ビクトリーラーメンマンシリーズ第2弾 いかの惑星

 その飯屋は、入口には藤を編んで作ったのれんが下がり、入口の上には潮風にさらされて消えかかった字で「めし」と書かれた古びた木の看板が掛かっていた。もし看板がなかったら、俺も見過ごしていただろう。いくら店が古かろうと、飯屋と称している以上何か喰えるだろうと思い、俺はのれんをくぐった。

 店の中は予想通りの古びていた。中には、板の反り返ったテーブルが1つと、4、5人座れそうな力ウンターがあるだけである。天井にはオイルランプが2つぶら下っている。そして中には人影が見当らなかった。

 「ごめん下さい。」
 僚は力ウンターに座りつつ、心持ち大きな声を出した。しかし何の反応もない。こういう漁師町では、兼業ということも十分に考えられる。

 昼間から飯を喰いに来る客など滅多にないはずなので、夜しか営業していないのかも知れない。そして、俺が諦めて帰りかけたころ、奥からくぐもった低い声がした。
 「いらっしゃい。」

 奥から出て来たのは、赤銅色に日焼けした白髪の老人であった。俺は、日焼けサロンでもああうまくは行くまいと妙に感心した。

 シャトルの中にも、「航宙の友」にと、簡易日焼け器が置いてあるが、どっかの馬鹿が日焼け器を使いながらコールドスリープしてしまい、目的地に着いた時は黒こげになっていたといううわさが気になって今だに俺は使ったことがない。いくら航宙が安全といっても潜在的恐怖というものはつきまとうものである。
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