ミセマモール

ミセマモール
                      -修.

 「あれ、開くボタンがない・・・」
 俺は昼飯を食べようと、会社の近くの食堂の入り口に立っていた。いつもなら、自動ドアの横の白いパネルの一番下に「開く」というボタンが表示されているのだが・・・。

 昨晩は居酒屋で深酒してしまった。上司のせいだ。俺がアイデアを出して、自分で調べてまとめあげたのに、おエラさんへのプレゼンでは、得意げに、あたかも上司が自分でやりました、といった発表をしやがった。卑怯だろ・・・。俺自身、かなり力を入れていただけに、腹の立ち方も尋常ではなく、飲まずにはいられなかった。

 居酒屋の後、〆のラーメン屋に行ったところまでは覚えているが、そこからの記憶がない。いつのまにか部屋で朝を迎えていた。今日は上司が出張だったので二日酔いのまま出社はした。まだ酒が残っていたため朝飯は抜いたが、その反動か、昼に近づくと猛烈に腹が減ってきたのだった。

 「おかしい・・・」
 いつもなら、白いパネルには「マスクやサングラスを外して顔をカメラに近づけてください。」とか、「先に食券をお買い求めください。」とか、色々な注意事項が表示されている。強盗や熊侵入対策のため、自動ドアに操作が求められるようになったとテレビで言っていた。そして、パネルの一番下に大きく「開く」ボタンが表示されている。いつも注意事項は読み飛ばして、いきなり「開く」ボタンを押していた。それで難なく、自動ドアは開いていたのだが・・・。
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