彼女の本音を、直接聞いてみたくなったのかもな・・・って。」
真一郎には身に覚えがある。同じことを自分もやったのだ。彼はあの時、一瞬でも彼女の心に傷を負わせてしまったことを今でも後悔していた。そして思う。自分が未来から来た彼と同じ立場だったとしたら、きっと同じことをしているだろうな、と。
「むー。まぁ、記憶がなくなれば全部"無かった"ことになるのかもしれないけど・・・」
お互いを好きだった気持ちも、そればかりかその存在さえも。まるで、本人の知らぬところで行き場を失ったその感情だけが、永遠に時を彷徨ってしまうかのようだ。
「結構面白い映画だな。過去や未来に行き来出来たら楽しいだろうな~」
"過去"へ行く。もしも過去に起こる出来事を変え、それが"未来"を変えることになるのだとしたら―――
「〇〇は、過去と未来、タイムリープできるならどっちに行きたい?」
「え?」
〇〇は一瞬考えてしまった。あの時、透と出かけなければ彼を失うことはなかったんじゃないか―――
「・・・わたしは、未来へ行きたいです。」
「どうして?」
「自分が立派な医者になってるかなって見てみたい。あと、先輩が不良を卒業してちゃんと働いてるか気になるから。」
「え゙。」
「大人になってもフラフラしてたら、喝いれないとでしょ。」
勘弁してくれ、といった表情の真一郎に〇〇は思わず吹き出した。きっと、過去へタイムリープできるとしても行かない気がした。〇〇はもう、前を向いて生きていくと決めたのだ。透と、そして目の前の彼が導いてくれた未来へ。
「先輩は?」
「オレは、過去に行く。」
え?意外とすんなり答えを出した真一郎に、〇〇は驚いていた。それにどちらかと言うと、未来のバイクを見に行きたい、なんて子どもっぽいことを言うのかなと考えていたから。
「過去の〇〇に会って、『おまえはひとりじゃないぞ』って言ってくる。」
「・・・っ」
本当にタイムリープが出来たなら、それはどんなに素敵なことだろうか。〇〇は、出来ることなら透がいた時代へ来て欲しいと思った。きっと彼に自慢するだろう。この人が、初めてできる未来の友達なのだと。
「?」
どうした?〇〇が顔を背けたのを不思議に思って真一郎が声をかけた。少しだけ潤んだ瞳を指で拭うと、〇〇が彼に向かって告げた。
「いつか、過去のわたしに会えたら伝えてください。」
時間は過ぎていくものじゃない。
やってくるものだよ。って―――
良かったら、あとがきも見てやってください➡︎➡︎➡︎
