君に首ったけ

君に首ったけ
                      -修.

「僕と結婚してくれ。」
 やはり来たか。フレンチレストランのテーブルに向かい合って座った、いつもより少しフォーマルな格好の湊からのプロポーズはド直球だった。着なれないロングのワンピースの彩華は、想像していた展開とはいえ、夢が現実のものとなり、胸の鼓動が早まっていた。

 湊は同じ会社の同期だ。部署は別だが、研修で一緒になり、意気投合して連絡先を交換したのが最初の出会いだった。そして、付き合い始めて半年。一緒にご飯に行ったり、ドライブに行ったりを繰り返してきた。二人とも身長が高く、仲間からはお似合いのハイカップルとからかわれたりしていた。

 いつものご飯は、イタリアンだったり、居酒屋だったりとカジュアルなものばかりだったが、今回は初めてのフレンチということで、彩華は何かあるのでは、と期待していたのだ。

 湊は、研修のとき、ひときわ真面目で熱心に取り組んでいた。彩華もどちらかと言えば真面目で、人からは名前と違って派手さがないとも言われていた。一言で言えば、性格の一致、というより方向性の一致だろうか。彩華は、飾ることない普段の自分で湊と付き合えることに満足していた。そしていつしか、もし二人が結ばれることになれば、といった想像をするようになっていたのだ。

 そして、今日、遂にそのときがやってきた。彩華の返事は、何百回ものシミュレーションを行い、ずいぶん前から心に決めていた。しかし、彩華には一つ越えなければならないハードルがあった。それも、一か八かの、ものすごく高いハードルが・・・。

 彩華は、意を決して、準備に準備を重ねてきた返事を返すことにした。
「湊さん、こちらこそよろしくお願いします。でもね、一つだけ湊さんに言っておかなければならないことがあるの。」
「えっ、何。いや、一応、OKはOKなのかな。」
 湊は彩華からの返事に少し困惑した様子だった。

「プロポーズの返事はOKよ。OKした後に言うのはちょっとずるいかも知れないけど、結婚生活を送るうえで湊さんには打ち明けなければならない、私の秘密があるの。これは母親以外、誰も知らない、ちょっと人には言えない秘密なの。湊さん、生涯、私の秘密を守ってくれる。」
「うーん、なにかやばい話なのかな。いや、でも、大丈夫、彩華さんに結婚を申し込んだ時点で、いろんな覚悟はできている。」
「良かった。じゃあ、心して聞いてね。」
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