ゆるゆる短編集〜
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何でもない普通の日。まぁ、私が生まれた日でもある。あんまり実感ないけど。
子供の時から、自分の誕生日を大袈裟に捉えたことはあまりない。ただの普通の1日でしかない気がする。あまり家族以外の友人に、自分の誕生日を伝えることもなく、ぼんやりといつも通りの1日を過ごす方が、自分の性に合っている気がした。
……そんなだから、すっかり忘れていた。
「おはよ、ろま……ふぁ……」
昼過ぎに起きて、あくびをしながらリビングに入る。
「ん、カプチーノ入れるか?」
「ありがと……」
寝ぼけたままソファに座ると、ロマがカプチーノを淹れたマグカップを手渡した。
「熱いぞ」
「ん…あちっ」
「ほーら言っただろーが」
ソファに座る私の横にロマが座り、なんとなく並んで休日のテレビ番組を見る。
「……あのさ」
「おー」
「今日誕生日なんだよね」
「…………は?」
「まぁそれだけなんだけど」
また一口、湯気が立ち上っているカプチーノを啜る。と思ったら、ロマが横で立ちあがった。
「はぁああああ!?!?!?」
「わっ」
危うく零しそうになったマグカップを置く。
「お、お前……なんでもっと早く言わねーんだよ、このやろー!!」
「え?」
「ああもう、くそっ……」
慌てたようにロマが携帯を見る。
「いや、まぁ……大袈裟にすることでもないかなって」
「ほんっとお前……いい加減にしろよ!!」
「……あー…」
焦りながらレストランの予約画面をスクロールするロマは、こう見えて記念日も少し気にするタイプなのをすっかり忘れていた。今日で同棲一ヶ月だな、とか言われて、突然ネックレスを贈られたことをぼんやり思い出す。
「くっそ、ケーキと飯と……あと…あーもう!おい!家出る支度しろ!」
「え?」
「早く着替えろって言ってんだよ!!」
ロマが自室に駆け込む。私はゆっくりとカプチーノを啜ってから、ソファを立ちあがった。
「どこか行きてえとこあるか」
「んー……ロマといれるだけでいいからなー」
「そーゆーこと聞いてんじゃねえっての……」
照れた顔のまま私の腕を掴んで、ズカズカと歩いている。
「仕方ねぇ、いいか、欲しいのあったらすぐ言えよ」
「うーん……」
「うーんじゃねえ、返事しろ」
「はい……」
歩きながら、ロマが花屋の前で立ち止まる。
「ちょっとここで待ってろ」
「え、うん」
花屋に入ってから数分も経たないうちに、ロマはデイジーと薔薇の入った可愛らしい小さな花束を持ってきた。
「ん、これ持て。よし、次行くぞ、このやろー」
「え? あ、ありがと……」
歩く足を速めているロマに手を引かれたまま、私は花の匂いを吸い込んでいた。
そのまま、服屋の方へロマが入っていく。私はあまり普段入らない、お高めな服が並ぶ店内で、思わず値段を流し見て硬直した。
「……いや、ロマ、無理しないでいいからね」
「ん、アクセサリーのほうが良かったか?」
「違う、そういうことじゃ……」
これとかいいじゃねえか、と言うと、焦ったままの私の前にハンガーごと引き出して、私と服を見比べる。
「よし、これにするか」
「ろ、ロマ?」
そのままかごに突っ込み、スタスタとレジまでロマが持っていく。かなり好みのワンピースで、なぜわかるんだと私は首を傾げた。
「ほらよ」
「あ、ありがと……」
渡された紙袋を手首にかける。花束を持ったまま、また手を引かれて店の外に出た。
「……お前、甘いもん好きだよな」
「え?」
そう言うと、迷いなくロマが私の手を引いて歩き出す。
「ちょ、どこ行くの」
「バル」
ロマに手を引かれて少し歩くと、バルが見えてきた。
「私ここのは初めて来たけど……」
「そーなのか?」
店内に入ると、美味しそうなパニーニがショーケースの中で積み上がっている。
「このセサミの生地のやつにしようかな、ほうれん草とクリームのやつ」
「ん」
ロマがパニーニを2個買って、良さげなカウンターに2人で並ぶ。
