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番外編
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Extra edition2.
Always be my brother
スポーツカー独特の重低音が鳴り響く。真っ赤なボディに丸みをおびたラインが特徴的な車が、男二人を乗せて颯爽と東京の街を駆け抜けていた。
「やっぱ柴田さん、いい趣味してんよなー。」
「広島県人なら、マツダの車に乗らにゃあいけんじゃろーて。」
組長令嬢世話役の柴田は、生粋の広島人。マツダは、広島に本社を構える大手自動車メーカーだ。そんな彼の愛車は、スポーツカーとして当時から根強いファンが多かったマツダRX-7である。
「俺、小学生の時観てたんですよねー。仮面ライダーBLACK RX!」
「あれよぉ、車乗ったらもうライダーじゃねーやろって思うよなぁ。」
ははは!と男同士、狭い車内で話に花を咲かせていた。
ちなみに、真一郎が8歳の頃、仮面ライダーがスポーツカーに乗るという斬新な特撮番組が放送されていた。その車のベースとなったのがRX-7だ。ライダーが車に乗っていいのか?と物議を醸したという曰く付きの番組である。
「そういえば、この前言ってた話ってなんスか?」
先日、真一郎がいい雰囲気になった勢いで〇〇に告白をしようと試みた際、タイミングを見計らったかのようにPHS を鳴らした柴田が、話があるからツラを貸せと真一郎に言っていた。
事あるごとに真一郎には、お嬢に手を出せばコ●す。と脅しをかけてきた柴田であるが、わざわざ時間を取るよう頼んでくることは珍しかった。
「あぁ。お嬢のことでな。」
「・・・俺、やっぱコンクリ詰めにあうんスか。」
「は?お前沈められたいんか?」
「いえ、全く。」
ドラマの見過ぎじゃ。そう言ってゲラゲラ笑った柴田が、ふ、と真面目な顔をして話し出した。
「お嬢から、兄貴がいたって話は聞いとるか?」
「あ、はい。もう亡くなったって。」
「あぁ。若かったよ。18やった。」
「・・・」
「お嬢はよく懐いとってな。透が神保に入ってきてからどこ行くにも一緒やった。」
透・・・〇〇が初めて道場へ遊びに来た時に、虚ろな目でつぶやいた名だ。真一郎はあの時のことを思い出し、やはりあれは死んだ兄の名前だったんだなと思った。
「親父は、お嬢のことは成人したらしっかり堅気として生きていけるように、家の中のこと以外はなるべく干渉せず育てるゆう方針でな。学校で孤立しとったこと、俺らも何となく気づいてはおったが、本人が「大丈夫だ」の一点張りで。たぶん、お嬢なりに親父の考えを汲んでのことじゃったんやろうが。俺らもそれ以上は手ぇ出せんくてな。」
「いつ頃から・・・だったんですか。」
「お嬢が8歳くらいだったか。その頃から傷つくって帰ってくるようになった。」
「そこまで分かってて、なんで親父さん動かなかったんですか。」
「ヤクザの自分が手を出せば、お嬢が学校に行けなくなる思うとったんじゃろうな。」
だからって娘だぞ。そのまま放っておいていい理由にはならないだろ。当時の彼女の心情を思って、真一郎はやるせなかった。
「お嬢が、泣きついてでもきてくれればまだ俺らも動きやすかった。親父のことも説得できたかもしれねぇ。・・・あの子は優しすぎる。」
真一郎は知っている。彼女はいつだって他人の心を読んで行動している。その人柄で、今周りの人間から信頼を得ていることも。
「そんな時、透がやってきた。あいつは、両親がつくった借金のせいでヤミ金から追われて、両親と妹を殺されとった。頼る親戚もいなくて路頭に迷ってたところを、親父が拾ってきたんよ。」
「その透君も壮絶ですね・・・。」
「あぁ。身も心もズタズタだったろうにな。だが、親父のおかげか、うちに来た頃には吹っ切れた顔しとった。明るくてお調子者でな。俺の弟分として面倒見てやっとった。」
遠くに視線を向け懐かしんでいる柴田の姿を横目に、真一郎は、改めて神保の人間の人情を垣間見ていた。こんなあったけぇヤクザもいるんだな、と。そんな場所で育った〇〇が、グレることなく真っ直ぐに育った理由が嫌というほど分かった。
「いい奴じゃった・・・だから、あんな胸糞悪ぃ死に方、この世界に入ってから後にも先にもあれだけよ。」
