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本編(完結)
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「・・・神保は俺のこと怖くねーの?」
ファミレスで注文を済ませやっと一息ついたころ、〇〇は正面に座る彼から突然そんな質問をされた。
佐野真一郎。〇〇を輩から助けてくれたヒーローは、
聞けば、この渋谷界隈を賑わす大きなチームだという。
なるほど、あいつらがビビって逃げたわけだ。と、〇〇はようやっと納得したところだ。
「いやかなり驚きましたけど、なんていうか・・・先輩は助けてくれたし、悪い人ではないです・・・よね?」
(実家にはもっとガチ強面の人たちがいたんで。とは言えんし。)
彼女からしてみれば、その辺のヤンキーなんてかわいい犬猫のような感覚であった。
「ふーん。でもこんなことしてっから、俺の周りのやつらはさ、あえて近づいてくる奴いないし。特に女子は。」
変わってんな、あんた。
真一郎の言葉を聞いて、そこまで自覚があるにも関わらずよく19回も告白に挑み続けてきたものだ。とツッコミを入れずにはいられなかった。
こんな人物が本当に暴走族の頭をしているのだろか。なんだか疑わしくなってきた〇〇だった。
「今日絡んできたやつら、いつもあーなの?」
雑談も落ち着き、注文したドリンクが運ばれてきたところで、真一郎が先ほどの出来事について訊ねた。
〇〇は、コーヒーに砂糖を入れながら正面を見ると、ガラスコップの中には細かな気泡がとめどなく湧き上がるコーラが注がれていた。
「数日前からあの女子二人には・・・あんな数で囲まれたのは今日が初めてで。たぶん後ろにいた男子生徒は他校の不良かと。」
「やっぱそうか。何人かどっかで見たことある面だった。めんどくせーのに目ぇつけられたな。」
やっぱそうですよね~~~~~
と盛大なため息をついて〇〇は項垂れた。
「せっかく上京までしてきたのに・・・」
「なに、神保って越してきたの?」
「はい、広島から。こっちの高校に通う為に先月。」
へー。親の都合?
と、転校あるあるを例に真一郎がさらに突っ込んでくる。
まぁ、家のことに触れなければ問題ないよな。そう思い、当たり障り無い内容で〇〇は答えた。
「いえ、一人で。・・・わたし、医者になりたいんです。」
真一郎は一瞬目を見開いたあと、ほー、ともの珍しいものを見る目で見つめてきた。
医者を目指しているなんて、家族以外の人間に話したのは初めてだった。
普段ならこんなことを初対面の人に言うことなどありえないのだが、彼にはなぜか話してもいいと〇〇は思えた。
先ほど自分を取り囲んできたヤツらのことを、卑怯だと言った彼の信念が、垣間見えた人柄が嫌いじゃなかったから。
「わたし、家族が仕事柄怪我多くて。そんな姿見てたら、わたしが治してあげられたらって思ったんです。だから親戚が近くにいる渋谷の特進クラスがある学校を選んで入りました。」
「すげぇじゃん!めちゃくちゃ勉強しないとだな。」
真一郎は、特に疑う様子もなく納得したようだった。ひとまず下手に深掘りされることはなさそうで、〇〇は安堵した。
「はい、むこうの環境では本格的な勉強が難しくて。こっちに来てみたんですが・・・出鼻くじかれた気分です。」
「あははは。なるほどね。それは困ったな。」
(笑い事ではないのです、佐野真一郎さん。)
〇〇がコーヒーを一口飲み、ふと彼の顔を見ると、なにやら真面目な顔であごに手を当て考える仕草をしている。その真剣な表情を不思議に思っていると、しばらくして彼が口を開いた。
「なぁ。俺がお前の傍にいてやろうか。」
「・・・・・・はい?」
「たぶん、虫よけくらいにはなれると思うぜ。」
「とっ、と言いますと・・・??」
突然の提案に理解が追い付かず、〇〇の頭上でハテナが踊り出す。
彼の真意を伺うべく、〇〇はどぎまぎしながら言葉を促した。
「その辺のヤツらなら、今日みたいにビビって逃げ出してくれれば儲けもんだろ?俺、神保のこと応援したくなったからさ。」
「や、でもこれ以上ご迷惑になることは・・・」
「言っただろ、応援してぇって。俺が好きでやりたいんだって。悪い話でもないと思うけど。」
また予想の斜め上を行く回答に、〇〇は開いた口がふさがらなかった。
しかし、また絡まれる可能性を潰すには何か手を打たなければならないのも事実。ここは彼の行為に甘えてみるのもいいかもしれないと思い直した。
今日の反応を見るに、佐野真一郎の存在をチラつかせれば、もう無理な突っかかりはしてこないだろう・・・
なにより〇〇は、余計なことを考える時間も惜しかった。
「・・・じゃ、お願いしよう、かな。」
「おう!任せろ。」
「でも、傍にいるって、ずっとついててもらうわけにいきませんよね?」
「ああ、とりあえずは俺たちが「ダチ」ってことをアピールすりゃあいい。」
佐野真一郎は、イタズラっ子のような顔をして無邪気に答えた。
(めっちゃくちゃいい笑顔であなた・・・てかそんなんでホントに虫除けになんのかな?むしろ絡まれやすくなったりしませんか?あなたちょっとした有名人なんですよね??)
