Chapter 12. 相談

 蒼とラブリーマッチングの会話の直後、光莉は近くの行きつけの中華料理屋で八宝菜を片手にビールを飲んでいた。
「うーん、なんだかすっきりしないなぁ・・・」

 ラブリーマッチングはうまくやってくれている。何より動きが早い。蒼君もときどきナイスなアイデアを出してくれている。もちろん、神の力は絶大なのだろう。
「しかしなぁ・・・」
 光莉は小さくつぶやいた。なんとなく、つかみどころがない、と言うか、対策自体がもやっとしているし、成果が得られるかどうかもわからない。光莉は先の見えない状況に悩んでいた。

「そうだ!」
 光莉はひらめいた。そして、スマホに向かって小さな声で話しかけた。
「ラブリーちゃん、蒼君に飯奢るから出て来いって連絡して!」
「承知しました。」
 ラブリーマッチングからの回答が画面に表示された。

 それから15分後、赤い文字のかかれたガラス扉を開けて蒼が中華料理屋に入ってきた。
「いらっしゃい~」
 店主が小さく挨拶する。

「蒼君、ごめんね。急に呼び出して・・・」
「いえいえ、丁度晩飯どうしよう、って思っていたので。」
「じゃ、まずは生でいいよね。あ、その前に未成年じゃないよね。」
「はい、ギリ成人しています。生でいいです。」

 ほどなくビールが到着し、二人は乾杯した。
「光莉さん、なんで誘ってくれたんですか・・・」
「それね。なんか一人で考えていたら、だんだん分らなくなってきて・・・。なんか話し相手が欲しかった、ってところかなぁ・・・」
「そうですか。俺も、さっき、別れて考えましょう、って言いましたけど、言った端から、どう考えるのか悩んでいるところでした。」
「そうかぁ、じゃあ、丁度良かったね。蒼君とも飲んでみたかったし・・・」
「俺もです。」
「いやぁん、相思相愛じゃん!」
 光莉の顔は若干紅潮していた。
「光莉さん、だいぶ飲んでるでしょ。」
「まあね。一人で飲むと、きりがないからね。」

 蒼は青椒肉絲と餃子を注文し、二杯目のビールに入っていた。
「じゃ、そろそろ本題にいきましょうか。まずは整理から。
 ガベージコレクターは悪意がないまま、システム最適で、重要性が低いと思ったデータを削除しまくっている、人知れず・・」
「そうね。それで、人間様は消えたデータに右往左往している・・」
 光莉は蒼が頼んだ餃子もつまみながら、ビールを口に運んだ。

「で、俺たちはガベージコレクターと同じ機能のシミュレーターを作り、ガベージコレクターの行動を予測し、先回りしようとしている・・・」
「そこよ、引っ掛かっているところは。それで本当に対策になるのかしら・・・。」
「まあ、さっきは思い付きで言ったので、確実に対策になるかどうか考えたわけではないですね。」
「だよね。蒼君、今はどう思う?」
「うーん、わからないですね。そもそも野良AIがどう考えるのか、どう行動するのかわからない。なので、何が対策になるのか分からない、ってところでしょうか。」
「だよね。蒼君って、いつも冷静だから、何かアイデア持ってるんじゃないかって思っていたんだけど・・・」
「そんなことないですよ。買いかぶりすぎです。」
「そうかなぁ・・・。もう少し飲んだら、血の巡りがよくなって、なんかアイデア出るかもよ。」
「いやぁ、そんなことないでしょ。」
 二人はだんだん出来上がってきていた。

「光莉さん、ほらミサイルが飛んで来たら、迎撃ミサイルで防ぐでしょ。だから、こっちも迎撃ミサイルを作ればいいんですよ。」
「あー、それはいいわね。でも、テレビとかで見ると、迎撃できなかった分が着弾して、ドカンってなってるわよ。」
「そうかぁ。いや、待てよ。そもそもミサイルじゃなくて、ミサイル基地を叩かないといけないのか・・・」
「蒼君、そうだ。君の言う通りだ。そこだ!敵の基地にミサイル打ち込んじゃえ!」
「で、ドーンってね、はははは」
 ビールが回ってきた二人の会話はだんだん空論となっていった。
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