「胸糞悪い・・・?」
柴田は、少しの沈黙の後、苦汁を飲まされたような顔で口を開いた。
「あいつは、他のシマのヤツに撃たれて死んだ。お嬢の目の前で。」
―――
――
―
(今日は、下駄箱に犬のフン入れられただけで済んだな。)
〇〇は下校途中、今日の出来事を思い返していた。無視やちょっとした嫌がらせは日常茶飯事。最悪、突き飛ばされたり罵倒されたりする日もあるが、所詮は小学生のやること。慣れれば受け流せるようになっていた。
(うちに帰ったら、笑顔。)
〇〇は、家族には努めて元気な姿を見せるように心がけていた。そうしなければ、みんなを、父を困らせることになるから。彼女は、家路につくまでの時間で沈む心を切り替えていた。
「ただいまー。」
玄関の戸を開け、〇〇はみんながいつも集まっている「事務所」と呼ぶ部屋へと向かった。
「今帰っ」
「ん?」
ガラッと部屋の戸を引くと、〇〇の目の前に見知らぬ背中があった。
毎日見ていれば後ろ姿で誰だか一目瞭然だった彼女は、家族以外の人物の登場に大層驚いた。
男だった。しかも若い。柴田達とは相当離れた年齢であることは分かった。振り返りこちらを見てきたその男に、〇〇はびくっと肩を震わせた。
「お嬢!おかえり。」
柴田が奥から声をかけてきて、はっとして〇〇はそちらへ視線を向けた。
「柴田っ変な人がいる!」
〇〇がそう叫んだ瞬間、その場にいた他の組員もそろってワッと爆笑した。
「変な人だってよ!」
「いきなりヤラれたな~透~」
〇〇は訳が分からなかったが、みんなが笑っているということは、目の前の男は敵ではなさそうだということはとりあえず理解した。
呆気に取られていた〇〇の前に、透と呼ばれた男がしゃがんで〇〇に目線を合わせてきた。
「はじめまして、お嬢。俺は、会沢 透。今日から神保組で世話になることになったんだ。よろしくな。」
そう自己紹介をしてきた透は、とてもやさしい笑顔をしていた。
「よ、よろしく、」
おねがいします。とやっとのことで〇〇が挨拶を返すと、透は人懐っこい笑顔で〇〇の頭を撫でた。
「いてっ」
〇〇は、洗面所の鏡で打ち付けたところを見ていた。今日は、横から突き飛ばされ踏ん張りがきかず、少し派手に痣ができてしまった。
(まぁ、この位置なら服で隠れるし問題ないな。)
そのうち治る。そんなことを考えていた時、突然後ろから声をかけられた。
「お嬢、その痣どうした?」
〇〇は心臓が跳ねた。振り向いたところには透がいた。〇〇は、Tシャツを脱いで袖のないインナー姿だった為、隠そうにも隠せず焦った。
「肩、腫れてるじゃねーか!」
「あ、こ、これは今日、体育のリレーで転んでっ」
突然現れた透に、〇〇は焦りながらなんとかごまかそうとそれらしい状況説明を口にした。
「リレー?リレーで転んでそんなとこ怪我しねぇだろ。」
背中寄りの肩口。前に転んでそんな位置を打ち付けるのは不自然。〇〇はしまったと思ったが、透の強い眼光に次の言葉が出なかった。
「ちょっと待ってろ。」
そう言うと、透は洗面所を後にした。
1分程して戻ってきた彼の手には、救急箱と簡易イスがあった。
「ここ座りな。」
透は、傷の手当てを始めた。〇〇は抵抗する間もなく、あれよあれよと彼の言うままに従うしかなかった。肩に触れる透の手は、温かかった。
「よし、こんなもんだな。」
「あ、ありがとう。」
「で?誰にやられた?」
「!」
〇〇は、こんな尋問めいたこと誰にも言われたことが無かったので驚いた。みんな、きっと父親の考えに従ってのことなのだろうと分かっていた。だけど彼は違った。入ってきたばかりだから?でも、自分のことはきっと柴田から聞いているはず。
そんな考えを巡らせながら、〇〇はどう答えるべきか分からず、次の言葉がなかなか出てこなかった。
「・・・兄貴たちは、親父に逆らえねーのかもしれんけど、俺は違う。」
「え・・・?」
「俺は17。お嬢とは一番歳が近い。」
「そ、なんだ。」
「だから、俺には言えよ。」
「!?」
「今から、俺は〇〇の兄貴な。」
「へ?」
突然何を言い出すのだ。こんなに他人がぐいぐい来ることなんて今まで無かった〇〇は、未知の展開に頭の中がパニックになっていた。
「兄ちゃんが、おまえのこと守ってやる。」
「お兄ちゃん・・・」
「だから、もう我慢しなくていい。」
