ビクトリーラーメンマンシリーズ第2弾 いかの惑星

 老人は、俺が満足して平らげた皿を認めた途端、目を大きく見開いた。
 「喰っちまったのか。」
 「えっ、とってもおいしかったですよ。」

 俺は、出された烏賊はちゃんと食べたので、文句を言われる筋合いはなかろうと思い、答えた。しかし、老人は呆れた様子でつぶやいた。
 「なんで、メニューを喰っちまうんだよ。作るの、大変なんだぞ。」
 「はあー???」

 こんどは、こちらが呆れる番だった。
 「烏賊がメニュー・・・。」
 すかさず、老人が答えた。
 「そうとも、俺が丹精込めて作ったのに、喰っちまうとは。」
 そう言われれば、俺は烏賊の色素が何となく文字っぽく見えたような気もしてきた。老人が作ったと聞いて、俺は不安になって聞いた。

 「喰ったら、なんかまずかったでしょうか。毒があるとか。」
 「いや、別に毒はないが、また作り直さなくてはならん。困ったお客さんだ。」
 どうやら、烏賊を喰っても命に別状はないらしい。しかし、誰でも烏賊が出れば喰うだろうに・・・・。俺は、ふと気になって尋ねた。

 「メニューを喰ってしまったことは謝ります。ところで、メニューには何が書いてあったんですか?」
 老人は、メニューが喰われたのがよほど残念だったのか、かなり落ち込んだ様子でぼそっと答えた。

 「烏賊の踊食い。それと烏賊の生き造り。」
 「はあ??」
 俺は、椅子からずっこけた。「メニューの烏賊と一緒じゃないか。」と言おうと思ったが、老人の落ち込んだ様子を見て思いとどまった。

8/9ページ
スキ