Chapter 2. 野良AI

「うーん・・・」
 文学部4年生の澪は、ノートPCの白紙の画面を再び見てうなった。今日は何度目だろう。レポート提出の締め切りまで残すところ、あと1週間。この半年、十分に文献調査やインタビューもやってきた。なのに・・・。

 この言語学のレポートには澪の卒業が掛かっていた。必須科目がレポートで済むなんてとラッキー、と半年前には思ったが、取り組んでみると案外大変なことが判った。テーマは「若年層の省略語の傾向とその地域性について」。簡単に言えば、関西では「マクド」、その他の地域は「マック」、なぜそうなっているのか。我ながら、十分に取り組みがいのあるテーマだと思う。

 2ヶ月ほど掛けて、関西圏にも、近隣の地域にも行ってインタビューを行った。図書館で地域の生い立ちも調査した。レポートの材料はごまんとある。あとは、どうまとめるか・・・。教授からいい評価をもらおうなどとは考えていない。ただ通してくれればいい・・・。しかし、出足でつまずいていた。

 数日前から膠着状態が続いている。コーヒーを淹れてはため息、現実逃避でアニメを見ようとしても数分で現実に引き戻され、またため息。PCには1文字も入力できていない。そうだ、そもそも私には文章構成力が欠如しているんだ、と澪は何度もため息をついていた。

 そして、澪が再び現実逃避のため昼は外に食べに行こうと考えていると、突然、白紙のPC画面の隅にポップアップウインドウが立ち上がった。
「ん?」
 澪は何が起こったのか分からなかった。そこには、長髪の若い男性が表示されていた。かっこいい・・・。文学部は圧倒的に女性の比率が多く、かといって部活をエンジョイするほどの金銭的余裕もあろうはずがなく、この4年間浮いた話もないままアルバイトと学業で卒業を迎えようとしていた。ここで、このようなイケメンに巡り合えるとは・・・。
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