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本編(完結)
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真一郎が家の戸締りをして回り、居間の前に帰ってくると騒がしい音が聞こえてきた。
あいつら〇〇がいるからって夜更かしするつもりだな。ビシッと言って寝かしつけねーと。と思い、彼が勢いよくふすまを開けると、そこには4人分の布団が仲良く並んでいた。
「・・・は?」
何故ここに布団が。というか、なぜ4人分並んでいるのだ。
よくよく見渡すと、布団の数以上のまくらがそこらかしこに散らかっていて、
「おらぁ!」
「ちょ、万次郎コントロール良すぎ!」
「〇〇ちゃんがんばれー!」
まくら投げ大会が開催されていた。
「・・・・・・おい。」
「あ、先輩ブッ」
万次郎の一撃が〇〇の顔面にクリティカルヒットした。
「っしゃ!」
痛ぁーっと顔面を手で覆いながら悶える〇〇の姿に、真一郎は呆気にとられていた。
「お前ら何時だと思ってんだコラ。」
3人は布団の上に正座させられ、真一郎の説教を受けていた。
「スイマセン。」
「いいじゃん今日はお泊まり会だろ?」
「(コクリ…コクリ…)」
「お泊まり会だろじゃねーわ。さっさと寝ろガキ。」
ゴッと真一郎の鉄拳が万次郎の脳天に直撃した。
「いっー!」
(うわ、痛そ・・・)
〇〇は、意外と力強い真一郎のゲンコツに驚いた。
「〇〇。」
「ひぁっ」
まさか自分にもゲンコツが降ってくるのか。〇〇は急に名前を呼ばれ、かなりビビって体をこわばらせた。
「おまえも早く寝ろ。」
「え?」
そう言うと、真一郎は正座している〇〇の目線を合わせるようにしゃがんだ。
「今日は疲れたろ。こいつらの相手してくれてありがとな。」
「・・・わたしのことは殴らないんですか?」
「は?いや女殴るわけねーだろ。」
あぁそうだった。佐野真一郎とはこういう男だった。いつまでも芯の曲がらない彼を見て、〇〇はその安心感で心が満たされるのを感じた。
「で、なんでここに布団敷いたの。」
「エマちゃんが、わたし一人じゃ寂しいだろうからみんなで寝ようって。」
エマ・・・兄ちゃんが眠れねーだろ・・・
妹のかわいい気遣いに悶々とする兄だった。
「おやすみ、電気消すぞ。」
「おー。」
「はい、おやすみなさい。」
結局、左からエマ、〇〇、万次郎、真一郎の順に川の字で寝ることになった。エマは既に寝落ち、万次郎も布団に入るとウトウトしだしていた。
祖父不在の初めての夜。4人は仲良く床についたのだった。
――電気を消してから20分ほど経った頃。
真一郎は、案の定眠れなかった。弟を挟んで向こう側にいる彼女。意識するなという方が無理な話である。
マンジローはいいな、気楽で・・・。彼がそんなことを考えていると、傍から寝返りを打ったような衣擦れ音が聞こえてきた。
「先輩、もう寝ちゃいました?」
〇〇が真一郎に声をかけた。真一郎は、まさか起きているとは思わずどきりと心臓が跳ねた。今日一日あれだけ動いて、大量のおかずを作るためきっと朝から作業をしていたに違いないのに、すぐ眠りについていなかったことが意外だった。
「・・・眠れねぇの?」
「なんか、興奮しちゃって。今日一日が楽しすぎて。」
「は?」
その寝付けない理由が予想の斜め上を行っていて、真一郎は思わず聞き返してしまった。
「わたし、修学旅行に行ったことがないんです。」
何の前置きもなく話し出す〇〇を、不思議に思いながらも真一郎は黙って耳を傾けた。
「学校じゃあ、いつも浮いてて友達もいなかったし。行ってもきっと一緒だよなって思って参加しなかったんです。なんなら先生たちも、なんとなく来ない方がいいんじゃないかって雰囲気出してたし。」
向こうでは碌なことがなかったと言ってはいたが、本人から具体的な話を聞くのは初めてだった。一歩家を出ればいつもひとりだった彼女を思い、真一郎は胸が痛んだ。
「家族以外の人と一緒にごはん食べて、遊んで、こうやって一緒に寝るのって、こんなに楽しい事なんですね。」
何が気になって眠れないだ。真一郎は自身の下らない邪念を恥じていた。
本当は今回の手伝い、彼は頼むのを一度躊躇った。やろうと思えば自分たちで出来たのだから。だが、〇〇と過ごす時間が少しでも多くなれば、という私情に負けた。そのことを真一郎は少々後ろめたく感じていたが、その行いが間違いだったというわけでもなかったようだ。少しでも彼女の辛い思い出が薄れてくれたなら。
「そっか。よかったな。」
