ビクトリーラーメンマンシリーズ第2弾 いかの惑星

 僚が老人の日焼けに関心している隙に、老人はぶっきらぼうに何か半透明のものが載った皿を置いて去っていった。俺は老人の態度に少し憤慨しながらも、その半透明のものが載った皿を見つめた。それは、烏賊であった。

 俺は何も頼んでいないのに、なぜ烏賊がと不思議に思ったが、別に何も頼まなくても、座っただけでラーメンが出てくるという伝説のラーメン屋を思い出し、「烏賊の惑星」というぐらいだから、いきなり烏賊が出てもおかしなことはなかろうと納得した。

 烏賊はたったいま水槽から出されたものらしく、足をもぞもぞと動かし、体には色素の模様が浮かんだり、消えたりしている。気持ち悪がる人もいると思うが、俺にとっては烏賊の踊り食いなど願ってもないご馳走である。俺は、シャトルの宇宙食にだんだん嫌気がさしつつあったところだったのだ。

 しかし、相手が烏賊で良かった。ある惑星では、さめの踊り食いというのがあって、気をつけないと自分が食われるというのもある。

 そういえば、しゃちの踊り食いというのもあるらしいが、これはまず自分が食われて、その後内臓の中から食い始めて何日か後に外に出るというものらしいが、まず自分が食われるというのがどうも俺には納得できなかった。自分は溶けないのだろうか?
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