その言葉を聞いた瞬間、〇〇の目から大粒の涙が流れた。他の組員なら、絶対に大丈夫だと言い切ることができたはずなのに、透にはそれができなかった。
それは何故なのか、答えが出ないまま〇〇は彼の前で声を張り上げて泣いた。
Always be my brother
スポーツカー独特の重低音が鳴り響く。真っ赤なボディに丸みをおびたラインが特徴的な車が、男二人を乗せて颯爽と東京の街を駆け抜けていた。
「やっぱ柴田さん、いい趣味してんよなー。」
「広島県人なら、マツダの車に乗らにゃあいけんじゃろーて。」
組長令嬢世話役の柴田は、生粋の広島人。マツダは、広島に本社を構える大手自動車メーカーだ。そんな彼の愛車は、スポーツカーとして当時から根強いファンが多かったマツダRX-7である。
「俺、小学生の時観てたんですよねー。仮面ライダーBLACK RX!」
「あれよぉ、車乗ったらもうライダーじゃねーやろって思うよなぁ。」
ははは!と男同士、狭い車内で話に花を咲かせていた。
ちなみに、真一郎が8歳の頃、仮面ライダーがスポーツカーに乗るという斬新な特撮番組が放送されていた。その車のベースとなったのがRX-7だ。ライダーが車に乗っていいのか?と物議を醸したという曰く付きの番組である。
「そういえば、この前言ってた話ってなんスか?」
先日、真一郎がいい雰囲気になった勢いで〇〇に告白をしようと試みた際、タイミングを見計らったかのように
事あるごとに真一郎には、お嬢に手を出せばコ●す。と脅しをかけてきた柴田であるが、わざわざ時間を取るよう頼んでくることは珍しかった。
「あぁ。お嬢のことでな。」
「・・・俺、やっぱコンクリ詰めにあうんスか。」
「は?お前沈められたいんか?」
「いえ、全く。」
ドラマの見過ぎじゃ。そう言ってゲラゲラ笑った柴田が、ふ、と真面目な顔をして話し出した。
「お嬢から、兄貴がいたって話は聞いとるか?」
「あ、はい。もう亡くなったって。」
「あぁ。若かったよ。18やった。」
「・・・」
「お嬢はよく懐いとってな。透が神保に入ってきてからどこ行くにも一緒やった。」
透・・・〇〇が初めて道場へ遊びに来た時に、虚ろな目でつぶやいた名だ。真一郎はあの時のことを思い出し、やはりあれは死んだ兄の名前だったんだなと思った。
「親父は、お嬢のことは成人したらしっかり堅気として生きていけるように、家の中のこと以外はなるべく干渉せず育てるゆう方針でな。学校で孤立しとったこと、俺らも何となく気づいてはおったが、本人が「大丈夫だ」の一点張りで。たぶん、お嬢なりに親父の考えを汲んでのことじゃったんやろうが。俺らもそれ以上は手ぇ出せんくてな。」
「いつ頃から・・・だったんですか。」
「お嬢が8歳くらいだったか。その頃から傷つくって帰ってくるようになった。」
「そこまで分かってて、なんで親父さん動かなかったんですか。」
「ヤクザの自分が手を出せば、お嬢が学校に行けなくなる思うとったんじゃろうな。」
だからって娘だぞ。そのまま放っておいていい理由にはならないだろ。当時の彼女の心情を思って、真一郎はやるせなかった。
「お嬢が、泣きついてでもきてくれればまだ俺らも動きやすかった。親父のことも説得できたかもしれねぇ。・・・あの子は優しすぎる。」
真一郎は知っている。彼女はいつだって他人の心を読んで行動している。その人柄で、今周りの人間から信頼を得ていることも。
「そんな時、透がやってきた。あいつは、両親がつくった借金のせいでヤミ金から追われて、両親と妹を殺されとった。頼る親戚もいなくて路頭に迷ってたところを、親父が拾ってきたんよ。」
「その透君も壮絶ですね・・・。」
「あぁ。身も心もズタズタだったろうにな。だが、親父のおかげか、うちに来た頃には吹っ切れた顔しとった。明るくてお調子者でな。俺の弟分として面倒見てやっとった。」
遠くに視線を向け懐かしんでいる柴田の姿を横目に、真一郎は、改めて神保の人間の人情を垣間見ていた。こんなあったけぇヤクザもいるんだな、と。そんな場所で育った〇〇が、グレることなく真っ直ぐに育った理由が嫌というほど分かった。
「いい奴じゃった・・・だから、あんな胸糞悪ぃ死に方、この世界に入ってから後にも先にもあれだけよ。」
「胸糞悪い・・・?」
柴田は、少しの沈黙の後、苦汁を飲まされたような顔で口を開いた。
「あいつは、他のシマのヤツに撃たれて死んだ。お嬢の目の前で。」
―――
