Chapter 14. 新たな攻撃

 一方、蒼は中華料理屋でかなり飲んだにも関わらず、いつもと変わらない朝を迎えていた。

 光莉さん、べろんべろんだったなぁ。期せずして、光莉さんの部屋にも入ったけど、まあ女の子の部屋にしては殺風景だったかな。部屋がでっかいPCに占領されていたし・・・、25歳、独身OLって、みんな、あんな部屋なんだろうか。

 蒼は、光莉の部屋をフラッシュバックさせつつ、ご飯のパックとインスタントの味噌汁の用意を始めた。

 しかし、いくらべろんべろんとは言え、光莉さんは男を部屋に入れるのに抵抗なかったんだろうか。いや、あの状態じゃ、部屋に入れた認識もなかったかもしれないな。脇が甘いというのか・・・。あるいは、自分は男と思われていないかもしれないな、5歳年下だし。

 蒼は用意の手を止めた。そういえば、ラブリーマッチングはシミュレーターの結果が出るまで数日かかると言っていた。待っておくのも暇なので、授業に出て出席日数を稼ぐという手もある。とすれば、朝食は久しぶりに学食の朝定食にしてもいい。

 蒼は我ながらいい考えと思いつつ、支度をして玄関を出た。そして、大学への道すがら、再び光莉との会話の断片を思い出していた。

 そういえば、光莉さんはミサイルを撃ち込めって言っていたな。昨日は相当酒が入っていたので、冗談とも本気ともつかない中、盛り上がっただけで終わったけれど、よく考えると意味深な気もする。ソフトウエアにミサイルって・・・

 蒼は「ミサイルねぇ・・」と小さくつぶやきながら、大学への道を進んだ。そして、校門が見え始めたころ、一つのアイデアが浮かんだ。

 蒼をスマホを口に近づけ、小さく声を掛けた。
「ラブリーマッチング・・・」
「蒼様、なんでしょうか」
 画面には、いつものラブリーマッチングの笑顔が表示された。

「あのさー、昨日光莉さんと飲んでいたのはモニターしていた?」
「はい、スマホ経由で聞いておりました。」
「だったら話が早いや。光莉さんがミサイルを撃ち込めっていっていたでしょ。あれ、何か具体的なものに落とし込めないかな?」

「おー、蒼様。光莉様からも先ほど同じご依頼があり、神と検討をはじめたところでした。」
「へぇー、光莉さんも同じ結論に達したってわけだね。で、何かアイデアでそう?」
「いま、他のAIの力も借りて、可能性の検討を行っている最中でございます。もう少し、時間を頂くことになりそうです。」
「そう。わかった。何か出たら教えて・・・」
「承知しました。」
 ラブリーマッチングは消えた。

 蒼は、学食で朝定食を頼み、食事の載ったトレイを空いている席へ運んできた。焼鮭、卵、ご飯、味噌汁で、この値段なのは学生にとってはありがたかった。

 蒼は卵をご飯に掛けつつ、また昨日のことを思い出していた。

 光莉さんが言っていたが、やはりシミュレーターは違うのかも知れない。ガベージコレクターと同じ行動をすることが期待されているが、ターゲットの場所まで同じところを選択するものだろうか。

 全く同じプログラムやモジュールで構成されていれば同じ結論を出すのだろうか。どこかに不確定要素、例えばランダム関数だったり、信号線のノイズだったりがあるのでないだろうか。それによって、結果が変わる可能性があるなら、シミュレーターは役に立たない・・・。

「うーん、何も思いつかん・・・」
 蒼は卵掛けご飯を書き込み始めた。
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