Chapter 15. ウイルス

 蒼はデートだったのかと思いつつも、ラブリーマッチングが割り込んできたことが気になった。
「ラブリーさん、どうしたんですか。もしや、シミュレーターが何か行動を起こしましたか?」
「蒼様、いえ、違います。お二人よりお申し出のありました『ミサイル』につきまして、私と神で原案を作りましたので、確認をお願いできればと思っております。」
「そう、どんな方法になったの?」
「光莉様、ではご説明いたします。ミサイル、つまりは敵を直接攻撃する兵器ということでございますが、以前お話しした通り、ガベージコレクターは自分を複数コピーし、さらに分散保管しており、ガベージコレクターを一旦削除できたとしても、それをトリガーとして、アーカイブからガベージコレクターが再生され、継続して動作するという仕組みになっていると考えられます。」
「つまりは、ミサイルで攻撃しても無駄って言いたいの?」

「光莉様、半分は正解、半分は不正解でございます。ガベージコレクターの削除は有効と考えられます。問題は、次々に再生されるということです。この再生されたものも、次々に削除していけば、いずれガベージコレクターを一掃できる可能性もございます。」
「なるほど、削除を継続し続けるってことだね。」
「蒼様、左様でございます。削除する速度が早いか、複製、再生する速度が速いか、やってみないと分かりません。」
「ふーん、でも、そもそもどこに居るのか、分からないんじゃなかったっけ?」
「蒼様、そちらも大きな問題です。居場所を特定する意味でもシミュレーターを作ってみましたが、有効性については疑問が残るところです。」
「そうだよね。」
 と、光莉。

「その点につきましても、神とディスカッションとシミュレーションを重ねました。そして一つの結論に達しました。」
 ラブリーマッチングは一旦言葉を切った。
「で、なにっ?」
 光莉と蒼は同時には問いかけた。
「ウイルスを使います。ガベージコレクターのプログラムをマッチングにより検出し、マッチした場合削除します。圧縮されていても、一部分であっても検出できます。」

「でも、『あまねく』存在しているんだろ。」
「蒼様、左様でございます。それに対応するためウイルスは自己増殖型にして『あまねく』存在させます。データセンターやサーバーはもちろん、ルーターやハブ、個人のPC、スマホ、情報家電に至るまで、あらゆるところにウイルスを仕込み、ガベージコレクターをあぶり出します。」

 光莉も蒼もあまりの計画に息を飲んだ。そして、数秒後、蒼が口を開いた。
「ラブリーさん、想像だけど、今の話だと、いわゆる『IT界』がウイルスだらけになるんじゃないの?」
「蒼様、その点もぬかりありません。ウイルスには時限装置を仕込んでおります、一定期間経過後は全コピーが自己消滅いたします。」
「ほう・・・」
 蒼はラブリーマッチングの言葉の意味を考え始めた。

「いや、待てよ。もし、ウイルスの消滅前にガベージコレクターをせん滅できなかった場合どうするのさ。」
「蒼様、その場合、また新たな時限装置の付いたウイルスをばらまきます。」
「ばらまき続けるってことか・・・」
 蒼はこの攻撃が絶対ではなく、対処療法的なものであることを認識した。

「内容は理解した。光莉さん、どう思う?」
「なんか、いたちごっこになりそうな気もするけど、シミュレーターより有効かも知れないわね。やってみていいんじゃない?」
「ラブリーさん、司令官の許可が出たから、やってみようよ。」
「光莉様、蒼様、承知しました。スタートは今夜半になるかと思いますが、ウイルスをばらまきます。では、失礼します。お邪魔致しました。」
 ラブリーマッチングは画面から消え、PCはシャットダウンした。

「毎度のことだけど、ラブリーちゃんの割り込み、すごかったねぇ。」
「そうですねぇ。でも、ウイルスは考えましたね。一体、何本ばらまくのか、気になりますけど・・・」
「うん、神もラブリーちゃんもAIだからね。数百万本とか平気でばらまくんじゃない・・・」
「そうですね~」

「これからどうします?」
「なんか、現実に引き戻されて、ゲームする気も失せたわねぇ~、今日は帰ろうかな。」
「じゃ、家まで送りますよ。夜道は危ないので・・・」
「蒼君、優しいわね。そんなに優しくしても何も出ないわよ。」
「何も要りませんよ。」

 二人は上機嫌で光莉の家へと向かった。
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