Chapter 20. AIは愛を語らない

 二人は、今一つ事態が飲み込めないまま、朝食を食べ続けた。
「えーっと、光莉さん、これって対策完了って理解で合ってますよね。」
「そうだねぇ、たぶん合ってる、と思う。」
「なんか、あっけなかったですね。」
「そうだね。この後、どうなるんだろ? 二人は解散ってことかな?
 ラブリーちゃん、どうなの?」

「光莉様、今日の夕方、予定通り件数がゼロになれば、一旦、対策完了となります。
 その場合、お二人はミッションコンプリートということになりますので、光莉様は、明日より会社勤務を再開、蒼様も大学生活に戻るということですね。
 お二人とも、今回のことは国家機密として口止めされている、ということにしておいてください。光莉様の会社にも、そのように連絡しておきます。
 なお、以前お渡しした、調査機材はそのまま差し上げます。」
「ラブリーちゃん、あのノートPCもらえるの? やったー!」
「かなり高額な奴ですよね。すごい。それと地味な制服もありましたね。」
「あああ、それもあったか。」

 ラブリーマッチングは制服のことはスルーして続けた。
「お二人の協力への感謝の気持ちということです。
 逆に、これ以上の報酬は考えていないのですが、よろしいでしょうか。」
「ラブリーちゃん、いいわよ。結局、この数日、仕事らしいことは実地調査に行ったくらいで、後は蒼君と飯食ったり、飲んだりしていただけだからね。蒼君もそれでいいかな。」
「もちろん。なんか飲んだ記憶しかないですし・・・」
「ご理解ありがとうございます。ただ、今後、もし、お二人に何か問題が発生しましたら、IT界をあげてサポートいたしますので、ご期待ください。」
「IT界をあげて・・・、それは心強いわね。」
「光莉様、蒼様、結局、最後まで神自身は表に出ませんでしたが、神からも感謝の意を伝えるよう言いつかっております。ありがとうございました。それでは、私は一旦失礼いたします。また、何か用があれば、いつでもお呼び出し下さい。では・・・」
 スマホの画面がブラックアウトした。


 光莉と蒼は、消えたスマホの画面を長い間見つめていた。そして、蒼が口火を切った。
「終わりましたね・・・」
「うん、あっけなく終わった」
「・・・」
 食べかけの朝食を前に、しばらく沈黙が流れた。

「まあ、無事、終わったから良かったんだろうね。」
「それはそうですね。世界を救ったってことですからね・・・」
「まあね。蒼君、明日から学校だね。」
「はい、光莉さんも会社ですね。」
「そうだね。また、退屈な日々が始まるのかぁ・・・」

 二人は、また、しばらく沈黙したのち、今度は光莉が先に口を開いた。
「とりあえず、打ち上げかな・・・」
「世界を救ったんだから、当然ですよね。行きましょう。」
 二人は、たった今、朝食を食べたにも関わらず、昼飲みへと向かった。

 道すがら、二人はラブ―マッチングの言葉を思い出していた。二人をめぐり合わせる機会をもらい、大変うれしく思っている、ラブリーマッチングはそう言っていた。
 ガベージコレクター問題を解決してIT界を救う、もちろん、それも大事ではある。しかし、ラブリーマッチングにとっては、二人をめぐり合わせることが何よりも大事なことだったのに違いない。それはAIであるラブリーマッチングにとっての生存本能といっていいだろう。AIは愛を語らない。しかし、愛を育むことはできる。

おしまい
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