別の心配事が増えたのでは、と嫌な予感もしていたが、他に有効な手も思いつかず、〇〇はひとまず了承するしか手がなかった。
「じゃあその、お、お友達ってことで・・・
よろしくお願いします。佐野先輩。」
そろそろ帰ろうかというところで、近所の人からもらったビワをおすそ分けしたい、という真一郎に連れられ、〇〇は彼の自宅へも寄ることになった。旬な果物をいただけるとはとてもありがたいことだが、たくさんあって困っているらしい。
〇〇は歩きながら、現時点までに収穫した情報から彼の人となりを分析していた。
話せば話すほどに、見てくれはヤンキーだが、不良集団をまとめ上げている総長だなんて信じられなかった。
今なんて、歩きながら自分の家族構成をぺらぺらと喋っている。両親はおらず、祖父と歳の離れた弟妹の4人暮らしらしい。
彼が不良への道を歩み出したのは、やはり家庭環境に起因するところがあったのだろうか。
「お友達」になった真一郎の口は、〇〇に対してかなり緩くなっているようだった。
(なんかこの人、憎めないんだよな。)
〇〇がそんなことを考えていると、彼の自宅前まで来たところで、少々挑戦的なという表現がしっくりくるような幼い声が突然後ろから聞こえてきた。
「よォ真一郎。今回も盛大に連敗更新祝ってやるぜ。」
「(グサッ!)」
その言葉を聞いた途端、突如真一郎が苦しそうに胸を押さえだした。
〇〇は突然のことにビクッと肩を震わせた。
何事だ。と声のした方を振り向けば、ランドセルを背負った小さな男の子が立っていた。髪の色が明るく、かなり目立つナリをしている。
(うお、不良小学生だ。)
突如現れた彼の存在に最初こそ驚いたが、よくよくその少年を観察していると、どことなく真一郎の面影があることに気づく。
(あ、もしかしてこの子・・・)
〇〇は、先ほどの真一郎との立ち話で出てきた弟妹の話を思い出した。
「神保、コイツさっき言ってた弟の万次郎・・・」
「おい真一郎、フラれてすぐ別の女連れまわしてるとかやるじゃん。」
「ばっっ!?お、お前なんつーことを!!ちげーし!!」
てかフラれたなんてまだ言ってねーだろ!
と真一郎が歳の離れた弟に向かって吠えている。その様を見つつ、〇〇はそのやり取りに目を丸くした。
(何だこの慌て様は。)
暴走族総長が10こも下の弟に押されている。
「えーっと、はじめまして。わたし、佐野先輩の一つ下の神保〇〇。よろしく万次郎くん。」
屈みながら彼に目線を合わせ挨拶をすると、彼はまっすぐ〇〇を見て少し思案してから口を開いた。
「・・・ふーん。〇〇ね。「くん」つけなくていいよ。めんどくせぇだろ。」
俺も呼び捨てで呼ぶし。
と、生意気なガキと呼ぶにふさわしいふてぶてしさでそう言った。
先輩、どういう教育をなさっているのですか。などと思っていると、〇〇は万次郎からとてつもなく凝視されていることに気づく。
歳の離れた小学生にここまで見つめられることなんて経験がなかったものだから、若干狼狽えた。
「な、ななななんですか。」
「まぁ、確かに〇〇はシンイチローのタイプではないな。」
「・・・はい?」
「おいマンジロー、初対面で仮にも年上にいきなり名前呼び捨てにすんじゃねーよ・・・」
どうも彼は、兄の恋愛事情に詳しいようだった。今日告白することも知っていたに違いない。
そんなことを思えば、〇〇はなんだか兄弟仲にほっこりした。とても良い関係を築いているのだろうことが伺える。
なんだか少し、羨ましくもなった。
「ったく。ごめん神保、ちょっとここで待ってて。」
そういうと真一郎は、ビワを取りに行ったのだろう。家の中へと消えていった。
〇〇が立ち上がりふと横を見ると、一緒に入っていくかと思った弟の万次郎は、何故か〇〇と一緒にこの場に留まっていた。
あれちょっと気まずいんですけど。〇〇は変な汗が出てきていた。
「えーと、お家入らないの?」
「なぁ。なんでシンイチローについてきたんだ?」
なんで?とは?
突飛な質問に〇〇の思考が止まる。
真一郎と違って掴みどころのない空気をまとっている彼は、ほんの一瞬深い深い漆黒の瞳を見せた。
「あいつが女連れてきたのはじめてだったから。」
はっとして、〇〇は彼の言葉に思考を戻した。
万次郎は、なんてことないといった顔で質問の意図を口にした。
あぁ、女子はビビって近寄ってこないって言ってたし、兄貴の隣に女がいたら確かにびっくりするか。
と、〇〇は彼の言葉に素直に納得した。兄ちゃん取られたみたいな気分になってたりするのかな。そんなことを思えば、先ほどまでのふてぶてしい態度の彼から垣間見えたかわいらしい一面に少し安心する。
先程、彼の瞳に囚われたのは気のせいだ。そう思うことにした。
「今日、学校で不良たちに絡まれてたところを助けてもらってね。また絡まれないようにって、友達になってくれたんよ。」
で、ビワを分けてくれるって言われて貰いに来ました。
そう説明するも、彼はまた何か思案するように〇〇への視線を止めない。
(なぜ止めない。もういいでしょお家に入りなさい。)
自分に弟がいたらこんな感じで話すのかな。なんて頭の中で妄想していると、突然彼はニッと笑いだし、
「〇〇は変わってんな。」
小さな不良少年は、そう言い捨ててスタスタと家の中に入っていったのだった。
