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本編(完結)
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生ぬるい夜風が頬を掠めていく中、〇〇は集団から離れたところで腰を下ろし、静かにその様子を見ていた。
どこどこのヤローが最近幅きかせてるだの、この間シメたチームが奇襲しかけてくるらしいだの、基本は喧嘩の話ばかりが聞こえてくる。
(・・・。)
やはり不良のやることはよく分からない。そんなことを思いながら、〇〇は先ほどのやり取りを思い出していた。
―――
――
―
ハチャメチャにはしゃぐ集団を遠い目で見ながら、〇〇は真一郎に告げた。
「先輩のせいですよ。ちゃんと訂正してくださいね。」
「・・・・・・ごめん。」
これでまた変な輩に絡まれたらどーしてくれるんですか!
バイクにも無理やり乗せられるし!
〇〇は溜めに溜めていた鬱憤を、これでもかと真一郎にぶつけていた。
叱られた子犬のようにしょぼくれた真一郎が、〇〇に謝罪をする。
今日はあなたに振り回されてばっかり!
喉元まで出かかった最後の言葉をやっとのこと飲み込んだところで、この場に似つかわしくない笑い声がすぐ傍で聞こえた。
「はっはっはっは!!なんだ真、俺もやっとお前に女ができたんだとばかり思ってたのに。」
ちげぇのか。と先ほど〇〇を見下ろしてきた彼が大笑いをしていた。
意外と豪快に笑う彼を見て、〇〇は少し驚いて目を丸くした。
「〇〇っつたか?俺は副総長の明司武臣。」
「あ、どうも。神保〇〇です。」
手を差し出しながら、明司は名乗った。
今日は突然お邪魔してすみません。と〇〇はその手を取り、とりあえず部外者が乗り込んできたことに謝罪を入れる。
(なぜに私が謝らなければならんのだ?)
思わず流れで口にしたものの、〇〇は腑に落ちなかった。
「ふっ。さっきまでの怯えたツラが消えたな。」
「え?」
お祭り騒ぎの空気と真一郎への怒りで、いつのまにか心臓のバクバクも消えていたようだ。
そう思えば、落ち着いてきた途端に疲れがどっと出て、〇〇は息を深く吐いた。
「よし。とりあえず始めるぞ、真。」
訂正は終わった後な。明司はそう言って集団のほうへ向かっていった。
「〇〇、終わったら声かけるからあの辺で待ってて。」
右手でゴメンのジェスチャーをしながらそう一声かけると、真一郎も明司に続いて歩き出す。
先ほどまでの騒ぎから少し落ち着きを見せた集団―――その前に彼らが立つと、一瞬で静寂が訪れる。
皆が真一郎へと視線を向け、誰一人として乱すものはいなかった。
〇〇は、自分はなんて不謹慎なことを考えているのだろうかと思ったが、その光景がまるで神に祈りを、贖罪を誓う人々の集いを見ているようだった。
皆が真っ直ぐ、決してブレることなく真一郎への信頼と忠誠をその眼差しで表している。
風にたなびく彼の特攻服姿が、その場には似つかわしく無い聖人のように見えた。
―
――
―――
(やっぱさっきのは無し。)
本題のテーマが聞こえてきだした途端、〇〇はやはり先ほどの不謹慎な例えはなかったことにした。
そんなことを暇つぶしがてら考えているうち、割と早く結論が出たらしく、話し合いは終了したようだ。
解散の前に、とちゃんと真一郎が先ほどの誤解を訂正しているのが聞こえてくる。暴走族総長の女なんて、これほどトラブルに巻き込まれる可能性大なネタはないだろう。ただでさえ、屋上であのようなことがあったのだ。できることなら御免被りたかった。
