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本編(完結)
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「バカかお前は。お嬢が一人暮らしの部屋にひょいひょい男を上げるような尻軽女に見えるんか?ァア"?」
「尻軽て・・・」
真一郎は、柴田のヘッドロックが決まってソファの上で伸びていた。
先輩ゴメンなさい。ピクリとも動かない真一郎に向かって、〇〇は静かに手を合わせた。辛うじてまだ死んではいない。
「柴田、お夕飯の食材買っといたよ。」
「ありがとうございます。じゃあ早速作ります。」
その会話を聞いて真一郎が思わず飛び起きた。
「え!?柴田さんが作るの!?」
「大体お夕飯は柴田が作ってくれるんですよ。たまに忙しくて帰らないときは自分で作りますけど。」
真一郎は、目の前の男のギャップに驚愕した。まさかの料理男子だったとは。いや料理おっさん?
「真一郎、あとでもっかいシめちゃるわ。」
「なぜ!?」
「なんとなく。」
「先輩、柴田が食事面は全力サポートしますので、ちゃんと集中してやりましょうね。」
当初の目論見が大いに外れた真一郎は、ガクっと肩を落としたのだった。
「うま。」
サクサクのエビフライは絶品だった。柴田は、エプロン姿で黙々とエビフライを揚げている。
「おいしいですよね~柴田の揚げ物大好き♪」
「なんか、このソースすげぇ甘いな。美味い。」
「それ、広島のお好み焼き用ソースなんですけど、うちはソースかける物は全部そのお好みソースなんです。」
「どんどん食え。まだまだあるけぇ。」
柴田は、エビだけでは飽きるだろうと思い、冷凍していた豚肉をトンカツにしてくれていた。
「え。ちょ。柴田さん結婚して。」
「残念やったのぉ真一郎。俺は既婚者じゃ。」
真一郎の箸が止まった。
「えええええええ!?」
「ははは!見えませんよね。娘さんも一人いるんですよー。」
今日一番の衝撃だった。
柴田の立場などを鑑みて、諸事情により家族とは別居中だという。
「なんか、銀座で有名なクラブの元モデル美人ママさんを落としたらしいです。」
「スゲぇ~柴田さん。」
「褒めても手加減せんけぇの。」
合宿初日の夕飯は、柴田の意外な一面で大層盛り上がったのだった。
時計の針が、11時を指そうとしていた。
「今日はこの辺にして、続きは明日しましょうか。初日に飛ばしすぎても疲れますよね。」
明日は休みだから、一日中勉強時間に充てられる。早めに切り上げて体力を温存しようと〇〇は終了を宣言した。
「長かった・・・」
「お疲れさまでした、先輩。」
ハグのお陰か柴田の喝?のお陰か、だいぶ真一郎は集中力を維持できるようになってきていた。順調な滑り出しに〇〇はほっと一安心。
「〇〇、勉強終わったら毎日ひとつご褒美くれよ。」
「へ?」
また突然この人は。どんだけ欲しがりなんだ。〇〇はジトっと真一郎を睨んだ。
「今日ハグしたじゃないですか。」
「アレとコレは別物。ご褒美あったら毎日頑張れる!」
頼む!と拝まれた。〇〇は真一郎のお願いに弱い。都合よく使われているような気がしないこともなかったが・・・しかし、また集中力が切れ切れで課題が進まなくなるのも困る。今日くらいのお願いならまぁいいか。そう思って〇〇は渋々了承した。
「で、どんなご褒美をご所望で?」
「〇〇の部屋が見たい。」
ちょっと意外なお願いに〇〇は目を丸くした。そんなことなら別にご褒美にせずとも普通に見る分には構わないのだが。まぁ、それで明日以降のやる気スイッチがONになるなら安いものだ。
「いいですよ。」
「おぉ!思ったよりもシンプル。」
オフホワイトのクロスにナチュラルカラーを基調とした家具で揃えられた、無駄がない印象の部屋だった。
「物欲もないので、物があまりないだけです。」
真一郎は、逆に〇〇らしい部屋の様子を興味深く見まわした。全身鏡や趣味のギターがあったり、棚の上には目覚まし時計や卓上ランプなど、必要最低限のものが置かれている。ふと、その中に一つのフォトフレームが目に入った。
若い、高校生くらいの男と幼い少女。
「これ・・・」
「その人が、亡くなったお兄ちゃんです。」
先日、真一郎が柴田から聞いた、一番傍で彼女のことを守っていた男。
「透君、か。」
「え?・・・なんで名前。」
「柴田さんから聞いた。」
〇〇は少し驚いた表情で、写真を眺める真一郎を見ていた。まさか柴田が彼のことを話していたとは思いもよらなかった。
「柴田さん、俺のこと透君に似てるって言うんだ。」
「え?」
「〇〇もそう思う?」
〇〇は、言われてみれば笑った顔が似ているかもしれないと思ったが、これまでそんなこと考えたことも無かった。たまに、真一郎が透と同じ台詞を口にすることがあったし、彼のことを兄のように慕っていることは認める。仮に、無意識にでも真一郎を通して透の影を追っていたのだとしたら、これ程失礼極まりないことは無い。だから〇〇は否定したかった。でも、絶対にそんなことは無い。と咄嗟に言い切れる自信もなかった。
「わたしは・・・」
「俺は、透君の代わりになるつもりないから。」
「!」
「俺は、佐野真一郎として、おまえの傍にいて守るんだからな。」
真一郎が何故今そんなことを口にしたのか、〇〇はいまいち彼の意図が読めなかった。だが、普通に考えれば、やはり死んだ人間の代わりだなんて言われていい気はしないし、彼のことだから他にも何か思うところがあるのかもしれない――〇〇は、今思った素直な気持ちを彼に伝えることにした。
「My one and only」
「・・・へ?」
「さっき英文法で出てきたやつ。意味覚えてますか?」
突然、勉強モードに入った〇〇に意表を突かれ、真一郎の思考が止まった。英語は一番苦手教科だった。
「え~っと。なんだったっけ?」
これは明日また復習が必要だな。〇〇がため息混じりの微笑を向けると、その意味を告げた。
「唯一無二。」
「・・・唯一、無二。」
「たった一つの、二つと無い。わたしにとってかけがえのない人。真一郎先輩はそんな存在です。」
誰かの代わりなんかじゃない。誰かが取って代われるものでもない。初めて出会った時からそうだった。別に悩むことではないのに。彼女の中ではとっくに答えは出ていた。
しばし放心していた真一郎が、ふっと動いたかと思うと、〇〇を勢いよく引き寄せて力いっぱい抱き締めていた。
「ひぁあっ!?」
〇〇は突然のことに思わず叫んでしまった。ちょっと骨が軋む音が聞こえてきそうな圧迫感に、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
「せっせんぱ・・・っ苦し・・・!」
「〇〇・・・!」
好きだ!と今度こそ、その気持ちを彼女に伝えようと真一郎が息を大きく吸ったその瞬間、
「お嬢!?大丈夫ですか!?」
バァンッ!と柴田が〇〇の叫び声を聞きつけてノック無しに入ってきた。
「「あ。」」
「ア"?」
深夜にもかかわらず、本日二度目の断末魔が木霊したのだった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
真一郎「・・・」
〇〇「先輩、集中。」
真一郎「だって、柴田さんの視線が・・・穴空きそう。」
〇〇「・・・柴田、仕事はいいの?」
柴田「6日間の俺の仕事は、お嬢の貞操を守ることですから。」
