ミセマモール

 それから小一時間ほど歩いただろうか、ドアの横に白いパネルがない店を探したが全く見つからなかった。チェーン店はもちろん、個人経営の小さな食堂にも白パネルが付いている。昼飯が食えない・・・。

 それだけではなかった。気づけば、コンビニやスーパーにも白いパネルが付いている。いったいいつの間に付いたのだろう。お弁当やパンも変えないということか。俺は絶望にかられた。

 俺は仕方なく駅の自動販売機でパンを買って昼飯にした。さすがに自動販売機には白いパネルは付いていないようだ。まぁ、自動販売機に文句を言う奴もいないだろうし・・・。

 その夜、俺は再びに飯にありつけないという現実を叩きつけられた。会社から自宅まで、どこか白いパネルの付いていない店がないか、普段通らない路地も含めて捜し歩いた。そして、ようやく一軒のラーメン店を見つけ、のれんをくぐった。

 「へい、いらっしゃい・・・」
 ん、どすの利いた声。店内を見渡すと、なんとなく、その筋の方らしい店主が厨房に立っていた。
 「お客さん、白いパネルに断られた人ですかね。どんでもないことですよね。うちはそんなことはありませんので、どうぞゆっくりしていってください。」
 この店の雰囲気でクレームする無謀な奴はいないことだろう。
 「はぁ、どうも・・・」
 ゆっくりしていけ、と言われたものの、本能が早く店を出るべきと言っていた。しかし、店主らしき男はじっと俺を見つめている。何か頼まないわけにはいかない。
 「じゃ、ラーメン一つ」
 「はい、ラーメンいっちょー」
 店主は威勢よくラーメンを作り出し、ほどなくカウンターに座った俺に水とラーメンが出された。味はまあまあといったところだ。他に選択肢がない以上、この店をたびたび利用せざるを得ないかもしれない。

 俺はラーメンを食べ終わり、お勘定を頼んだ。
 「はい、ラーメン1杯2,000円、水1杯1,000円、テーブルチャージが2,000円、合計5,000円になります。」
 なんだと! 俺は心の中でやられたと思った。これは新手のぼったくりじゃないか。他の店で食えないことに付け込んで、ラーメン1杯で5,000円とは・・・。

 カスタマーハラスメント対策としてミセマモールというシステムができているなら、ぼったくり対策のキャクマモールといったシステムはないのだろうか。俺はしぶしぶ財布から5,000円札を取り出した。

おしまい
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