「なぁんすか~、彼女さんじゃないんすかぁ~」
「総長ー!男見せろー!」
先ほどとは打って変わって野次が飛び交う。
真一郎は、「うっせ!」と苦笑を浮かべていた。
「〇〇!ごめん待たせた。」
真一郎が〇〇の傍にやってきて、ちゃんと訂正してきたから。と誤解を解いた報告も忘れずに告げる。
「先輩。今度銀座のスタバ2杯おごりですからね!」
と有無を言わさぬ圧で告げる〇〇に、「お、おぉぉ。銀座??」とぐぅの根も出ない真一郎の様子を見て、また明司が爆笑するのだった。
真一郎と違って、明司という男は落ち着き常に冷静な空気をまとっていた。今は何やらツボに入ったのか賑やかにしているが、第一印象は表情に隙がなく、キレ者の策士。〇〇の直感だった。こういう男は敵に回すと後が怖いものである。
「〇〇、コイツも悪気はなかったんだ。もう許してやってくれ。」
「大丈夫です。コーヒー2杯でチャラにする約束取り付けました。」
その返答は、また明司の笑いを誘ったようで。
「真、面白いやつ見つけてきたなぁ。」
「お前それ褒めてる?」
褒めてる褒めてる。ケラケラ笑って告げる明司を見て、遠慮のない関係であろうことが覗える様子に、〇〇は二人のやり取りをとても心地よく感じていた。
少しだけ、この二人がトップに立つチームはどんな感じなんだろうか、と興味が出てきたことは内緒だ。
3人で話をしていると、他のメンバーたちが各々のバイクにエンジンをかけ排気音を鳴らしだした。いわゆるご近所迷惑な深夜の騒音である。
「〇〇、チョッカンコールって知ってるか?」
突然、真一郎が質問を投げかけてきた。
聞きなれない単語に、〇〇は質問に質問で返すしかなかった。
「チョッカンコール??」
キン〇ョールの親戚ですか?と告げると、二人から大爆笑された。
そこまで笑わんでもいいやんか。〇〇は冷めた目で二人を睨んだ。
「˝直管˝コール。エンジンを空吹かしさせて排気音を鳴らすことだよ。」
今あいつらがやってるやつ。と真一郎が説明する。
(あぁ、あれチョッカンコールって言うんだ。)
へぇ~と呟きながら少し頬を緩ませた〇〇を見て、何か閃いた顔をした真一郎が口を開いた。
「〇〇もやってみる?」
先ほどとは打って変わって、なんだって?という驚愕の表情をする彼女を見て、また真一郎が笑った。
「ほら、何事も経験だろ?」
腕を引いて、真一郎は自分の愛機へ誘導する。
〇〇が少しの期待を込めて明司に助けを求め視線を向けたが、彼は肩をすくめるだけで傍観を決め込んだ。
(ですよね。無駄な努力だった。)
「はい、乗ってみて。」
(またこれに乗らなければいけないのか?)
先ほどの悪夢がよみがえる。いや、真一郎相手なのだから真正面から全力で断ればいいのだ。先程散々な目にあったばかりではないか。そう思った〇〇だが、彼の妙な期待の眼差しを受けてなぜか断れなかった。
先程は言いすぎたもしれない・・・という罪悪感もあって、とりあえず〇〇は言われるがまま跨ぐ。
「さっきからセルの調子悪くてさ、キックでかけるからここの―――」
スラスラとエンジンのかけ方を説明する真一郎は、とても楽しそうだった。
バイクが好きだとは聞いていたが、ここまで子どもがお気に入りのおもちゃについて熱弁するような様を見るのは初めてだった。
本当に好きなんだな。と、彼の新たな一面を目の前に、〇〇は微笑ましく思った。
「じゃ、エンジンかけるな。」
真一郎が倒れないよう支えながらキックペダルを力強く踏んだ。
「わっ」
ブルンッと鳴ったと同時に機体が揺れる。先ほど乗ってきたばかりだというのに、しっかりハンドルを握って運転席に乗り動かすのとは全く違った。〇〇は、走らせてもいないのにまるでバイクと一体になったような不思議な気分を味わった。
