Chapter 8. マッチング
「お相手の男性は、高校時代にスーパープロトコルの原型を開発されました蒼 様、20歳、情報処理学を学ばれている大学2年生でいらっしゃいます。そして、お相手の女性はスーパーハッカーの光莉様、25歳、経理関係の会社勤めでございますが、現在は、ガベージコレクター対策のため、自宅待機していただいておりました。このように、才能に恵まれたお二人をめぐり合わせる機会を賜り、大変うれしく思います。」
ラブリーマッチングの営業口調に二人は閉口し、しばらく沈黙が流れた。そして光莉が先に口火を切った。
「蒼君だっけ、あなたがスーパープロトコルを開発したの? すごいね。」
「いや、俺が作ったのはバグがあったんですけど、神がバグフィックスして完成させてくれたらしいです。光莉さんはハッキングがお得意なんですね。今から何をするのか、分かりませんけど、よろしくお願いします。」
「蒼君、私の方が年上だけど、タメ口でいいわよ。敬語使われると、なんか自分がおばさんくさくていけないわ。私も、この先、どうするのかわからないけど、とりあえず、よろしく。」
「光莉様、蒼様、ご挨拶ありがとうございました。お二人の連絡先はこの後お送りますが、お二人は案外お近くにお住まいです。では、本題に入ります。
神があちこちの情報ルートをモニターしていることはお二人にお話しした通りですが、昨夜、2件の事例を発見いたしました。1件は福祉事務所でのデータの喪失、もう1件は出入国管理局でのデータの改ざんです。どちらも、あり得ない事象として、現場から本部へ情報が伝達されています。
神はこの2件が、なんらかの偶発的な事故、もしくは人為的なものではないと判断いたしました。おそらくガベージコレクターによるものではないかと・・・」
光莉は疑問が浮かんだ。
「それって何がメリットなの? ガベージコレクターにとっていいことがあるわけ?」
「はい、真意は分かりませんが、いずれのケースも、レコード数の削減、ひいてはシステムの稼働効率のアップという効果が得られると予想されます。」
今度は蒼が口を挟んだ。
「効率アップって、一体何件消されたの?」
「福祉事務所では5件消去、輸出入管理局では1件改ざんが検出されております。」
「たったそれだけ・・・」
「福祉事務所のケースでは、ホストコンピューターの処理で1万分の1ほど、オペレーターの処理で百分の1ほどの効率アップとなります。ただ、オペレーターはトラブル対応が必要となっており、現場は大混乱しているようです。」
光莉はしたり顔でつぶやいた。
「分かってきたわ、ガベージコレクターはコンピューターファーストなのね。それで現実世界でトラブルが起ころうと、人間の工数が増えようと関係ない・・・」
「そういうことかぁ、光莉さん、するどい。」
蒼は初対面の光莉に少し感心していた。やはり、社会生活が長いせいだろうか、蒼より5年間の人生経験の多さが洞察力を高めているのだろうか。
「ラブリーちゃん、で、私たちにどうしろって?」
光莉はエンジンが掛かってきたようで、野良AIももはや「ちゃん」付けに変わっていた。
「光莉様、蒼様、現時点では神も私もいい手が思いつきません。何か罠を仕掛けるにしても、IT界はいささか広過ぎます。数万や数十万の罠では引っ掛からないと予想しております。このため、まずはお二人で実地確認をお願いしたいと思います。」
光莉も蒼も心の中で、数十万の罠を仕掛けると軽く言っている野良AIのすごさに感心していた。
「実地確認って、俺たち、そんなところに入れないよね。」と、蒼。
「そのあたりは抜かりございません。いずれも、本部から調査の委託を受けた情報システム管理会社という肩書で現地調査を可能にいたします。」
「はぁ、私の赤紙と同じってことね。」
「左様でございます。」
「蒼君、教えておくね。このラブリーちゃんは、赤紙、いわゆる召集令状ね、をでっち上げて、私の会社に送りつけて、私を自宅待機にしたの。多分同じようにデータやら何やらをいじって、私たちの調査を正当化しようとしているようね。」
「はぁ、そんなことがあったんだ・・・」
「光莉様、蒼様、衣装や名刺などは宅急便で届けますので、本日午後から調査の開始をお願いします。」
「いよいよ活動開始ね。蒼君、楽しみだね。」
「そうですね。光莉さん、では、また後で。」
二人は合流地点と場所を話し合い、チャットを終了した。
「あっ・・・」
チャットを終了してまもなく、光莉は自分が起き抜けのすっぴんで、髪もボサボサであったことに気が付いた。
