Chapter 8. マッチング

 光莉ひかりは、会社に届いた赤紙のおかげで自宅待機になって3日目の朝を迎えていた。朝食は昨日スーパーで補給した牛乳とシリアルだ。まぁ、自宅待機とはいってもスマホを持っておけば外出しても良いとのことで、この2日間、食料を買い足したり、近所をぶらぶらしたりして退屈な日々を過ごしていた。

 あれ以降、ラブリーマッチングと名乗る野良AIからの連絡はない。いったいいつまで自宅待機の日々が続くのだろうか、大そうな話だった割には何の動きもない。光莉はシリアルをスプーンですくいあげながら、朝のルーチンで、ネットニュースを見るべくノートPCを開いた。

「おはようございます、光莉様。」
「おおっ!」
 二度目だ。画面全体にいきなり表示された、にこやかにほほ笑んだ男性の顔に驚いた。野良AIには人間の感情は分からないのだろうか。

「この表れ方、なんとかならないの? 精神衛生上、良くないわ。」
「これは、失礼しました。次回からは、フェードインで現れるようにいたします・・・」
 ラブリーマッチングは一応対策してくれるようだが、いきなり出てくることは変わらないようだ。しかし、少しは進歩したと捉えるべきだろう。

「で、今日は何? もしかして任務?」
「光莉様、左様でございます。神がガベージコレクターの暴走らしき現象を探知いたしました。早速、光莉様に対応いただければと思います。」

「一体何が起こった?」
「はい、今から説明いたしますが、その前に光莉様に紹介したい方がございます。ご紹介こそ、私、マッチングアプリの真骨頂でございます。胸が躍ります。では・・・」
 野良AIに胸はなかろうと突っ込もうかと思っていると、いきなり画面が切り替わり、別の男性が表示された。光莉よりは少し若いだろうか、光莉と大して変わらないスウェットを着ている。

「誰? それとも、表示キャラを切り替えただけ?」
「そっちこそ、誰?」
「失礼しました。先にお名前のご紹介をするべきでした。」
 ラブリーマッチングが会話に割り込んだ。
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