ビクトリーラーメンマンシリーズ第11弾 火山星

 火山星へ到着してから数週間、俺は大気圏内飛行でいくつかの地方へ降り立った。そして、周囲に聞き込みを行ったが、出てくるのは温泉豆腐と温泉卵の店ばかりだった。推しの料理だけのことはあり、徹底している。またかとは思いながらも、食べてみないと分からないので、紹介された店で温泉豆腐と温泉卵を食べ続けた。

 料理の素材は、地方で少しずつ異なり、温泉豆腐に鶏肉や豚肉が入っていたり、木の実がはいっていたりしていた。また、卵も鶏だけでなく、別の鳥だったり、亀やワニの卵だったりした。しかし、多少の違いはあるものの、極端に味が違うわけではなく、くそ暑い中で毎回温泉豆腐と温泉卵を食べ続けたせいか、俺はだんだん飽きが来始めていた。

 そして、課長への定期報告を行う日がきた。俺は気乗りしないまま、調査船の端末から課長を呼び出した。ディスプレイの課長は、顔がアップになっており、一層暑苦しかった。
「課長、お久しぶりです。火山星での調査の中間報告をいたします。
 特に珍しいものはないですね。どこに行っても、同じような温泉豆腐と温泉卵くらいしかありません。」

 課長は俺の話を全く聞いていないようで、目線はさまよっていた。
「んー、甲斐、おまえもとうとうトレーニングに目覚めたか。」
「えっ、何を言っているんですか。」
 俺は課長が何を言い出したのかわからなかった。

「腕の筋肉からすると結構鍛えたんじゃないか。」
 俺は自分の腕を眺めた。言われてみれば、確かに少し引き締まったようにも見える。
「調査船の中でいつものトレーニングをしていただけですよ。」
「いや、そんなはずはない。明らかに違うぞ。いったい、どうしたんだ。」

「どうしたも、こうしたも、今報告した通り、くそ暑い中、温泉豆腐と温泉卵を食べ続けていただけですけど・・・」
 俺は多少切れ気味に話を繰り返した。課長は少し考えこんだように見えた。

「そうか、わかったぞ。タンパク質とミネラル分の多量摂取と、サウナのような環境での活動が影響しているんだろうな。他にも何か有効な成分があるのかも知れない。
 普通のトレーニングでそれだけ筋肉がつくなんて、ボディビルダーにとっては天国ではないか。
 みんな、大挙して押し寄せるぞ。
 甲斐、よくやった。早速、調査チームを派遣する。君は帰投していいぞ。」
「はぁー、じゃあ、戻ります。」
 期せずして出張終了となってしまった。

 人生、何が幸いするかわからないものだ。俺は、今回は、我社のビジネスとは全く関係ないのではないかと疑問を覚えつつ、晩飯用に買った温泉卵を食べ始めた。

おしまい
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