「まぁ、いいか。蒼君に媚びを売る必要もないし・・・」
数分後には宅急便業者が荷物を持ってきて、光莉はやはりすっぴん、かつボサボサのまま受け取ることになった。
ラブリーマッチングの営業口調に二人は閉口し、しばらく沈黙が流れた。そして光莉が先に口火を切った。
「蒼君だっけ、あなたがスーパープロトコルを開発したの? すごいね。」
「いや、俺が作ったのはバグがあったんですけど、神がバグフィックスして完成させてくれたらしいです。光莉さんはハッキングがお得意なんですね。今から何をするのか、分かりませんけど、よろしくお願いします。」
「蒼君、私の方が年上だけど、タメ口でいいわよ。敬語使われると、なんか自分がおばさんくさくていけないわ。私も、この先、どうするのかわからないけど、とりあえず、よろしく。」
「光莉様、蒼様、ご挨拶ありがとうございました。お二人の連絡先はこの後お送りますが、お二人は案外お近くにお住まいです。では、本題に入ります。
神があちこちの情報ルートをモニターしていることはお二人にお話しした通りですが、昨夜、2件の事例を発見いたしました。1件は福祉事務所でのデータの喪失、もう1件は出入国管理局でのデータの改ざんです。どちらも、あり得ない事象として、現場から本部へ情報が伝達されています。
神はこの2件が、なんらかの偶発的な事故、もしくは人為的なものではないと判断いたしました。おそらくガベージコレクターによるものではないかと・・・」
光莉は疑問が浮かんだ。
「それって何がメリットなの? ガベージコレクターにとっていいことがあるわけ?」
「はい、真意は分かりませんが、いずれのケースも、レコード数の削減、ひいてはシステムの稼働効率のアップという効果が得られると予想されます。」
今度は蒼が口を挟んだ。
「効率アップって、一体何件消されたの?」
「福祉事務所では5件消去、輸出入管理局では1件改ざんが検出されております。」
「たったそれだけ・・・」
「福祉事務所のケースでは、ホストコンピューターの処理で1万分の1ほど、オペレーターの処理で百分の1ほどの効率アップとなります。ただ、オペレーターはトラブル対応が必要となっており、現場は大混乱しているようです。」
光莉はしたり顔でつぶやいた。
「分かってきたわ、ガベージコレクターはコンピューターファーストなのね。それで現実世界でトラブルが起ころうと、人間の工数が増えようと関係ない・・・」
「そういうことかぁ、光莉さん、するどい。」
蒼は初対面の光莉に少し感心していた。やはり、社会生活が長いせいだろうか、蒼より5年間の人生経験の多さが洞察力を高めているのだろうか。
「ラブリーちゃん、で、私たちにどうしろって?」
光莉はエンジンが掛かってきたようで、野良AIももはや「ちゃん」付けに変わっていた。
「光莉様、蒼様、現時点では神も私もいい手が思いつきません。何か罠を仕掛けるにしても、IT界はいささか広過ぎます。数万や数十万の罠では引っ掛からないと予想しております。このため、まずはお二人で実地確認をお願いしたいと思います。」
光莉も蒼も心の中で、数十万の罠を仕掛けると軽く言っている野良AIのすごさに感心していた。
「実地確認って、俺たち、そんなところに入れないよね。」と、蒼。
「そのあたりは抜かりございません。いずれも、本部から調査の委託を受けた情報システム管理会社という肩書で現地調査を可能にいたします。」
「はぁ、私の赤紙と同じってことね。」
「左様でございます。」
「蒼君、教えておくね。このラブリーちゃんは、赤紙、いわゆる召集令状ね、をでっち上げて、私の会社に送りつけて、私を自宅待機にしたの。多分同じようにデータやら何やらをいじって、私たちの調査を正当化しようとしているようね。」
「はぁ、そんなことがあったんだ・・・」
「光莉様、蒼様、衣装や名刺などは宅急便で届けますので、本日午後から調査の開始をお願いします。」
「いよいよ活動開始ね。蒼君、楽しみだね。」
「そうですね。光莉さん、では、また後で。」
二人は合流地点と場所を話し合い、チャットを終了した。
「あっ・・・」
チャットを終了してまもなく、光莉は自分が起き抜けのすっぴんで、髪もボサボサであったことに気が付いた。
「まぁ、いいか。蒼君に媚びを売る必要もないし・・・」
数分後には宅急便業者が荷物を持ってきて、光莉はやはりすっぴん、かつボサボサのまま受け取ることになった。
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