でももう遅いから寝ろ。と言う真一郎に、はい。と微笑み返事をした〇〇は、寝返りを打って布団をかぶりなおした。
自分ももう寝よう。〇〇の声を聞いて大分落ち着いてきた真一郎は、目を閉じると数分と経たないうちに眠りについていた。
日が昇るより先に、真一郎は目が覚めた。
夜明け前独特の空気を感じ、枕元の時計を見るといつも起きる時間より1時間ほど早かった。
今日は休みだし、と2度寝を決め込むことにした彼は、寝返りを打って少し肌寒く感じた自身の身体に布団をかけなおした。
ふと、すぐ傍に気配を感じた。万次郎がまた自分の方に寄ってきたのかと思った真一郎は、布団をかけてやるかと薄目を開けた。だが、そこには幼い弟ではない、予想外の人物が穏やかな寝息を立てていた。
「!!!?!!!」
思わず叫びそうになる口を抑える。隣では万次郎が寝ていたはずなのに、なぜ〇〇がいるのだ。真一郎は、一瞬夢かと疑った。よく見ると、万次郎は〇〇が寝ていたはずの布団でスヤスヤ寝息を立てている。
あいつ、〇〇の方に転がっていったな!と真一郎は状況を理解した。きっと、寝相の悪い万次郎を起こすまいと自分が場所を移動したんだろう。しかし、理解したところで問題は解決しない。
「・・・おまえ、もっと警戒しろよ。」
小声でボヤくと、真一郎はため息をつきながらまくらに突っ伏した。
「・・・・・・」
改めてちらっと顔を見ると、熟睡しているのか起きる気配のない〇〇が、わずかに身体を上下させていた。
「・・・今まで我慢してきたもの、ここでチャラになったか?」
その穏やかな寝顔が、答えのような気がした。
つーかこれ・・・キスできそうだな。と昨晩、自身の邪念を反省したことは、寝て起きると無かったことになっていた。
起きそうにないし、オレめっちゃ頑張ったしちょっとくらいご褒美あってもよくね?という、まだ起きてから完全に覚醒したとは言えない頭で訳の分からない言い分を正当化し、真一郎はとうとう寝息を立てる〇〇に顔を近づけた。
あー〇〇に手ぇ出したら柴田さんに殺されるんだった・・・そう過った殺気も欲望には勝てず、彼は徐々にその距離を縮めていく。ゆっくりと。唇が重なるまであと数センチ―――
「オレのたい焼き返せ――――――!!」
ビクーッ!!!
突然の叫び声に真一郎は全身で跳ねた。そのどら焼きもオレんだ・・・むにゃ。と万次郎が寝言をつぶやいている。
お、おま、・・・っ脅かすな!!とバクバクの心臓を抑え、真一郎がハっとして〇〇へ視線を戻すと、既にその大きな瞳が半分顔を出していた。
「・・・せんぱい・・・?」
寝ぼけ眼の〇〇が、至近距離で真一郎を見つめていた。まさか先ほどの行いがバレていやしないかとヒヤヒヤしていた真一郎だったが、だんだんと意識がはっきりしてきた様子の〇〇が、へらっと笑って
「おはようございます。」
と挨拶を告げたのを見るや否や、僅かに保っていた彼の自制心が飛んだ。先ほどの未遂のせいで、理性もへったくれもなくなっていた真一郎は、両腕を伸ばし勢いのままに〇〇に抱き着こうとした。
「あ!しまった!」
その瞬間、〇〇が叫びながら勢いよく起き上がった。真一郎はスカっと空を切ったかと思うと、彼女が先程まで寝ていた布団にダイブしていた。
「!??」
「柴田に弁当作ってくれって頼まれてたの、すっかり忘れててっ」
いったん戻ってきます!と慌てた様子で告げる〇〇を見て彼は、
「お、おぉ、そうか・・・」
朝から疲労困憊だった。
すっかり日も昇り外が明るくなった頃、軽く身支度を整えた〇〇を見送るため、真一郎も門前まで出てきていた。
「悪い、バイクで送っていけたらよかったんだけど、あいつらいるから。」
「いえ、気にしないでください。」
十分間に合いますから。そう言って〇〇は歩き出した。
「あ、先輩。」
何かを思い出したように振り返った〇〇を、真一郎が不思議そうに見ていると、彼女が苦笑を浮かべながら告げた。
「柴田から伝言預かってたのすっかり忘れてました。」
こいつ物忘れ激しいな。でも、それだけ楽しかったってことなら、まぁいいか。そんな風に考えていた真一郎だったが。
「『今度会ったら覚悟しとけよ』」
先輩なんかしたんですか?無邪気に言う彼女から視線を外し、柴田はエスパーなのか?と肝を冷やしたのだった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
柴田「この間、お前ん家に行くっつってた次の日、お嬢からいつもと違うシャンプーの匂いがしたんだよ・・・」
真一郎「(ギクッ)」
柴田「泊まったよな?」
真一郎「・・・」
柴田「泊まったよなぁア゙?」
真一郎「ハイ、泊マリマシタ。(死んだ)」
