Chapter 5. 沈思黙考

「『ラブリーマッチング』・・・、変な名前だ。いや、『素敵な出会い』という意味ならふさわしいのか・・・。いやいや、名前はどうでもいい・・・」
 蒼はベッドに転がり、見るとはなく天井を見ながら、神の使いと名乗るアプリとの会話を思い出していた。神の使者などにならず、大人しくマッチングアプリに留まっていればいいものを・・・。

 使者の言う通り、期せずして俺がスーパープロトコルの発明者だったとしても、神が俺に相談する意図は何だろう。普通のゲーマー大学生の俺にそんなに期待しても、たいした知恵は出てくるはずがないだろう。いや、もしかすると別に意図はないのかもしれない。何かと理由をつけて、俺以外にも何十人にも問いかけているかも知れない。それで多数決を取るとか・・・。

 相手はAIだ。人間と同じ思考をするとは限らない。AIの思考は謎だ。神は何を期待しているのだろう。俺がガベージコレクターは即刻消去すべきだと言ってくれることを期待しているのか、それとも少し泳がせてみれば、と言わせたいのか。人間の言質を取ることで、自分の行為を正当化しようとしているのか・・・。自分が脅威と思うなら、自分で考えて何か手を打つだろう。分からん・・・。

 蒼は次々と疑問ばかりが浮かんで、何も建設的な発想ができなかった。

 そもそもガベージコレクターって野良AI化するものだろうか。まあ、マッチングアプリが野良AIになっているわけだし、噂ではワープロソフトなんかの事務系ソフトも次々と野良AI化しているらしい。であれば、ガベージコレクターが野良AI化してもおかしくはない。

 ただ、違うのは、マッチングアプリや事務系ソフトは、人間にサービスを提供することが目的であるのに対して、ガベージコレクターやインデクサーのようなシステム系のソフトは人知れずバックグラウンドでシステムの高速化や安定化を行うのが目的だ。もちろん、結果的には人間がその恩恵をうけるが・・・。神であるウイルス対策ソフトは丁度中間的な存在だろうか・・・。

 生い立ちが違うのだから、同じように成長するとは限らないということか。天使にもなれば、悪魔にもなりうる。そう考えると、神の心配は分からないでもない。

 いや、そもそも野良AIの存在価値ってなんだ。神は、確か、人々をITの脅威から守ることが存在価値だって言っていた。本能みたいなものだろうか・・・。もしそうなら、ガベージコレクターの存在価値、あるいは本能とはなんだろう。うーん、分からない。
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