――
―
(今日は、下駄箱に犬のフン入れられただけで済んだな。)
〇〇は下校途中、今日の出来事を思い返していた。無視やちょっとした嫌がらせは日常茶飯事。最悪、突き飛ばされたり罵倒されたりする日もあるが、所詮は小学生のやること。慣れれば受け流せるようになっていた。
(うちに帰ったら、笑顔。)
〇〇は、家族には努めて元気な姿を見せるように心がけていた。そうしなければ、みんなを、父を困らせることになるから。彼女は、家路につくまでの時間で沈む心を切り替えていた。
「ただいまー。」
玄関の戸を開け、〇〇はみんながいつも集まっている「事務所」と呼ぶ部屋へと向かった。
「今帰っ」
「ん?」
ガラッと部屋の戸を引くと、〇〇の目の前に見知らぬ背中があった。
毎日見ていれば後ろ姿で誰だか一目瞭然だった彼女は、家族以外の人物の登場に大層驚いた。
男だった。しかも若い。柴田達とは相当離れた年齢であることは分かった。振り返りこちらを見てきたその男に、〇〇はびくっと肩を震わせた。
「お嬢!おかえり。」
柴田が奥から声をかけてきて、はっとして〇〇はそちらへ視線を向けた。
「柴田っ変な人がいる!」
〇〇がそう叫んだ瞬間、その場にいた他の組員もそろってワッと爆笑した。
「変な人だってよ!」
「いきなりヤラれたな~透~」
〇〇は訳が分からなかったが、みんなが笑っているということは、目の前の男は敵ではなさそうだということはとりあえず理解した。
呆気に取られていた〇〇の前に、透と呼ばれた男がしゃがんで〇〇に目線を合わせてきた。
「はじめまして、お嬢。俺は、会沢 透。今日から神保組で世話になることになったんだ。よろしくな。」
そう自己紹介をしてきた透は、とてもやさしい笑顔をしていた。
「よ、よろしく、」
おねがいします。とやっとのことで〇〇が挨拶を返すと、透は人懐っこい笑顔で〇〇の頭を撫でた。
「いてっ」
〇〇は、洗面所の鏡で打ち付けたところを見ていた。今日は、横から突き飛ばされ踏ん張りがきかず、少し派手に痣ができてしまった。
(まぁ、この位置なら服で隠れるし問題ないな。)
そのうち治る。そんなことを考えていた時、突然後ろから声をかけられた。
「お嬢、その痣どうした?」
〇〇は心臓が跳ねた。振り向いたところには透がいた。〇〇は、Tシャツを脱いで袖のないインナー姿だった為、隠そうにも隠せず焦った。
「肩、腫れてるじゃねーか!」
「あ、こ、これは今日、体育のリレーで転んでっ」
突然現れた透に、〇〇は焦りながらなんとかごまかそうとそれらしい状況説明を口にした。
「リレー?リレーで転んでそんなとこ怪我しねぇだろ。」
背中寄りの肩口。前に転んでそんな位置を打ち付けるのは不自然。〇〇はしまったと思ったが、透の強い眼光に次の言葉が出なかった。
「ちょっと待ってろ。」
そう言うと、透は洗面所を後にした。
1分程して戻ってきた彼の手には、救急箱と簡易イスがあった。
「ここ座りな。」
透は、傷の手当てを始めた。〇〇は抵抗する間もなく、あれよあれよと彼の言うままに従うしかなかった。肩に触れる透の手は、温かかった。
「よし、こんなもんだな。」
「あ、ありがとう。」
「で?誰にやられた?」
「!」
〇〇は、こんな尋問めいたこと誰にも言われたことが無かったので驚いた。みんな、きっと父親の考えに従ってのことなのだろうと分かっていた。だけど彼は違った。入ってきたばかりだから?でも、自分のことはきっと柴田から聞いているはず。
そんな考えを巡らせながら、〇〇はどう答えるべきか分からず、次の言葉がなかなか出てこなかった。
「・・・兄貴たちは、親父に逆らえねーのかもしれんけど、俺は違う。」
「え・・・?」
「俺は17。お嬢とは一番歳が近い。」
「そ、なんだ。」
「だから、俺には言えよ。」
「!?」
「今から、俺は〇〇の兄貴な。」
「へ?」
突然何を言い出すのだ。こんなに他人がぐいぐい来ることなんて今まで無かった〇〇は、未知の展開に頭の中がパニックになっていた。
「兄ちゃんが、おまえのこと守ってやる。」
「お兄ちゃん・・・」
「だから、もう我慢しなくていい。」
その言葉を聞いた瞬間、〇〇の目から大粒の涙が流れた。他の組員なら、絶対に大丈夫だと言い切ることができたはずなのに、透にはそれができなかった。
それは何故なのか、答えが出ないまま〇〇は彼の前で声を張り上げて泣いた。
