【異星人外交官】ライター

 発着床を捉えた超望遠カメラは、直方体の光る物体を捉えていた。
「どうやら、これはライターだな。昔からあるZIPPOのライターだ。誰か置き忘れたのか・・・」
 発着床には、金属の四角いケースに、上部がアーチを描く金属のふたがついたライターが正立した状態で置かれていた。
「所長、そんなはずはありません。そもそも発着床は立ち入り禁止です。人が立ち入ったら即座に警報が出たはずですよ。」
「ほかの可能性は・・・」
「朝夕、自動清掃ロボットが発着床の砂埃を掃除しますので、そのロボットが落としたという可能性はあります。しかし、ロボットはステーションでの充電から清掃作業完了まで、完全自動なので誰かがライターをロボットの上に載せるということも不可能です。」

「鳥がくわえてきて、上空から落としたとか・・・」
「だとすれば、多少変形するはずですし、立った状態で止まる確率は低いでしょうね。」
 発着床は異星船の重量を支えることができるようかなり強固に作られており、高所からライターを落とせば、ケースが少なからず変形することが考えられた。
「うーん、どういうことだ。」

 二人が頭を抱えたそのとき、警報と同時に、ライターの近くに真っ赤な物体が現れた。
「いったい、何が起こった?」
「所長、昔の自動車らしきものが突然現れました。妙にひらべったいですね。」
「これは、往年のスーパーカー『ランボルギーニ・カウンタックLP500』だ。昔はみんなあこがれたものだ・・・。いやいや、感心している場合ではないな。これは異星人が絡んでいる可能性が高い。すぐにエージェントロボットを出してくれ。」

 異星人のコミュニケーション手段は、強力なレーザーであったり、マイクロウェーブであったり、あるいは突然針を突き刺してきたりと、生身の人間では一瞬で絶命するものもあった。このため、人間を模して、2足歩行で、2本の腕を持ち、頭部に視覚や聴覚のセンサー類、出力用のスピーカーを装備したエージェントロボットを異星人に対峙させるようにしていたのだ。

 エージェントロボットは発着床の端からエレベーターでせり上がってきて、発着床を歩いてライターと車の方へ近づいた。そして、1mほどに迫ったとき、新たな物体が突然現れた。所長と部下の二人は同時につぶやいた。
「エージェントロボット・・・」
 それは、外交機関が用意したエージェントロボットと全く同じ形状のものだった。そして、2体のエージェントロボットは向かい合って静止した。
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