Chapter 7. 変化

 とある出入国管理局で、事務官がベトナム人と話していた。

「グエンさん、そう言われましても在留資格の更新ができないんですよ。」
「いったいどういうことですかー。まだ2年しか働いてないよ。あと、3年は働けるはずよー。」

「一般的には滞在期間は通算5年なんですけどね。グエンさんの場合、データではもう更新できない、ってなっているんですよ。」
「それは困るー。国で借金して日本に来ているから、あと3年働かないと返せないー。」

「いやー、事情は分かりますが、なんともしてあげられないですね。3ヶ月後に帰国するようにしてください。」
「ほら、前回の更新のときの書類持ってきたよ。ここに残り4年って書いてあるよ。」

 グエンは何かの書類を事務官に示した。
「うん? 確かに4年って印刷されていますね。でもデータベースでは、更新不可になっているんですよ。何か問題起こしていないですか。」
「問題なんか、起こしていないよー。」

 事務官は書類の写真を取りながら、不思議そうに眺めていた。
「そうですか。謎ですね。こちらでも少し調べてみますので、また日を改めてきてもらえますか。」
「あー、分かった。じゃ、出直すよー。ちゃんと調べてー。」

 その後、事務官は同僚と話し合っていた。
「どう思う。」
「分からないな。データ上は更新不可だろ。更新不可の理由は入ってないのか?」
「それが、記入されてないんだよ。」

「理由なしに更新不可になっているのか? 理由なしでは更新不可は登録できないはずだがな。」
「そうだよな、ますます謎だ。どこの機関が入力したかも、いつ入力したかも不明ときてる。5年経ったら自動消去されるようになっているけど、この入力は1年以内だからな。」
「わからんな。とりあえず、本局に書類の写真とその人のIDをメールして調べてもらうくらいしか思いつかないな。」
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