「いただきます……」
花束と服の入った紙袋を持ったまま、パニーニを一口食べる。
「ん!美味しいねこれ」
「そーかよ」
そう言うと、ロマは雑に大きな口でパニーニに齧りついた。
「今日はありがと、誕生日だからって服も花も……」
「あ?何もう終わったみてえなこと言ってんだよ」
「え、まだ終わりじゃないの」
ロマは私の口の端に口づけてから、私のパニーニも一口食べた。
「ん、こっちもうまいな」
少し顔が熱くなるのを感じたまま、私は顔を背けた。
「なーに照れてんだよ、顔赤くなってんぞ〜」
「そーやってすぐからかって……」
パニーニを食べ終わると、ロマがカンノーリとイタリアンコーヒーまで持ってきた。
「美味しい! 周りがサクサクしてる」
「ふっ、だろ?」
「そーだよね、ロマってカンノーリ一番好きだもんね」
また一口食べると、ロマがドヤ顔になる。
「俺が選んだんだから、美味いに決まってんだろこのやろーっ」
「ふふ、ドヤ顔可愛い」
「可愛い上に優しい彼氏様で良かったな?」
ロマが嬉しそうに覗き込んでくる。ロマの機嫌があまりにもいいので、思わず吹きだして笑ってしまうのだった。
そのあとは、好きなところを回ったり海を軽く見に行ったり、手を繋いだまま色んなところを見て歩いたのだけど……帰りに連れて行かれた場所は、美味しいご飯が沢山あるトラットリアだった。
「ナポリピッツァ美味しい〜…」
「ふ、そーかよ」
見つめ合いながら笑い合って、恥ずかしくなってまた目を背ける。ロマは私のほっぺをつん、と指でさした。
「……」
「な、なに……?」
「良い誕生日になったか?」
「うん、最高の日になったよ? ロマのおかげで」
「そーかよ」
嬉しそうに笑って、ロマが私の頭をぽんぽんと叩いた。
会計を済ませて外に出る。手を繋いだところがあったかくて、嬉しくて、手を握る力を少し強めると、ロマも手を強く握り返してくれた。
「ふふ、楽しかったな〜」
「俺の誕生日はもっと祝えよ、約束だかんな」
「これより盛大にするの? ふふ、頑張る」
「おーおー、頑張れよっ……で、俺の誕生日はいつかわか……」
「3月17日でしょ?」
被せるように言うと、ロマが嬉しそうに笑う。でも、すぐ気まずそうに目をそらした。
「そ、その……今年はちょっと忘れてたっつーか、ほら、最近忙し……まぁ忙しくはねえけど、ら、来年は覚えとくし……」
「なんの話?」
「ちぎっ……ま、まぁ!来年も楽しみにしろよ」
「うん、ふふ」
こんな風に楽しいなんて、誕生日も悪くないなと、ふと思った。
家に帰って、ソファに座り花束の香りを嗅いでいると、横からロマが抱きしめてきた。
「〇〇〜……」
「ふふ、なーに」
「……Buon compleanno」
ちゅ、と頬に口づけられる。
「ありがと……」
「ん」
短く返事をすると、ロマが誕生日ケーキを机に置いてから、ソファにどかりと座った。
「はぁ〜……」
さっき、ちょっとだけ出ると言って外に出たロマが買ってきた、小さめのショートケーキ。私が大好きな苺がたくさん乗っている。
「嬉しかったよ、今日……いろいろしてくれて」
「感謝しろよ」
「うん、ありがとう」
ロマはケーキを雑に切って、半分だけ皿に乗せて手渡してくる。ケーキを食べながら、ロマの誕生日には何をしようかな……なんて、その日が楽しみになってきていた。
「なぁ」
「んー?」
「ずっと、俺に祝わせろよ」
なにそれ、と思ってロマの方を見ると、口に一口、あーんと苺がついたフォークが向けられている。
「ん、あむ」
もぐもぐと咀嚼していると、ロマがどこか寂しげに言った。
「あと何回祝えんのかって考えると、やっぱ、お前の誕生日は貴重だろ?」
貴重かなぁ、と思って口を開こうとすると、またケーキが口の前に差し出され、思わず口に入れてしまう。
「だから、長生きしろよ」
大きなケーキを咀嚼していて何も言えない私の頭に、ぽんぽんと優しく手を乗せる。酷く幸せな気持ちになって、私はケーキを片手に乗せたまま、ロマを抱きしめた。