「おぉ~」
「どう?後ろに乗ってた時と全然違うだろ?」
「はい!」
「んじゃ、吹かしてみ。」
さっき言った右のアクセルスロットル回せば鳴るよ。
と〇〇が言われた通りに操作すると、聞き覚えのある轟音が足元後方から鳴り響いた。
「うるっっっさ!!」
ははは!と真一郎の笑い声・・・と同時に複数人の声も交じって聞こえてきた。
は?と空耳を疑った〇〇が目線を上げると、いつのまにか多数のギャラリーに囲まれていた。
「ええ・・・」
「女の子がコールする姿なんて中々見れねぇからな。」
みんな珍しがってんだよ。真一郎の言葉に、思わずわたしは見世物かい。とツッコみを入れた。
「〇〇ちゃん!俺の真似してみて!」
声のした方を振り向くと、バイクに跨り先ほどからコールを鳴らしていた黒龍メンバーの少年が声をかけてきた。
「ま、真似?とは??」
すかさずその少年がコールを鳴らしはじめ、〇〇は何となく聞き覚えのあるリズムに耳を傾けた。
――今までただの騒音だと思い気にも留めていなかったが、よくよく聴けば規則的なリズムを刻んでいる。バイクって楽器のようなものなのかも?
曲を奏でるそれと同じなら。そう思えば、〇〇は少し楽しくなってきた。
「えーっと、・・・」
そのリズムを、頭の中で音符に起こす。速度はアレグロくらいだろうか。そんなことを思いながら、最初は様子を見つつゆっくり、徐々に速度を上げていく。
そのままスロットルを回したり戻したりを繰り返し、〇〇は少年のリズムと一寸の狂いもなく鳴らしてみせた。
「「「・・・・・・」」」
(・・・・・・え?)
コールが終わると、突如ギャラリーが静まり返った。様子を伺うと、皆一様に驚きの表情を見せている。
〇〇は、自分が何かいけないことをしたのか。と集会前、皆の前に突き出されたあの場面を思い出し焦った。失態を起こしていたのだとしたら、今度こそタダじゃ済まないのでは!?
そう思い冷や汗だらだらで緊張が走ると、すぐ横に立つ真一郎に視線を向けた。もう頼りはこの人しかない。〇〇は、お助けを!と懇願する眼差しで見つめると、真一郎も目を丸くして〇〇を凝視していた。
「・・・うめぇ。」
「はい?」
うめぇ?思いもよらぬ発言に、〇〇は一瞬何を言っているのか理解できなかった。
どういうことですか?と聞き返そうとしたその時、静まり返っていたギャラリーから大歓声が沸き上がった。
「「「うめぇぇぇぇえ~!!!」」」
「〇〇ちゃん、ほんとにコール初めて???」
「ていうか今のコイツよりいい音出てたぞ!?」
その歓声が耳に届いた瞬間、ようやっと理解した。
どうやら〇〇は、彼らの中の「上手いコール」を鳴らしてみせたらしい。
「そ、それはどうも・・・ありがとう、ございます?」
予想外の反応に狼狽えつつ、お褒めいただいたことに礼を述べておいた。
「すげぇよ〇〇!次クラッチも入れてやってみろって!」
真一郎が〇〇の肩に手をかけ、キラキラした目で興奮気味にアンコールを要求してきた。
「え、ちょ、先輩落ち着いて。クラッチ?でどうなるんですか?」
自分を置いて勝手に盛り上がる不良たちのおかげで、すっかり冷静を取り戻した〇〇であった。
ーーー卍おまけ卍ーーー
明司「〇〇、楽器でもやってたの?」
〇〇「あ、はい。ギターを少し。歌うのも好きなのでリズム感には自信あります。」
明司「ほぉ。」
〇〇「あ。クラッチを使うと音の高さが変わるんですね。」
真一郎「なぁ〇〇!ウチのコール担当になっt」
〇〇「なりません。」
